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衛星画像の精度保証

衛星画像の精度保証

2025/05/22

衛星画像の精度保証 センサー感度劣化補正

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    地表で代替校正

     地球観測を行う人工衛星のセンサーは、可視光のみならず、赤外線や電波などの強度も計測している。ここでは、可視光と赤外線を計測する地球観測衛星に焦点を当てる。

     産業技術総合研究所(産総研)は、経済産業省が開発し、米国が1999年12月に打ち上げた衛星テラに搭載されている資源探査用将来型センサーASTERのデータ利活用に関する研究を行ってきた。一般に、衛星に搭載されるセンサーは、打ち上げ時の振動や加速度、真空中で宇宙線にさらされる過酷な環境などの影響で、感度が経年的に劣化することが知られている。そこで、計測機器で測定される値が正しいかどうかを校正と呼ばれる作業を通して確認している。産総研は、ASTERセンサーに対し、センサーに備えられた機器による機上校正や衛星データ間の相互校正などに関する研究を行ってきた。以下に、観測数が多い代替校正について示す。

    大気の影響考慮

     筆者は代替校正を担当している。衛星センサーが、地表面から反射する光の量や大気パラメータを計測する。一方、地上において、センサーが計測する同じ時刻・場所で、地表面からの反射光および大気中での光の散乱・吸収係数、透過率、光学的厚さなどを計測する。これらの値を用いて、衛星センサーが計測する光の量を放射伝達モデルで予測し、比較することで劣化を把握し補正する。この場合、地面が低反射率だと大気の影響を無視できない。そこで、産総研は空気が澄んで晴天率が高く、地表面が平坦・均質で反射率が高い砂漠や乾燥湖で、ASTERセンサーに対する代替校正の作業を25年以上続けてきた。現在、この校正結果に基づいて補正したASTERデータを無料で配布している。

    地表面から反射する光の量や大気パラメータを測定して代替校正を行う

    AIにも貢献

     最近、衛星画像のAIモデルでの処理に関する研究が数多く出版されている。しかし、劣化を補正していない衛星画像では品質がそれぞれ異なり、AIに活用できない。また、民間企業が中心となって、複数の小型衛星を連携させて運用する計画が見られるようになった。こうした大量の衛星画像をAIに適用するには、劣化補正は必須である。

     今後、産総研が長年ASTERセンサーで培ってきた校正技術でAI時代の衛星画像にも貢献していきたい。

    インテリジェントプラットフォーム研究部門
    地理空間サービス研究グループ
    主任研究員

    山本 浩万

    YAMAMOTO Hirokazu

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