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鋳造のデジタル革命

鋳造のデジタル革命

2025/05/08

鋳造のデジタル革命 データのみで合金設計

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    経験頼み脱却

     鋳造は、部品と同じ形状の鋳型に溶解した合金を流し込んで、凝固させて部品を作製する加工法である。鋳造には中空で複雑な形状の部品を安価に大量生産できる利点があるため、鋳造部品は自動車や航空・宇宙、エネルギー設備、電子機器などの幅広い分野の製品に使用されている。しかし、鋳型内で起こる現象の可視化ができず、熱や流体、凝固、力学などが引き起こす現象も絡むことから、科学的に解明されていない事象が多い。このような理由から、現場では知識と経験を頼りに作りこむ光景も見られる。一方で、鋳造はデジタル技術の発展と共に、その技術を取り入れ、加工法としての適用可能な範囲や精密さなどを向上させてきた。

     産業技術総合研究所(産総研)の製造技術研究部門においても、鋳造のDX化に関して、企業や大学と共同で鋳造シミュレーションおよび三次元砂型積層造形の研究・開発を行ってきた。いま注力しているのが、鋳造用の合金設計システムの開発である。従来、鋳造用合金の開発には非常に高度な知識と経験が必要であった。もし、データのみで合金設計が可能となれば、知識と経験に頼る必要が無くなり、既存の概念に捕らわれない、より優れた特性を有する鋳造合金の開発が期待できる。

    高強度を実証

     そこで、合金組成について網羅的に熱力学計算を行うことにより、合金特性のみならず、鋳造成形性を評価した。得られた膨大なデータを用いて、要求スペックを満たす合金組成を見出すことが可能な合金設計システムを開発した。本システムを利用して既存の鋳造合金の組成を最適化した結果、アルミニウム合金の強度を約1.5倍にまで向上させることができ、その有効性を実証した。

    高強度組成の特徴を分析・解析することで強度を向上

    適用先が変化

     自動車の電動化やギガキャストのような革新的な技術の登場により、鋳造部品は主な適用先であったエンジン・トランスミッションなどのパワートレイン系の部品から、車体構造用部品へと適用先が変化しつつある。それに伴い、鋳造部品に求められる要求も高くなっている。そのような状況に対応するため、産総研は鋳造によって生起する現象を科学的に評価し、得られた知見を基に鋳造のデジタル化を進めて鋳造DXを先導し、日本の鋳造技術の向上に貢献していく。

    次世代ものづくり実装研究センター
    加工プロセス制御研究チーム
    主任研究員

    本山 雄一

    MOTOYAMA Yuichi

    本山 雄一主任研究員の写真

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