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ミドリムシ接着剤

ミドリムシ接着剤

2025/07/24

ミドリムシ接着剤 高強度・易解体、再利用も

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    パラミロン活用

     ミドリムシは小学校の教科書にも登場する微生物で、植物のように光合成で生育しつつも動物のように動き回る変わった存在である。実はミドリムシには、体内に取り込んだグルコース(ブドウ糖)を連結し、非常時の栄養源となる貯蔵多糖として乾燥細胞重量の70%以上もため込む性質がある。ミドリムシがためるこの多糖を「パラミロン」と呼ぶ。パラミロンはグルコースを約2000分子、直鎖状に結合したβ-(1,3)-グルカンである。ミドリムシ細胞内では、寄り集まって直径数マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の粒子として存在する。分子量のばらつきが非常に少なく、高純度に精製可能なことから、化成品原料としても注目される。ミドリムシは増殖が速く、大量に培養可能なので、パラミロンは生産性も高い。

    化成品原料に

     産業技術総合研究所(産総研)では芝上基成博士を中心として、パラミロンを化成品原料として活用する研究を推進してきた。パラミロン自体は白い粉末(片栗粉を想像してほしい)だが、化学反応で種々の官能基を導入することで、物性を自由自在に改変できる。パラミロンは官能基導入の効率が良く、使える反応の種類も豊富なので、応用範囲が極めて広い。

    ミドリムシが貯めるパラミロンを活用して接着剤を作る

    社会実装へ化成品原料に

     パラミロン誘導体の1つにパラミロン脂肪酸エステルがある。脂肪酸は天然にも多くみられる炭化水素鎖を持つカルボン酸だが、化学処理によってパラミロンに結合することができる。選択する脂肪酸の種類によっては、パラミロン脂肪酸エステルは熱可塑性、すなわちプラスチックとしての性質を持ち、加熱によって軟化し、冷やすと硬化する。このメカニズムを利用すれば、加熱、冷却を経て接着するホットメルト接着剤ができる。

     産総研の寺崎正博士はフィルム状に加工した「ミドリムシ接着剤」を用いてアルミ板接着の評価を行った。結果は引張せん断強度30メガパスカルと、バイオベースとして過去最強で、車の車体接着に適合する強度である。再加熱によって剝がせる易解体性と剝がれた接着面をあわせて加熱すれば再接着できる再利用性も併せ持っている。バイオベース・高強度接着・易解体・再利用と、まさにサーキュラーエコノミー(循環経済)実現に必要な要素を兼ね備えたミドリムシ接着剤の社会実装に向けて、産総研はまい進する。

    モレキュラーバイオシステム研究部門
    バイオ分子探索研究グループ
    主任研究員

    氷見山 幹基

    HIMIYAMA Tomoki

    氷見山 幹基主任研究員の写真

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