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電圧書き込み式MRAM

電圧書き込み式MRAM

2025/02/27

電圧書き込み式MRAM 安定動作と大容量両立

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    機器を省電力化

     近年、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ(大量データ)などに関する技術の急速な発展に伴い、情報処理量および電力消費量の爆発的増大が懸念されており、IT機器の低消費電力化が求められている。磁気をもたらす「スピン」の性質を活用する「スピントロニクス」と呼ばれる研究分野では、磁石の磁極が持つ不揮発性を利用した待機電力ゼロの不揮発性磁気メモリーMRAMの開発が行われている。

     MRAMは磁石の磁極の方向を利用して情報を記憶する。現行のMRAMでは電流で磁気情報を担うナノ磁石の磁極の向きを制御(磁極制御)する電流書き込み方式が広く採用されている。しかし、この方式では、電流によって生じる発熱に起因したエネルギーロスを避けられない。

    低損失に注目

     一方で、基礎研究段階ではあるものの、電圧を用いた磁極制御手法もある。この手法では、原理的に電流が不要なので、次世代のMRAMにおける低損失な情報書き込み技術の候補として注目されている。しかし、実用的な低い電圧印加で磁極を制御するには、同制御効率の大幅な向上が求められている。

     産業技術総合研究所(産総研)は、電圧を印加するナノ磁石と絶縁体の間の界面に原子層レベルの重金属をドープ(添加)することで、電圧による磁極制御効率を大幅に向上させるプロセス技術を開発し、重金属としてイリジウムを導入することで、世界トップクラスの磁極制御効率を達成した。さらに、量産プロセスへの技術移管や企業との共同研究による電圧制御型MRAMチップの試作にも取り組んでいる。

    電圧による磁極制御の模式図

    新駆動原理探る

     また、現状の電圧書き込み方式では、書き込み信号の精密な制御が必要であり、安定的なメモリー動作と大容量化の両立が難しい。これを解決するために、2023年から科学技術振興機構(JST)さきがけ「新原理デバイス創成のためのナノマテリアル」の研究者として、新たな駆動原理に基づいた電圧書き込み手法の開発を独自に進めている。

     ここでは大容量化しても安定な書き込みが可能な新規の電圧駆動型磁極制御技術の実証とその省電力化の達成を目標としている。新しい電圧書き込み方式を開拓することで、情報不揮発性と低駆動電力性を兼ね備え、広範な階層に適合可能な次世代メモリーへの展開を目指す。

    新原理コンピューティング研究センター
    不揮発メモリチーム
    主任研究員

    中山 裕康

    NAKAYAMA Hiroyasu

    中山 裕康主任研究員

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