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産業競争力向上、カギは「差別化」

産業競争力向上、カギは「差別化」

2024/07/08

産業競争力向上、カギは「差別化」 製造業 6 つの勝ちパターン

日刊工業新聞寄稿記事「講壇」

    産総研理事長 石村和彦による日刊工業新聞「講壇」への寄稿コラムです。産総研の経営方針やそれを受けた具体的なアクション、自身の経験やマネジメント論、社会・技術動向への考えなど、石村の視点から複数のトピックを取り上げています。
    ※記事の版権は日刊工業新聞社にあり、許諾を得て掲載しています。

    日本経済は1990年代より低迷し、「失われた30年」と呼ばれるに至った。名目国内総生産(GDP)が世界4位に転落したこともその象徴であろう。日本の産業競争力の低下は明らかである。私はAGC会長時代、多くの企業と関わる中で、六つの「勝ちパターン」を見いだした。パターンの追求とその組み合わせによる差別化が日本の産業競争力復活のカギである。また、従来のQCD(品質・コスト・納期)に新たな価値として国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)が加わったことでビジネスチャンスが広がったとも言える。

    15年にAGCの会長に就任した。この頃から、AGCのみならず製造業全般の、そして日本全体の産業競争力について考えるようになった。

    日本の産業競争力低下はデータとして顕著に表れている。例えば、1989年の世界の時価総額ランキングでは、日本企業がトップ 5 位を独占。トップ30のうち、日本企業が21社も入っていた。一方、2024年のトップ 30 に日本企業の姿はない。この35年での日本企業の凋落は明らかだ。この間世界経済は大きく成長したが、日本が取り残された結果である。

    では、産業競争力を高めるためにどうすればよいか。そのカギは「差別化」にある。AGC会長時代、差別化を実現している企業を50社以上訪問し強さの秘訣を探る中で、製造業にはいくつかの勝ちパターンがあることに気付いた。六つに分類できる。一つ目は、世界に先駆けた強い製品を開発し、特許などによって権利化するパターン。二つ目は、競合より早く顧客が要求する先行製品を開発し、一定期間高い利益率を確保するパターン。三つ目は、一気に大型投資をして圧倒的な生産能力を確保し、市場を独占するパターン。四つ目は、需要がそれほど大きくなく売り上げ規模も小さいニッチ製品で強いビジネスを展開するパターン。五つ目は、生産物にアフターサービスなども加えてビジネスを強くするパターン。六つ目は、他社と差別化された優れた生産システムを持つパターン。

    また、これらの勝ちパターンは単独では容易にまねされてしまう。そこで、各パターンを組み合わせて差別化をより強化する。これこそが日本の製造業の勝ち筋であり、目指すべき成長戦略である。こうしたアイデアをまとめて『差別化戦略のための生産システム』という書籍にした。私は、この六つの勝ちパターンこそ、製造業に限らず日本全体の産業競争力復活のカギになると考えている。

    1強い製品、2先行製品、3圧倒的な生産力、4ニッチ製品、5生産物+サービス、6差別化された生産システム
    差別化のための6つの勝ちパターン

    どうやって差別化するかという手段の話をしてきたが、そもそも何によって差別化するかと言えば、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)のいずれかであり、そのどれかで抜きんでることが、他社との競争に勝つことにつながる。しかし近年、これにもう一つの価値が加わったように感じる。それがSDGsである。かつて、企業の社会的責任(CSR)と呼ばれる環境・社会活動は企業にとってはコストと見なされることが多かった。だが 15 年にSDGsが国連で採択されてから潮目が変わり始め、投資家も企業の環境への貢献を高く評価するようになった。ここに、企業の新たなビジネスチャンスが眠っている。いま経営者には、SDGsを自社の追い風として利用する手腕が問われていると言えそうだ。

    理事長 兼 最高執行責任者

    石村 和彦

    ISHIMURA Kazuhiko

    石村和彦理事長の写真

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