変革につながるアイデアは、きっと研究の最前線にある。日本最大級の公的研究機関・産総研の公式ウェブマガジン。

レーザー干渉計高度化

レーザー干渉計高度化

2025/03/13

レーザー干渉計高度化 多重反射防ぎ誤差低減

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    試料の変位計測

     近年、半導体デバイスの製造技術やその検査技術の発展に伴い、数ナノメートル(ナノは10億分の1)から1メートル程度まで幅広い範囲の変位(試料の移動距離およびその方向)を高精度に計測することが必要となっている。このような変位計測を実現する手段として、レーザー干渉計が広く用いられている。レーザー干渉計は、安定的なレーザー光源の波長を基準とした信頼性の高い計測技術であるが、正確な計測値を得るには、波長の決定誤差、空気屈折率の補正誤差、アッベ誤差、周期誤差などの誤差要因の低減が不可欠である。

     レーザー干渉計では、特に小さい変位を計測する際の誤差が大きいことが問題である。その原因が周期誤差である。周期誤差は、レーザー波長の整数分の1のピッチで周期的に発生する誤差のことであり、光学素子の不完全性などが原因となって一般的に数ナノメートル程度の大きさとなる。周期誤差の大きさは固定値であるため、計測する変位が小さくなると相対的にその影響が増大する。

    信号の歪み活用

     産業技術総合研究所(産総研)では、周期誤差を低減する目的でレーザー干渉計の研究開発を行っている。まず、干渉計自身の干渉信号の歪みから周期誤差を正確に検出する手法を開発した。これにより、自身の信号に含まれる周期誤差を1ピコメートル(ピコは1兆分の1)程度まで検出できるようになった。

     次に周期誤差の低減に取り組んだ。周期誤差は数値処理でその大半が低減できるが、一部で残存する周期誤差も存在する。残存成分を詳しく調べた結果、光学素子の表面と計測対象との間で生じる多重反射が原因であると分かった。そこで、多重反射が起きないレーザー干渉計を新たに開発したところ、周期誤差が数ピコメートルまで低減できた。

    開発した小型干渉計モジュール

    モジュール化

     また、開発した干渉計を小型モジュール化し、その数ピコメートル周期誤差の実現にも成功した。この干渉計モジュールを活用して、リニアエンコーダーなどの高精度変位センサーの周期誤差評価に取り組んでいる。また、この干渉計モジュールを組み込んだ超高精度走査型トンネル顕微鏡の開発にも取り組んでいる。

     今回開発した技術を活用した新しいアプリケーションを提案し、さまざまな計測分野の課題解決を図ることで、産業界の発展に貢献していきたい。

    工学計測標準研究部門
    長さ標準研究グループ
    主任研究員

    堀 泰明

    HORI Yasuaki

    堀 泰明主任研究員

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.