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半導体量子ビット素子

半導体量子ビット素子

2025/07/31

半導体量子ビット素子 産学で「大規模集積化」進む

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    新興企業も誕生

     2014年に産業技術総合研究所(産総研)は、半導体量子ビット素子の基礎研究に加え、集積化の先駆けとなる研究を開始した。今では、半導体量子ビット素子の大規模集積化を図る研究開発の拠点となっている。2015年以降は、米国インテル社による同分野の研究開発を皮切りに、半導体企業が相次いで参入し、スタートアップ企業も数多く誕生している。

    技術転用に利点

     量子コンピューターの基本素子である量子ビットの方式には、さまざまな候補がある。特に、半導体量子ビット素子はトランジスタと同様にシリコンを基礎材料とするので、大規模集積化という観点で一日の長がある。トランジスタで培った技術を転用でき、既に工場があるのも利点である。

     産総研は、半導体量子ビット素子にフィン型トランジスタを応用した素子構造を採用した。試作は難しいが、他の素子構造と比べて、性能の向上策を考案する余地のあることが理由である。フィン型量子ビット素子は製造に高い技術力を必要とするため、製造を手がけるのは、技術を蓄積してきた産総研の他に、インテル社とIBM社に限られる。産総研は、デバイス技術にとどまらず、プロセス技術などにも研究開発の枠を広げている。現在、5大学1公的機関とも連携し、集積化のための要素技術を総合的に開発している。

    産総研が開発するFin型半導体量子ビットの電子顕微鏡写真

    実用化に道筋

     人類は、夢の技術とされていた量子コンピューターを手中に収めつつある。商用機が市販され、またクラウドサービスの利用も可能である。今春、量子コンピューティング技術を用いた処方による化粧品が発売された。利活用の進む量子コンピューターだが、本格的に用いるにはまだ性能が足りない。量子ビットの集積数は、半導体量子ビット以外の方式でも、最大で千個程度にとどまっている。量子コンピューターが実用的な計算を行うには、100万量子ビットが必要と言われている。

     半導体量子ビット素子における最大集積数は、現状でわずか12個である。産総研は2~3年以内に、5〜10量子ビットでの演算動作の実証および100量子ビット級の試験製造を目指している。この研究を通して、工場での試験生産に向けた基盤技術を確立し、本格利用が可能な大規模集積量子コンピューターの実現への道筋を付けたいと考えている。

    先端半導体研究センター
    新原理シリコンデバイス研究チーム
    研究チーム長

    森 貴洋

    MORI Takahiro

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