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単層CNT合成

単層CNT合成

2025/01/16

単層CNT合成 2層下地で触媒超寿命

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    日本発ナノ材料

     カーボンナノチューブ(CNT)とは、1991年に発見された日本発のナノ材料であり、炭素原子で構成された非常に細長い筒状分子である。複数の筒が積層した多層CNTと、一層のみの単層CNTに分けられ、軽量で優れた機械強度や電気伝導性を有するためさまざまな用途が期待されている。多層CNTはリチウムイオン電池の導電助剤用途を中心に市場が急速に拡大している。一方、単層CNTは、多層CNTより性能は優れているが、生産コストが高いため市場規模は限定的であった。

     CNT合成には、触媒となる金属ナノ粒子(ナノは10億分の1)を作製し、高温での原料ガス(炭化水素)供給が必要だが、単層CNTにおいては触媒寿命が極端に短く、生産効率が悪いという問題があった。2004年に産業技術総合研究所(産総研)は、触媒の長寿命化と生産効率の向上を実現する「スーパーグロース法」を開発した。

    10分で集合体

     この方法の特徴は、基板表面上に触媒ナノ粒子を高密度に形成し、さらに原料ガスへ水分を添加することである。本方法では、10分程度でミリメートルスケールの非常に長いCNTの集合体(フォレスト)を合成できる。企業と共に量産プロセスを開発し、2015年には第一世代のプラントが竣工し、さらに大幅な低コスト化を目指す第二世代量産プロセスの開発も行われている。

     近年では、コスト削減に加えてCNTの高品質化が求められている。CNTには直径・長さ・結晶性など多様な構造があり、これらを用途に応じて精密に制御したCNT合成技術開発が目標となる。

    スーパーグロース法でカーボンナノチューブを作るイメージ図

    2方向でトライ

     アプローチの一つは、触媒の精密制御である。例えば触媒ナノ粒子をより小さくすれば、より細い単層CNTが合成できる。最近筆者らは触媒ナノ粒子の下地層の重要性に着目し、この構造を二層化することで触媒寿命を大幅に長くした。この成果をCNT構造制御にも活用する。

     もう一つのアプローチは「自律化」による実験効率化である。産総研では2000年代から全自動CNT合成装置を開発してきた。より複雑かつ精密な合成技術の効率的な開発を目指し、CNT試料の自動評価から機械学習による実験条件の決定を無人で自律的に遂行する実験システムの構築を目指している。

    ナノカーボンデバイス研究センター
    先端素材研究チーム
    研究チーム長

    桜井 俊介

    SAKURAI Shunsuke

    桜井 俊介研究チーム長の写真

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