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ナノ水素センサー

ナノ水素センサー

2025/01/09

ナノ水素センサー ナノギャップ電極を応用

日刊工業新聞寄稿記事「技術で未来拓く」
    KeyPoint産総研では、将来の産業ニーズを見据えた目的基礎研究を通じて、革新的な技術シーズの創出に挑戦しています。
    こうした最先端の成果を、日刊工業新聞で連載しています。産総研マガジンでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    ※本記事は、日刊工業新聞社の許諾を得て掲載しています。著作権は日刊工業新聞社に帰属します。

    省エネ難しく

     脱炭素社会のキーテクノロジーとして、水素エネルギーの利活用が提唱されている。しかし、水素は空気中での爆発限界が混合比4-75%と広いため、安全な水素利用には測定範囲が広い水素センサーが必要になる。これまでにさまざまな水素センサーが実用化されているが、多くはガスの検出感度を向上させるために測定時にセンサー部分を200度C以上で加熱しており、省エネルギー化が難しい。室温での検出を目指し、ナノ構造やナノ材料を利用した感度の向上が期待されている。

     産業技術総合研究所(産総研)では、最小で原子数個分の1ナノメートル(ナノは10億分の1)を下回る間隙(かんげき)幅をもつナノギャップ電極(NGE)の研究開発を行っています。この技術を使って、ナノ材料の物性測定や600度Cでも動く不揮発性メモリーなどの電子デバイスの研究を進めている。

    電極間隔1ナノ

     機能性酸化物を用いた半導体方式のガスセンサーにこの技術を適用し、ナノメートルサイズの水素センサーを実現した。図は、従来のガスセンサーとの構造の違いを示している。ナノ水素センサーは、電子顕微鏡写真に示すように、高さ1.1ナノメートル、横20ナノメートルしかない。室温で1%の水素の検出時に抵抗が10万分の1以下になる高い感度を示した。この抵抗差は、写真中の丸印で示した白金(Pt)電極とチタン酸化物(TiOX)の接合部付近に水素が接触した時に発生する電流の変化を反映している。

    半導体式ガスセンターの中核部位の電子顕微鏡写真

    酸化物焼成なし

     従来の半導体式ガスセンサーは、酸化物を500度C以上で焼成し、結晶性を改善させることが一般的だ。しかし、開発したナノ水素センサーは電極間隔が狭いため、結晶性の改善がなくてもセンサーの抵抗値を正確に検出できるため、焼成プロセスを省略でき、製造時のエネルギー消費を節約できる。これは、同一基板上への並列作製にとっても有利な点であり、センサーの小型化にも役立つ。

     このセンサーの構成は、すでに実用化されている機能性酸化物を用いた不揮発性メモリー(ReRAM)に類似しており、実用化に向けた研究につながっている。

     今後は、水素以外にも検出できるガスの種類を増やし、多様な災害の防止につながる正確で安価なマルチガスセンサーとしての活用を目指し、研究開発を進めていきたいと考えている。

    デバイス技術研究部門
    エマージングデバイステクノロジー研究グループ
    研究グループ長

    内藤 泰久

    NAITOH Yasuhisa

    内藤 泰久研究グループ長の写真

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