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イノベーション生態系構築に挑む

イノベーション生態系構築に挑む

2025/03/24

イノベーション生態系構築に挑む 産学官「本気の連携」で成果

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    産業技術総合研究所は「ナショナル・イノベーション・エコシステム」のプロトタイプとして「強者連合」と「地域イノベーションをリードする多様な連合体」を提案し、自らが中核となってその成立に努めてきた。他社にない強みを持つ企業との大型共同研究「冠ラボ」や、地域企業・大学との新たな連携スキーム「BIL」がそれを体現したものである。

    冠ラボとBILのビジネス領域、スキーム
    冠ラボとブリッジ・イノベーション・ラボラトリ(BIL)

    産総研は2025年3月末で第5期中長期目標期間を終える。私はこれまで、日本全体からイノベーションを生み出し続ける産学官の相互連関、すなわち「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の重要性と、産総研がその実現のために定めた経営方針、それに基づいて実施してきた組織改革について解説してきた。今回はその成果の一端について紹介する。

    第5期において産総研は、ナショナル・イノベーション・エコシステムのプロトタイプを構築することを目標に「産総研がコアとなる強者連合」と「地域イノベーションをリードする多様な連合体」の成立を進めてきた。

    「産総研がコアとなる強者連合」とは、産総研と強みを持つ企業がビジョンを共有し、競争力のある製品・サービスを生み出す本気の連携である。社会に変革をもたらすようなイノベーションを起こすには、従来のコンソーシアムで散見されたような、協調領域での連携にとどまり、競争力を生まない表層的な連携から脱することが必要である。ここでいう「強者」とは企業の規模を意味しない。中堅・中小企業やスタートアップも、他社にない強みを持っていれば強者である。

    16年度から個別企業のニーズに特化した研究開発を実施する「冠ラボ」を産総研内に設置している。第5期ではこの制度を活用し「強者連合」の成立を目指してきた。企業のトップが合意し、トップダウンの大きな投資によって設置される「冠ラボ」は、現場の決裁者レベルで結ばれる共同研究とは企業の本気度が違う。この成立のため、私は経済団体での声がけや直接対話によるトップセールスを積極的に実施した。23年に設立したAIST Solutionsが実施する強力なマーケティングのかいもあり累計30件の冠ラボの成立に成功している。

    また、「地域イノベーションをリードする多様な連合体」の形成も重要である。ナショナル・イノベーション・エコシステムは、地域も含んだ日本全体から持続的にイノベーションを生み出していく構想であるからだ。このため、地域の企業ニーズを核として地域大学と連携するブリッジ・イノベーション・ラボラトリ、通称BILの整備を進めており、すでに三つのラボが活動を開始している。今後も新たなBILの整備を進め、地域からのイノベーション創出に意欲を持つ産学官の皆さまとの連携を深めていきたい。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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