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医療用低温プラズマ源

医療用低温プラズマ源

2025/02/20

医療用低温プラズマ源 熱損傷なく創傷部止血

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    世界最小の工具

     宇宙空間では、観測できる物質の99%以上はプラズマである。プラズマは、固相、液相、気相に次ぐ第4の相とも呼ばれ、電荷をもつ電子やイオン、電気的に中性な粒子で構成されており、化学的に活性である。太陽からの太陽風は、プラズマで構成されている。地球上では、雷やオーロラ、電離層がプラズマと関係が深い。しかし、私たちの生活空間に、プラズマは通常は存在しない。

     一般に、減圧環境でプラズマを人工的に生成でき、エッチングや成膜など、現在の半導体製造を支える基幹技術となっている。また、材料の親水性や接着性、耐摩耗性を向上させる表面改質技術として用いられている。プラズマは原子・分子から構成されているので、世界で最も小さい工具といえる。

    大気圧で冷たく

     産業技術総合研究所(産総研)は、近赤外域の高効率光デバイスや次世代高周波デバイス実現のための新たな化合物半導体製造などに展開された高密度窒素ラジカル照射プラズマ源(左図)など、さまざまなプラズマ源をこれまでに提案してきた。

     プラズマ技術の進歩により、大気圧環境下において、「冷たいプラズマ」を生成できるようになった。その結果、液体や細胞などの熱に弱い材料に対してもプラズマ照射を行うことができ、熱損傷を起こさずに酸素・窒素系の化学的に活性な粒子の供給が可能になった。

    プラズマ源の写真

    たんぱくを制御

     このような中、医療応用を目指した低温大気圧プラズマの研究が進められている。特に、ヒトに対してプラズマを直接照射・処置して、創傷の殺菌を行い、治癒を促すことができるようになってきた。

     産総研は、ヒトに対する処置に着目して、局所的な止血を目的としたプラズマ源(右図)をこれまでに開発してきた。患部にプラズマを当てると、熱損傷を与えずに血液が凝固し、止血ができる。また、一連のプラズマ照射による止血機構の解明のなかで、プラズマによりたんぱくの凝集を制御できることが分かってきた。

     この技術は、非接触で任意の場所でたんぱくを凝集することができるため、剤型加工技術やバイオセンサー製作などに展開できると考えている。

    電子光基礎技術研究部門
    先進プラズマプロセスグループ
    研究グループ長

    清水 鉄司

    SHIMIZU Tetsuji

    清水 鉄司研究グループ長

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