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AIST Solutionsの挑戦

AIST Solutionsの挑戦

2024/11/04

AIST Solutionsの挑戦 マーケ×技術、社会実装推進

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    産業技術総合研究所は、ミッションである「社会課題解決と産業競争力強化」を達成するためにさまざまな改革を進めてきた。中でも最大の改革は、「AIST Solutions(アイスト ソリューションズ、AISol)」の設立だ。同社は産総研グループとして、産総研と日本全体の「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核としての役割を果たすという同じ目標に向かって進んでいる。

    産総研の第5期中長期目標(2020-24年度)で掲げたミッションは「世界に先駆けた社会課題の解決と経済成長・産業競争力の強化に貢献するイノベーションの創出」である。このミッションは、研究成果を出し、論文を書くだけでは達成できない。成果を製品やサービスの形で社会実装し、それらが実際に社会や産業を変革してイノベーションが起こることで初めて達成できる。

    これは、良い技術だから使われるはず、といったシーズ志向的な独りよがりでは実現しない。効率的な社会実装には、十分なマーケティング(市場調査)によって社会が真に望んでいるものを見極める高度な洞察力と、時宜を逃さず迅速にアクションする機動力が必要になる。

    製品やサービスとして技術を社会実装する主体はその事業を手がける企業であって、産総研が自らビジネスを展開することはできない。だからこそ、企業のこうした活動に寄り添い、ときに積極的に伴走して企業と共に価値創造することが重要である。

    そのため私は産総研の組織体制について一大改革を行なった。産総研は従来「研究推進」と「組織運営」の2本柱で運営してきた。だが、研究成果の社会実装を効率的に進めるために3本目の柱として「社会実装本部」を新設した。

    AI・半導体、マテリアルDX、デジタルプラットフォーム、バイオテクノロジ、エナジーソリューション、ウェルビーイング、サーキュラーエコノミー

    ただ、内部組織としての社会実装本部では、社会実装を担う企業と同じ機動性やスピードで取り組むことが難しい側面があった。そこで、社会実装本部の主要な機能を外部法人化し、23年にAISolを設立した。現在、約210人の体制で活動している。

    AISolの役割は、一つにはマーケティングによって社会課題や企業ニーズを把握し、そこからバックキャストして、産総研がどのような研究を行うと価値が生まれるかを明らかにすることである。もうひとつには、産総研が生み出す技術シーズに加え、産総研内の技術資産、企業や他機関が持つシーズも活用してテクノロジーへとまとめ上げ、それを「事業共創」のフェーズに載せることである。

    事業共創とは、企業や、組織的に創業支援するスタートアップを通じてテクノロジーを社会実装し、新たな事業価値を創出することである。いわば、マーケティングとテクノロジーの掛け合わせにより、社会に今までにない価値を創出することだ。それがAISolの挑戦である。具体的には「マテリアルDX」「デジタルプラットフォーム」「AI・半導体」「エナジーソリューション」「バイオテクノロジ」「ウェルビーイング」「サーキュラーエコノミー」の七つのソリューション領域を設定して活動を行っている。

    設立から1年半ではあるが、大型共同研究の成立やAISol認定スタートアップの支援などの成果が上がっている。これからの活動に期待してほしい。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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