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地下空間の利用

地下空間の利用

2025/03/20

地下空間の利用 断層滑り可視化で安全に

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    流体移動リスク

     地下空間の利用、例えば二酸化炭素の地下貯留などは、断層周辺の応力場や間隙水圧を変化させ、断層のすべりに伴う地震を引き起こす可能性がある。また、問題なのは、新たな水みちが形成され、地下に貯留・処分された物質が地下水とともに地表付近まで運ばれるリスクである。このような流体移動のリスクを評価するためには、深度による圧力の違いが断層のすべりや地下水挙動にどのように影響を与えるのかを解明することが重要となる。

    直接観察は困難

     しかし、断層は地下深部の高い圧力環境にあるため、すべりの様子を直接観察することは困難であり、断層が地下水に与える影響の理解も十分ではない。

     断層のすべりや破壊メカニズムに関する実験研究では、通常、堅牢な圧力容器を用いるため直接観察することができない。そのため、高圧環境下での模擬断層によるすべり挙動を直接可視化した例はなかった。さらに、従来の変位計やひずみゲージによる計測では断層の変位の局所的なデータしか得られず、ひずみ分布を詳細に把握することが難しかった。

     産総研は、小型カメラが内蔵可能な耐圧ケースを開発し、高圧環境下での模擬断層すべりのリアルタイム映像モニタリングを実現した。本モニタリングシステムは、圧縮試験機に設置した圧力容器内部の撮影ができ、また従来では得られなかった模擬断層すべりに関する物理データの取得を飛躍的に拡充する。このシステムは低コストで設置が容易である。既存の圧縮試験装置を改造することなく利用できるため、新たな標準的な計測システムとしての普及が期待される。

    新開発の断層モニタリングシステム

    歪み分布を解明

     同技術を用いることで、圧力容器内の映像を通じて、圧力に応じたひずみの変化をリアルタイムに計測できるようになった。これらの結果を、野外計測結果と比較することで、実際の断層すべりにおけるひずみ分布の解明に役立てることができる。

     この技術の活用で、地下の応力場における断層すべりや破壊現象に関する常圧下の概念モデルを高圧環境下でのモデルに改良できる。地下空間の利用や地下資源の採取といった地盤工学的な応用にも貢献する。

     また、地震活動の解明など、防災分野における新たな研究の発展にも寄与すると期待される。

    活断層・火山研究部門
    地質変動研究グループ
    主任研究員

    朝比奈 大輔

    ASAHINA Daisuke

    朝比奈 大輔主任研究員

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