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溶媒リサイクル

溶媒リサイクル

2025/02/13

溶媒リサイクル 工程全体の評価法開発

 

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    再生わずか8%

     溶媒は化学品生産や半導体製造、塗料、印刷などさまざまな分野で多量に用いられている。溶媒の用途は多岐にわたり、目的の物質を溶かすことで反応や分離の促進や、目的物質の精製、不純物の除去などに用いられる。現在、使用した溶媒は、その大半が焼却され二酸化炭素(CO2)として排出されている。日本溶剤リサイクル工業会によると、溶媒のリサイクル率は新液の供給量に対して8%ほどにとどまっている。

     これは、プラスチックのマテリアルリサイクルよりも少ない。今後、炭素税によりCO2排出がコストとして上乗せされると、現行のエコシステムでは立ち行かなくなるため、溶媒循環への移行が必要となる。

    最小のコストで

     これまでの溶媒選択では、合成反応の収率や抽出効率が最も良い溶媒が選ばれてきた。しかし、反応収率や抽出効率が最良でも、用いた混合溶媒の組み合わせが分離しづらい場合には、溶媒の分離・精製に多くのエネルギーが必要となり、溶媒のリサイクルまで含めた生産プロセス全体では最適でないことがある。

     生産プロセス全体を考慮した溶媒の選択は、生産量が多い基礎化学品の生産では進んでいるが、少量多品種生産の機能性化学品の生産においてはほとんど行われていない。

     産業技術総合研究所(産総研)では、ライフサイクルアセスメント(LCA)と経済性評価を統合したプロセス計算に基づく化学プロセスの設計・評価方法の開発を進めている。この方法では生産プロセス全体でCO2排出量と生産コストの両方を最小化する条件の特定を目指している。

    溶媒をリサイクルすることで循環型ものづくりを加速する

    選択段階で適用

     能性化学品の開発にこの方法を展開し、目的化学品の反応収率だけでなく、抽出効率や使用した溶媒のリサイクルまでを考慮したシミュレーションモデルを構築して、最適な溶媒を特定できる方法を開発している。

     プロセス計算に基づく溶媒選択は、実験による溶媒候補の絞り込みが行われる前に適用することが望ましい。そこで、開発している評価方法の利便性と汎用性を高めた簡易ツールの作成にも取り組んでいる。本研究の推進により、溶媒循環の視点から持続可能なものづくりを目指す。

    化学プロセス研究部門
    化学システムグループ
    主任研究員

    山木 雄大

    YAMAKI Takehiro

    山木 雄大主任研究員

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