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ウイルス濃度定量技術

ウイルス濃度定量技術

2025/03/06

ウイルス濃度定量技術 採取場所別に夾雑除く

 

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    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    コロナで周知

     コロナ禍を経て、衛生管理における日常ケアの重要性が広く認識されるようになった。それでも、この冬はまたしても新型コロナに加え、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎など、複数の感染症が同時に流行している。われわれは、そのような背景を踏まえ、目に見えない空気中のウイルスや細菌を計測し、その存在量を基にしたリスクの科学的な評価および感染リスクを低減する技術を開発している。

     例えば、ウイルスの定量手法の開発である。これは湿式エアサイクロン捕集器を用いて空間を漂うウイルスを液体中に集め、適切な前処理を経てポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で核酸増幅し、ウイルスの濃度を定量する手法である。

    リスク明確化

     ただし、採取場所ごとにPCR分析の定量性を阻害する夾雑物の性状や濃度が異なるのが問題である。そこで、採取場所に応じて、標的と夾雑物をふるい分ける前処理法を開発した。この技術を絶対量測定技術として活用するためには、標的の捕集効率や分析ロスの割合を予め把握しておくことが肝要である。

     我々は、これまでに、都内病院の発熱外来や牛・豚・鶏などの畜産農場で実証実験を重ねてきた。ウイルスや細菌への対策が不可欠な機関からは、この手法に対し高い評価と実用化への強い期待をいただいている。これは、それぞれの空間内のウイルス濃度が把握できれば、場所ごとのリスクを明確にし、より適切な対処を講じることができるためである。

     また、空間濃度の把握は、過度な対応による経済的・時間的な損失や不安感の解消にもつながる。施設内でのウイルスの濃度分布を知った上で、クラスター発生を未然に防ぐことが期待される。さらに、濃度の時間変動を知ることで、科学的エビデンスに基づいた終息の判断が可能となる。

    ウイルスを捕集・増幅させ、PCR検査を行い、リスクを定量化する

    社会実装への試作

     我々は、すでに技術の実用可能性を実証できたと考えている。しかし、社会実装に向けては、自動化や低コスト化が必須である。そこで、空気中のウイルスを捕集し、現場で分析できる自動センシングシステムと、その結果と連動しウイルスを不活化する大風量の空気清浄機を試作している。

     今後、これらの機能と実用性の検証を進める。また、製品化に向けたパートナー企業を募り、産業界、行政、研究機関との連携を深めるなどの多角的な取り組みを通じて、先進的な防疫システムを実現したい。

    センシングシステム研究センター
    総括研究主幹

    福田 隆史

    FUKUDA Takashi

    福田 隆史総括研究主幹

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