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車窓調光フィルム

車窓調光フィルム

2025/01/30

車窓調光フィルム 電気化学反応で遮熱

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    熱こもりやすい

     自動車の窓ガラスからは太陽光と熱が室内に入り込み、室内の温度が高くなる。自動車の狭い密閉空間は熱がこもりやすいため、特に夏の炎天下に駐車する時には適切な遮熱や空調による冷却手段を取らないと、運転者や同乗者の快適性を損ない、熱中症の危険性も生じる。

    空調負荷抑える

     今後、多くの国で電気自動車をはじめとする次世代自動車の普及が進むと予想される。次世代自動車の需要が拡大するにつれて、航続距離を延ばすためには、各種電装品の電力消費を抑制する必要がある。そのための一つの方策として、空調負荷を最小限に抑えることで電力効率を向上させ、電費を改善することが求められている。

     産業技術総合研究所(産総研)では調光技術を使った「調光フィルム」の研究開発を行っている。我々が開発している調光フィルムは電気化学反応を利用し、光学特性を切り替えることができ、正極/電解質/負極と二次電池に類する構造を呈している。調光フィルムを充電すると青く着色し、着色による可視光領域の遮光性と近赤外線領域の遮熱性を発現する。放電すると元の無色透明状態に戻る。

     この変化は乾電池 1 本程度で可能であり、二次電池と同様にメモリー性があるため、充電量に応じて無段階に調光が可能である。自動車の窓に搭載することで、過剰な電力を消費せずに調光できるため、室内環境の熱負荷を容易に制御できる。また、着色状態では、外から中が見られないため防犯上も有効である。

    開発した様々な水性塗料は透明から遮光・遮熱のフィルムまで可変である

    印刷技術で作製

     調光フィルムは、正極/電解質/負極の全てを生産性に優れる印刷技術で作製が可能である。プルシアンブルー(PB)ナノ粒子(産総研が開発)と酸化タングステン(WO3)ナノ粒子(東芝マテリアル〈横浜市磯子区〉が開発)を水性塗料化し、それぞれを塗布した樹脂フィルムを、電解質を介して貼り合わせる。PB 膜は酸化着色型薄膜、WO3 膜は還元着色型薄膜として機能する。現在、サプライチェーン(供給網)の強者連合フォーメーションを構築し、林テレンプ〈名古屋市中区〉と連携して自動車用調光フィルムの社会実装研究を実施している。最近では自動車搭載のための意匠性担保のために新たに黒色調光フィルムも開発中である。今後さまざまな耐久性試験も実施し、早期の実用化を図りたい。

    ナノ材料研究部門
    接着界面グループ
    研究グループ長

    田嶌 一樹

    TAJIMA Kazuki

    田嶌 一樹研究グループ長

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