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お知らせ記事2025/11/05

「低温解重合によるPETケミカルリサイクル」セミパイロットプラントの建設へ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)と株式会社AIST Solutions(以下、AISol)は、一般社団法人低炭素投資促進機構の「令和7年度 産官学連携による自律型資源循環システム強靱化促進事業」に採択されました(事業名「低温解重合によるPETケミカルリサイクル実証事業」)。この事業では、産総研が開発した低温(50~70℃)でのPET解重合技術を用いたケミカルリサイクル技術の実証を行うために、年間10トン規模のセミパイロットプラントを建設します。

サーキュラーエコノミーの実現に向け、プラスチックのリサイクルは喫緊の課題です。PET樹脂のケミカルリサイクルでは、高温での処理が必要となるためプロセスが高コストになるうえ、他成分が混在すると熱分解を引き起こしてリサイクルが困難になるという課題がありました。

この課題を解決するため、産総研では低温・常圧という穏やかな条件下でPET樹脂のみを選択的に分解できる革新的なPETケミカルリサイクル技術を開発してきました。得られたモノマーは原料として再利用できるため、これまで困難とされてきた複合繊維や染色繊維、フィルム製品など多様なPET材料の再資源化を可能にします。これにより、CO2排出量の削減にも貢献が期待されます。

図1

図1 低温解重合によるPETケミカルリサイクルの社会実装を目指したスケールアップ実証

産総研では、これまでにラボスケールおよびベンチスケールで技術の有効性を確認しており、現在は社会実装に向けてスケールアップに取り組んでいます。

本プロジェクトでは、新たに建設するセミパイロットプラントを用い、従来技術では対象外とされてきた混紡繊維や複合フィルムなどの廃PETを原料として解重合処理を行い、PETモノマーであるジメチルテレフタレート(DMT)およびエチレングリコール(EG)の製造を目指します。

このセミパイロットで得られた知見をもとに、企業と連携してパイロットプラントを整備し、2030年代前半までに商用プラントの稼働を目指します。あわせて、サーキュラーエコノミーの実現に向けてパートナー企業と協力し、日本の資源循環エコシステムを共創していきます。

これにより、産総研の技術優位性を活かし、未利用資源の有効活用と持続可能な循環型社会の実現に貢献します。

図2

図2 建設予定のセミパイロットプラントのプロセスフロー図

本件問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
ブランディング・広報部 報道室
E-mail:hodo-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)