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重希土類レス磁石

重希土類レス磁石

2025/05/29

重希土類レス磁石 高性能磁粉を湿式合成

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    無機化学を駆使

     自動車、家電をはじめ、多くの製品に磁石や軟磁性材料などの磁性材料が使われている。これらの多くは磁性を持った粉末を成形して固めることによって作られる。金属磁粉の製造方法は金属を溶解し各種プロセスを経て粉末化する冶金法が中心であるが、無機化学を駆使して合成した酸化物粉末を還元する湿式法もある。本稿では、産業技術総合研究所(産総研)が行っている湿式法を用いた磁石および軟磁性磁粉の開発を紹介する。

     強力な磁石として主にネオジム磁石が使われているが、(中国が輸出を規制した)2010年のレアアース・ショックのように、原材料、特に重希土類のサプライチェーン(共有網)リスクがある。このため産総研では重希土類を使用しないサマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)磁石の開発を行っている。Sm-Fe-N磁石はネオジム磁石を凌駕(りょうが)するポテンシャルを持つが、実磁石の性能は現状劣る。高性能にするには磁粉の高性能化と高密度磁石化プロセスの開発が必要であり、それぞれについて研究を行っている。

    保磁力を向上

     磁粉の高性能化として、特に保磁力(外部磁場に対する抵抗力)の向上に取り組んできた。Sm-Fe-N磁粉の製造方法に湿式法で合成した酸化物粉を水素、および金属カルシウムにより還元し、粉砕することなく直接、微粉末を作る方法(還元拡散法)がある。産総研はこの還元拡散法において、微細な酸化物粉末合成と各還元処理条件の開発により粒径のサブミクロンサイズ化による保磁力向上に成功した。さらに酸化物粉末合成装置のカスタマイズと回転炉による均一な還元拡散処理技術を開発して粒径の均一性を向上させ、Sm-Fe-N異方性磁粉として世界最高保磁力(室温3T超)を実現した。

    湿式法による高性能金属磁粉の合成

    ナノ構造制御

     独自の酸化物合成装置を用いて、鉄と希土類元素(R)、遷移金属元素(T)の3元組成のサブミクロンサイズの非晶質酸化物粉末を合成し、適切な水素還元を行うと、ナノサイズ(ナノは10億分の1)鉄粒子が電気抵抗の高い酸化物に覆われることで、GHz帯まで透磁率(磁化しやすさ)が一定な、ナノ鉄粒子とR-T酸化物の軟磁性ナノコンポジット粉末が得られる。

     今後は、開発した粉末の実用化と湿式法による高機能磁粉合成のさらなる可能性の探索を行いたい。

    マルチマテリアル研究部門
    高機能磁性材料研究グループ
    研究グループ長

    岡田 周祐

    OKADA Shusuke

    岡田 周祐研究グループ長の写真

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