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超純水の電気伝導率

超純水の電気伝導率

2025/04/03

超純水の電気伝導率 水系モニタリングに貢献

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    電解質量指標に

     純粋な水は電気を通さない。ところが、電解質が溶け込むことで電気を通すようになる。物質の電気の流れやすさを表す電気伝導率(導電率)は、溶液中の電解質量の指標として利用できる。

     その測定は、電極対を測定対象の溶液に浸し、電圧を印加して電流を測定するだけである。電気伝導率は連続測定が可能なため、水道水や工業排水の管理、食品、化学薬品、医薬品、工業など広範な分野、および河川水や海水の環境モニタリングでも用いられている。

     ただし、測定には正確さの向上や国際的に通用する普遍性が求められる。2019年に日本薬局方の改正で、導電率測定法の項目に「認証されたトレーサブルな市販の標準溶液」という文言が追加され、国際的に受け入れられる測定手順が定められた。

    絶対測定が必要

     産業技術総合研究所(産総研)は、ユーザーの校正用として、電気伝導率の値を正確に決定した標準液を供給している。また、この標準液にトレーサブルである標準液も市販されている。

     標準液の生産には、標準液を使用しない絶対測定が欠かせない。絶対測定には、電圧印加と電流測定が正確であることの他に、電極対間の距離と電極の面積の情報が必要である。

    電気伝導度絶対測定用のセルの写真

     産総研は、ナノメートル単位で平坦な面を持つ円筒型のガラスセルを作製し、セル形状(長さ)を正確に決定することで絶対測定を実現した。また、温度の変動が10ミリケルビン以下の安定性を持つ恒温槽を用い、インピーダンススペクトルの解析によって、正確な電気伝導率の測定を可能にした。

    欧で需要高まる

     産総研は、高濃度電解質溶液に対応した10ジーメンス毎メートル(S/m)から食品分析などに用いられる0.01S/mまでの標準液を供給している。欧州では、超純水に近い電気伝導率がたいへん低い標準液の需要が高まり、その開発が進んでいる。

     超純水は、既存の計測セルでは抵抗が大きすぎて測定が難しい。また、大気中の二酸化炭素を吸収して電気伝導率が変動するため、安定した測定ができない。

     半導体洗浄や医薬品の調製では超純水、もしくはそれに近い電気伝導率の水が使用されている。それらの国際的な品質を保証するため標準の需要が高まると見て、産総研では超純水に匹敵する低い電気伝導率に特化した絶対測定セルの開発や測定環境の構築など、標準供給のための測定方法を開発中である。

    物質計測標準研究部門
    無機標準研究グループ
    研究員

    日比野佑哉

    HIBINO Yuya

    日比野佑哉研究員

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