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万博で再確認 技術の果たす役割

万博で再確認 技術の果たす役割

2025/08/04

万博で再確認 技術の果たす役割 未来描き 実装で社会貢献

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」
    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    万博は未来技術の出発点である。通信機器をはじめ、かつての大阪万博での展示が今、実現されているように、今回の大阪・関西万博で紹介された技術も社会実装に向け、前進していくだろう。研究所の理事長として、研究を社会に実装し社会課題解決にどう貢献できるか、あらためて考える機会となった。

    これまでに3度、万博を訪れている。最も記憶に残っているのは、高校1年生の時に訪れた1970年の大阪万博だ。当時としては非常に先進的な技術や製品のプロトタイプが数多く展示されていた。中でも、目玉展示だった「月の石」を見るために長い列に並んだことをよく覚えている。正直なところ、「思ったほどではなかった」と肩すかしを食らったが、それでも「月から石がやってきた」という事実は衝撃的だった。

    それから半世紀の時を経て、今年の大阪・関西万博では「火星の石」が展示されていた。70年代は「月」が象徴だったように、今は「火星」が未来の象徴となっており、時代の変遷と科学の進歩を思うと感慨深かった。

    また70年の万博では、コードなしで通話できる未来の電話として、ワイヤレステレホンも紹介されていた記憶がある。それは今、スマートフォンとして私たちの社会に当たり前に存在している。このように万博で展示された技術が現実に社会実装される例は多く、その速度も加速している。

    馬型のロボット

     

    川重が開発した四足歩行モビリティ「CORLEO」も印象的だ

    15年のミラノ万博では、日本館でAGCが開発したテーブル型のモニターが展示された。
    画面に触れると情報が映し出される仕組みだ。当時は珍しかったが、今ではさまざまな場所で活用されている。

    今回の大阪・関西万博で、特に印象に残ったのは、アンドロイドの展示だった。異なるタイプのロボットによる産業や生活の現場を想定したデモンストレーションを拝見し、今後数年のうちに工場や医療機関、さらには一般家庭でもアンドロイドは人間と共生していくのだろうという実感が湧いた。また、「未来の都市パビリオン」での川崎重工業による四足歩行モビリティ「CORLEO」の映像も記憶に残る。CORLEOに乗り、山頂から遠くを見つめる人の姿が映し出された時、技術が人類の未来をともに切り拓いていくイメージが重なって見えた。

    研究所の理事長という立場から今回の万博を見て、「技術が人と社会にどう実装されていくか」を考えさせられた。万博は技術のショーケースであると同時に、それが社会課題の解決にどう結びつくか、研究と産業の役割を再確認させられる機会でもある。今回の万博で見た光景が、これからどのように私たちの生活に組み込まれていくのか、大きな期待を持った。

    先日、川重が開設したソーシャルイノベーション共創拠点「KAWARUBA(カワルバ)」を見学した。そこでは認知症患者との対話をAI(人工知能)が支援し、娘の顔をモニターに映してやり取りをする技術が紹介されていた。アンドロイド型だけでなく、ロボティクスやAI技術が人間と共に生きる未来の生活像を容易に思い描くことができた。

    70年代の万博で展示されていた技術は半世紀の時を経て社会実装されたが、社会はかつてないほどの速さで変化を続けている。今回の万博で目にした技術が、暮らしの一部となる日も、そう遠くはないだろう。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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