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熱膨張特性の精密測定

熱膨張特性の精密測定

2025/05/15

熱膨張特性の精密測定 レーザーで「ゼロ材」評価

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    信頼性に不可欠

     世の中に存在するほぼ全ての物質は温度の変化に起因して体積変化を生じる。この性質は熱膨張と呼ばれ、液体や気体では目に見えるレベルでの変化であるが、固体の寸法の変化率は概ね数-数十ppm(ppmは100万分の1)/度Cのオーダーであるため日常生活でその変化を意識することはほとんどない。しかしサイズの大きな建築物や橋梁などの構造物や低/高温と密接にかかわるエネルギー・航空宇宙分野などではシステム設計や信頼性確保において熱膨張による形状変形や応力発生に対する考慮が不可欠となる。

    高感度が必要

     半導体製造装置や精密光学機器のような高度な寸法精度の維持が要求される機器部材として、温度変化による寸法変化がほとんど生じない材料(ゼロ膨張材料)が要求されている。近年は熱膨張が負の値を持つ材料の開発により、これと通常の材料を複合化することで任意の温度でのゼロ膨張特性を実現することも可能であり、ゼロ膨張材料の利用の幅も広がっている。

     現在開発されているゼロ膨張材料は熱膨張係数がppb/度Cオーダーに到達しており、その評価には一般的な熱膨張測定装置の測定分解能をはるかに超えた検出感度が求められる。また、ゼロ膨張材料では“まさに”ゼロであることが求められるため、測定基準とする参照試料などに依存しない高感度な絶対測定手法による評価が必要である。

    レーザー干渉式熱膨張観測装置の写真

    極低温もカバー

     熱膨張特性の評価は対象物の温度変化による寸法変化を検出することで実現できる。産業技術総合研究所(産総研)では波長を安定化したレーザー光をプローブとしたレーザー干渉計により寸法変化量を検出する絶対熱膨張計測システムを構築した。熱膨張特性評価に特化したレーザー干渉計により温度変化する試験体の変位検出分解能として1ナノメートル(ナノは10億分の1)以下を達成し、これまで実現困難であったゼロ膨張材料の熱膨張特性評価を実現した。

     さらにレーザー光による非接触計測であるという特徴を生かし、複数のレーザー干渉式熱膨張計により10K程度の極低温から1000℃を超える高温領域までをカバーした高精度な校正・評価を実施できる体制を整備し、ゲージブロックなどの熱膨張校正サービスや単結晶シリコンや多結晶アルミナなどによる国産の熱膨張率認証標準物質の生産・供給を行っている。

    物質計測標準研究部門
    熱物性標準研究グループ
    主任研究員

    山田 修史

    YAMADA Naofumi

    山田 修史主任研究員の写真

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