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発表・掲載日:2004/12/02

リチウム極充放電効率の高い新規イオン液体電解質を開発

-リチウム金属電池の実用化に向けて前進-

ポイント

  • 現状の2倍以上のエネルギー密度が期待できるリチウム金属二次電池の安全性確保に不可欠であった難燃性電解質としてイオン液体電解質を開発。
  • イオン液体は、難燃電解質としてリチウム金属二次電池用電解質として期待されてきたが、リチウム電池の電圧に耐えうるイオン液体は存在しなかった。
  • 4級アンモニウム-イミド塩からなるイオン液体電解質は、リチウム金属二次電池の電圧に耐えるとともに、有機電解液と同等のリチウム金属負極の充放電効率を引き出す。
  • さらに、充電反応後のリチウム金属表面は平滑であることから、リチウム金属二次電池の実用化に向け大きく貢献。


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という) ユビキタスエネルギー研究部門【部門長 小林 哲彦】は、エネルギー密度の格段の向上が期待できるリチウム金属二次電池の安全性確保に不可欠な難燃性電解質として、非対称環状4級アンモニウム-イミド塩からなるイオン液体電解質を開発した。

 リチウム金属二次電池は、現状のリチウムイオン二次電池の2倍以上のエネルギー密度が期待できる二次電池であるが、有機電解液中では、負極のリチウムが樹枝状形態に析出することにより内部短絡を起こしやすく、また化学的に活性なリチウム金属と可燃性有機溶媒が混在することで、実用化に耐え得る安全性を確保することが困難であった。そこで、リチウム金属二次電池の実用化には安全性を確保するために難燃性電解質が不可欠であり、難燃性電解質としてイオン液体が期待されてきたが、リチウム電池の電圧に耐えうるイオン液体は存在しなかった。

 本開発の環状4級アンモニウム-イミド塩からなるイオン液体電解質は、リチウム電池の電圧に耐えうるとともに、本電解質中でリチウム金属極は有機電解液と同等の充放電効率を示す。さらに図1の通り押付け型セルで溶解析出を繰り返したリチウム金属基板上へのリチウム析出形態は、有機電解液の場合に特有の樹枝状でなく比較的平滑であった。

イオン液体中のLi析出形態の画像
図1 (a)イオン液体中のLi析出形態
有機電解液中のLi析出形態の画像
(b) 有機電解液中のLi析出形態

 当該イオン液体は、熱安定性が高く難燃性・難揮発性を示し、さらに高いリチウム充放電効率を示すことから、リチウム金属二次電池の実用化に道を拓くと考えられる。それによりポータブル機器の更なる軽量化と使用時間の延長が可能となる。

 本研究開発の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長 牧野 力】(以下、「NEDO技術開発機構」という)の委託事業「燃料電池自動車等用リチウム電池技術開発-高性能リチウム電池要素技術開発(平成14~18年度)」により得られたものである。

 今後、イオン液体の純度や組成を最適化し、リチウム金属極の更なる効率の向上を目指す。



研究の背景

 リチウム金属二次電池は、現状のリチウムイオン二次電池の2倍以上のエネルギー密度が期待でき、小型携帯機器等の利便性の飛躍的な向上に寄与することのできる二次電池であるが、従来リチウム金属二次電池用に開発されてきた有機電解液中では、負極のリチウムが樹枝状形態に析出することにより内部短絡を起こしやすく、また化学的に活性なリチウム金属と可燃性有機溶媒が混在することで、実用化に耐え得る安全性を確保することが困難であった。しかし、大幅な電池のエネルギー密度向上の要請に応え得るのはリチウム金属二次電池以外になく、リチウム金属二次電池を実用化するべく、安全性確保のために不可欠な難燃性電解質の探索が行われてきた。最も難燃性の高い電解質としてイオン液体が期待されてきたが、図2に従来のイオン液体の電位窓として示すとおりリチウム電池の電圧、特に負極のリチウムでの電圧に耐えうるイオン液体は存在しなかった。

従来開発されてきたイオン液体と本開発のイオン液体との電位窓の比較図
図2 従来開発されてきたイオン液体と本開発のイオン液体との電位窓(使用可能電圧範囲)の比較

研究の経緯

 産総研 ユビキタスエネルギー研究部門では、従来常温溶融塩とも呼ばれていたイオン液体の研究では世界でトップクラスのポテンシャルを有し、各種電気化学デバイスへの展開を図っていたところ、リチウム金属二次電池の電圧に耐えうる各種非対称4級アンモニウム-イミド塩からなるイオン液体を見出し、平成14年度より「NEDO技術開発機構」の委託事業「燃料電池自動車等用リチウム電池技術開発-高性能リチウム電池要素技術開発(平成14~18年度)」において本格的にリチウム二次電池への適用性の検証を行ってきた。

研究の内容

 従来研究の対象となってきたイオン液体は、リチウムとの反応性が高くリチウム電池に用いることが困難であったが、本開発の非対称環状4級アンモニウム-イミド塩(PP13-TFSI: N-methyl-N-propylpiperidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、図3に構造を示す)からなるイオン液体電解質は、リチウム電池の電圧に耐えうる安定な電解質であり、実際にリチウムを負極とするコインタイプのリチウム/コバルト酸リチウム電池でも充放電効率がほぼ97%以上と良好な特性を確認している。本電解質中でニッケルを基板とし、リチウム金属の充放電効率を調べたところ、有機電解液と同等の充放電効率を示した(有機電解液98%に対し97%)。さらに押付け型セルで溶解析出を繰り返したリチウム金属基板上へのリチウム析出形態は、概要版図1の通り有機電解液の場合に特有の樹枝状でなく比較的平滑であった。

 当該イオン液体は加熱昇温しても300℃付近まで発火や熱分解による重量減少はなく、熱安定性・難燃性・難揮発性に優れるうえ、充放電効率も高く、析出形態も優れることから、安全性と特性の両面でリチウム金属二次電池の実用化に道を拓くと考えられる。それによりポータブル機器の更なる軽量化と使用時間の延長が可能となる。

本開発の非対称環状4級アンモニウム-イミド塩の構造図
図3 本開発の非対称環状4級アンモニウム-イミド塩の構造

今後の予定

 イオン液体の純度や組成を最適化し、リチウム金属極の更なる効率の向上を目指し、リチウム金属二次電池の実用可能性のより高い電解質を開発する予定である。



用語の説明

◆イオン液体
従来、常温溶融塩(塩のうち、常温付近で液体の性状を示すもの)、イオン性液体と呼ばれるものとほぼ同じであるが、ゼロソルベント(溶媒を全く含まないこと)の塩のみからなる液体。[参照元へ戻る]

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