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水素吸蔵合金

水素吸蔵合金

2025/04/24

水素吸蔵合金 低温排熱で簡便に昇圧

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    高い体積密度

     太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーを使った水電解で製造した水素(グリーン水素)は、利用時に二酸化炭素(CO2)を排出せずに電力・熱を発生できるため、産業分野の脱炭素化に貢献できるエネルギーとして注目されている。水素は常温・常圧では気体であるため、貯蔵効率が著しく低いことが課題であったが、現在では常温・低圧(数気圧)でも高い体積密度で水素を貯蔵できる水素吸蔵合金を用いた貯蔵法の実用化が進んでいる。水素吸蔵合金は水素と反応して金属水素化物の形で水素を取り込み、その逆反応で水素を放出する。

     水素ステーションなどで水素を利用するには高圧水素への昇圧が必要となる。水素吸蔵合金は低温では低圧、高温では高圧で水素を吸蔵・放出するため、水素昇圧にも利用できる。この水素昇圧技術は100度程度の低品位の低温排熱を利用して駆動でき、摺動部がないため高耐久でメンテナンス頻度が低いなどの利点がある。しかし、80メガパスカル(メガは100万)を超える超高圧水素環境下で水素吸蔵特性を評価できる装置がないため、低温・低圧で得られた実験データからの外挿法を使った材料評価・開発が主流である。

    100メガパスカル

     産業技術総合研究所(産総研)は数グラム程度の少量の試料に対して容量(Sieverts)法で100メガパスカルまで水素吸蔵特性を評価できる装置を構築し、解析方法も確立した。

     超高圧下で高精度な水素吸蔵量の算出は、これまで無視できていた各種因子を考慮し解析に組み込むことで可能となった。

    水素をためて使うイメージ

    運用条件に近く

     材料開発では、80度程度の温度でも80メガパスカルまで水素を昇圧できるTi系AB2型水素吸蔵合金を開発した。また、蓄積した実験データを利用し、目的圧力で水素と反応できる水素吸蔵合金の化学組成を予測する方法も構築した。

     今後は実際の運用条件に近い温度変動での耐久性評価設備を構築し、高耐久で高エネルギー効率の水素吸蔵合金の開発を進める。また、水素ステーション用途だけでなく、フォークリフトや飛行ロボット(ドローン)などへの水素充填(~40メガパスカル)、高圧ガスシリンダーへの水素充填(~20メガパスカル)、CO2の回収・利用(CCU)プロセスへの水素供給(~10メガパスカル程度)などに適した水素昇圧用水素吸蔵合金開発も進める予定である。

    エネルギープロセス研究部門
    水素材料研究グループ
    研究グループ長

    榊浩司

    SAKAKI Kouji

    榊 浩司研究グループ長

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