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イノベーション・エコシステムで日本復権

イノベーション・エコシステムで日本復権

2024/09/30

イノベーション・エコシステムで日本復権 融合研究、異分野の知つなぐ

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    2020年4月に産業技術総合研究所の理事長に就任し、ミッションである「社会課題解決と産業競争力強化」を達成するための経営方針を定めた。その中で、産総研が将来的に「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核になることを目標に掲げ、実現に向けたさまざまな改革を進めている。多様な領域を掛け合わせた「融合研究」の推進もその一つ。

    現在、産総研は、20年度から5年間の第5期中長期目標期間の最終年度に当たる。同目標では「世界に先駆けた社会課題の解決と経済成長・産業競争力の強化に貢献するイノベーションの創出」がミッションとなっている。第5期の初年度に理事長に就任し、ミッション達成に向けて産総研が第5期でやるべきことを特定するために、産総研の将来像の検討から始めた。

    日本ではオープンイノベーションが米中欧に比べ大きく劣後していること、その要因が企業と大学・公的研究機関の双方にあることを前回論じた。また、日本にはイノベーションの創出に関与する企業、研究・教育機関、投資家、政府など立場の異なる組織間の相互連関、すなわちイノベーション・エコシステムが育っていないこともかねて指摘されている。日本は技術で勝ってビジネスで負けるとよく言われるが、この負のお家芸とも言うべき状況を打開する必要がある。産総研をドイツのフラウンホーファー研究機構や台湾の工業技術研究院(ITRI)のように、企業や大学などと密接に連携して革新的な技術シーズを確実に事業化まで結びつける研究組織にできないか、産総研の役割をいま一度見直したいと考えた。

    ・シームレスかつ迅速に社会実装へ 企業の利益を還流して次なるシーズ創出へ
    産総研のナショナル・イノベーション・エコシステム

    そこで、新たに第5期の経営方針を定め、産総研が将来にわたって日本全体の「ナショナル・イノベーション・エコシステム」の中核としての役割を果たすことを目標に掲げた。基礎研究から社会実装に至るプロセスを、産総研が中心となり、企業や大学・公的機関と協働してシームレスかつ迅速に進め、イノベーションにつなげる。得られた企業の利益の一部を基礎研究に充て、次なるシーズ創出を誘起する。このサイクルを繰り返すことで、イノベーションが継続的に生み出される仕組みを日本に構築したいと考えた。

    この産総研の将来像からバックキャストして、第5期ではエコシステムのプロトタイプ構築を目指すこととし、その実現のために理事長としてさまざまな改革を実行した。その一つが「領域融合」だ。本来、イノベーションは改良型の研究、既存の考えの延長線上からは生まれない。追求するべきなのは非連続な跳躍であり、それは新たな知の接触によって生まれる。私はイノベーションを生み出すカギは、ダイバーシティ(多様性)だと信じている。

    この産総研の将来像からバックキャストして、第5期ではエコシステムのプロトタイプ構築を目指すこととし、その実現のために理事長としてさまざまな改革を実行した。その一つが「領域融合」だ。本来、イノベーションは改良型の研究、既存の考えの延長線上からは生まれない。追求するべきなのは非連続な跳躍であり、それは新たな知の接触によって生まれる。私はイノベーションを生み出すカギは、ダイバーシティ(多様性)だと信じている。

    産総研は多様な分野の科学技術の専門家を2000人以上抱えるが、これまでは七つの研究領域間のシナジーが希薄だった。そこで、理事長直下に研究開発責任者(CTO)を、またCTOの下に研究戦略企画部を置いて、研究所全体の研究戦略を企画・指揮し、領域の垣根を越えた全所的な相乗効果を発揮できる体制を整えた。総合研究所である産総研だからこそできる、多様な領域を掛け合わせた「融合研究」によるブレークスルーを狙っている。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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