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天才に代わるオープンイノベーション

天才に代わるオープンイノベーション

2024/08/12

天才に代わるオープンイノベーション 求められる自前主義脱却

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    2003年にオープンイノベーションの概念が提唱され、政府や経済団体などでもその必要性が訴えられてきた。だが、日本の企業はいまだ自前主義にこだわり、国際的に大きく劣後している。企業は大学や公的研究機関をアウトソーシングに使っているのが実態であり、これではイノベーションが生まれるはずがない。経営層はマインドを変える必要があり、同時に公的研究機関や大学も魅力を高める努力が必要である。

    日本企業の国際競争力は失速して久しいが、その間に、例えば米国企業はインターネットやスマートフォン、生成人工知能(AI)など、次々と社会に大きな変化をもたらすイノベーションを生み出してきた。

    一体どうすれば日本はイノベーションを生み出せるだろうか。理想的には、企業がエジソンのような発明の天才を大勢抱えて、そうした天才に活躍してもらうことだろう。しかし、日本ではなかなか天才が育たない。教育システムを改善したとしても、結果に表れるまでには長い時間がかかる。

    天才に代わるもう一つの手段は、ダイバーシティ、多様性だと私は考える。異質な者同士が交わり、多様な意見が組み合わさることで新しい発想が生まれる。ダイバーシティを高めるのに最も有効なのは、組織を超えた連携、つまりオープンイノベーションである。

    主要国の企業支出研究費における公的機関への拠出のグラフ
    主要国の企業支出研究費における公的機関への拠出

    では、日本におけるオープンイノベーションの状況は海外と比べてどうだろうか。政府がまとめた「科学技術指標2023」によると、21年における日本企業の研究開発費の総額は約14兆円である。欧州各国は10兆円以下であり、決して少なくない。問題なのは、そのうち企業が大学や公的研究機関とのオープンイノベーションに投じる研究費である。日本は1000億円ほどで総額のわずか0.7%であり、公的研究機関に限れば400億円ほど、0.3%にすぎない。この割合は、中国、ドイツ、英国、フランスなどに比べ圧倒的に少ない。米国は0.9%と同程度の割合だが、金額は日本の5倍ほどだ。これは、日本企業に自前主義が根強く残っていることを示している。

    また経済同友会の調査によれば、22年度の日本企業の大学・公的研究機関との共同研究費は、1件あたり平均約320万円。2万8000件強のプロジェクトの約8割が研究費300万円未満である。つまり、社会を変えるようなイノベーションを志向した協業が極めて少なく、多くは企業からの単なるアウトソースにとどまっていることを意味している。これではイノベーションが生まれるはずがない。本来、オープンイノベーションは、企業の事業ポートフォリオを変えるような、中長期的に企業収益を支えるビジネスの種を共に生み出すものだ。企業経営層はマインドを変え、自前主義から脱する必要がある。

    ただ、これは同時に日本において、大学や公的研究機関が企業からさほど期待されていないことの表れでもある。世界と同レベルのオープンイノベーションを実現するためには、企業だけでなく研究機関も変わらなければならない。産業技術総合研究所はいま、企業から見て魅力ある組織に変わるための努力、産総研の価値向上のための取り組みを進めている。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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