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真の総合研究所を目指しガバナンス改革

真の総合研究所を目指しガバナンス改革

2024/12/23

真の総合研究所を目指しガバナンス改革 社会に価値、資源を最適配分

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    産業技術総合研究所は将来的に日本全体の「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核としての役割を果たすことを目標に、多様な研究領域の掛け合わせによる「融合研究」の推進や社会実装を加速するための「AIST Solutions」の設立などさまざまな改革を行ってきた。これらの改革の原点は産総研が総合力を発揮できるようにするための「ガバナンス改革」である。

    産総研が「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核になるための改革についてこれまで2回にわたり述べてきた。改革の本来の目的は、産総研を真の意味での「総合研究所」にして、価値を高めることにある。

    われわれの目指す総合研究所とは、各分野の専門知が単に集合しているだけではなく、それらが融合し、相乗効果を発揮して社会に新たな価値を生み出せるものだ。実現には最適な組織体制を構築し、人員や予算などの研究リソースを適切に配分することが必要であった。

    産総研が総合力を発揮するための重要なアクションが、「ガバナンス改革」である。ポイントは大きく三つある。

    理事会が重要事項の意思決定、執行の管理機能をもち、最高執行責任者以下が執行する体制
    産総研の変更後のガバナンス体制

    一つ目は、理事会から執行機能を分離し、七つある研究領域のトップが理事を兼務しないようにしたことである。企業に例えると、事業部の長が経営者を兼ねていると、どうしても部分最適に陥りかねず、全社的な改革に躊躇が生じてしまう。この弊害を排除した。

    二つ目は、外部理事の拡充である。外部から客観的な意見をより多く取り入れることで、研究所の意思決定と執行の監視を適正化した。

    三つ目は、前々回で述べたように、七つの研究領域を統括する研究開発責任者(CTO)と、その下で実務を担う研究戦略企画部の設置である。

    さらに、総務や環境安全など管理・運営に係る部署を統括する運営統括責任者(COO)と運営統括企画部を設置し、事務部門の連携も強化した。加えて、私自らが人事委員会のメンバーとなり、改革の実効性を担保した。

    これら一連のガバナンス改革によって、産総研は文字通り総合研究所に近づいたと考えている。また産総研では、ミッションである「社会課題解決と産業競争力強化」に照らして、所全体での研究開発の重みづけを社会実装研究:応用研究:目的基礎研究の比率で3:5:2に設定している。ガバナンス改革によって産総研全体を見た適切な資源配分ができるようになり、「研究のポートフォリオ」の実効的な運用が可能になった。

    こうしたトップダウンによる改革が現場の職員に浸透するには、職員と組織との間の双方向の信頼関係、すなわちエンゲージメントの確保も大切である。連載の初回でも述べたように、旭硝子時代にはじめて企業経営を任されたときに、このことを強く認識した。次回は、産総研で試みているエンゲージメント向上のための施策について述べたい。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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