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世界最高の標準抵抗器

世界最高の標準抵抗器

2025/04/10

世界最高の標準抵抗器 校正で産業・化学を支える

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    製品を左右

     産業技術総合研究所(産総研)では、校正事業者の標準抵抗器の校正を実施している。校正サービスの顧客には、計測機器メーカー、ビル空調制御や電子部品製造の企業の他、さまざまな事業者に標準を供給している日本電気計器検定所(JEMIC)も含まれる。産総研では量子ホール効果と呼ばれる物理現象を用いて直流抵抗の国家標準を現示しているが、校正事業者にとっては標準抵抗器が社内の基準であり、その安定性・信頼性が製品の安定性・信頼性を左右する。

     例えば製造・研究現場などで用いられる電気計測器であるマルチメーターは、基準抵抗器を内蔵しており、その安定度(抵抗値変化)は年間数千ppm(ppbは10億分の1)オーダーである。それらを評価し信頼性を担保するには、100ppmレベルで社内の標準を維持する必要がある。

    海外で採用

     産総研は、金属箔抵抗器メーカーであるアルファ・エレクトロニクス株式会社と共同で、安定性に優れた標準抵抗器を開発した。産総研の有する1ppb(10-9、1ppbは十億分の1)の測定能力を用いて標準抵抗器サンプルを評価し、製造条件にフィードバックすることで、数ppbレベルの安定性を有する標準抵抗器の開発に成功した。本抵抗器は世界的にも最高レベルの安定性を有しているため国際度量衡局(BIPM)をはじめとする海外の標準研究所で採用されている。米国の標準研究所NISTではプランク定数の決定に用いられたキッブルバランス(電流てんびんの発展型)で同じ抵抗器が採用され、現在では同装置を用いてキログラムが現示されている。

    量子効果を用いて測定信頼性を向上させることで、産業界や科学技術に貢献する

    測定値を向上

     また、三菱ガス化学ネクストと共同で、安定性に優れた高抵抗標準抵抗器の開発も進めている。同社の抵抗素子はエックス線源や電子顕微鏡などで使用されており、科学技術の発展にも寄与し得る。

     安定性・信頼性の高い標準抵抗器の開発を進めるため、産総研は日々測定能力の向上に注力している。量子ホール素子を複数組み合わせたアレー素子を開発し高抵抗の量子化抵抗を実現し、高抵抗測定の信頼性を確認する取り組みも実施している。引き続き産業の活性化と科学技術の向上に貢献すべく標準の維持高度化に努める。

    物理計測標準研究部門
    量子電気標準研究グループ
    上級主任研究員

    大江 武彦

    OE takehiko

    大江 武彦主任研究員

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