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発表・掲載日:2001/12/19

無電源小型通信端末による位置に基づく情報支援システムを開発

-「いま、ここで、私が」 欲しい情報を入手!-

ポイント

  • 端末の位置・方向に基づいた情報提供を実現
  • 端末の無電源・小型化に成功
  • 本システムの実用化に道を拓く

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之】(以下「産総研」という)サイバーアシスト研究センター【センター長 中島秀之】は、無電源で小型(直径約2~5cm、重量約5~20g)の通信端末により、端末の位置や方向を考慮した、適切な情報を音声で提供する「位置に基づく情報支援システム」を開発した。

○ GPS付きの携帯電話では、端末のきめ細かい位置や方向を取得することが困難だった。
○ 赤外光による音声案内システム「トーキングサイン」は、端末の位置と方向に基づく情報提供が可能である。しかし、電源を必要とし、ユーザとのインタラクションは困難だった。
○ 産総研では、無電源小型通信端末を用いて、端末の位置と方向に基づき、かつユーザとのインタラクションを可能とする情報支援システムを開発、本システムの製品化に道を拓いた。

 今後、本システムの最適化、モジュール化を行い、アプリケーション毎の製品化を行う。

試作した無電源情報端末の写真
試作した無電源情報端末


研究の背景

 昨今、お年寄りや子供を含めた、まさに誰もが情報を容易に活用できるユビキタス情報社会を目指して、「いつでも、どこでも、だれでも」必要な情報を取得できる技術の開発が盛んになっています。しかし、現状では、莫大な情報から必要な情報を選び出すための操作が煩雑で、誰でも容易に利用するには至っていません。

 そこで、サイバーアシスト研究センターでは、ユーザの嗜好や状態を的確に把握し、周囲の環境に関する知識を活用して、「いま、ここで、私が」必要な情報を提供することを目指した通信端末「マイボタン」の開発を進めています。

 特に、誰もが自然に利用できる通信端末として、小型かつ電源メンテナンスを一切不要とすることは、極めて重要であると考えています。そこで、今回は、位置や方向に基づいた情報提供を実現できる無電源小型情報端末の開発に取り組みました。

開発の経緯

 現状のGPS付きの携帯電話では、屋外にて端末の位置周辺の情報を取得することができます。しかし、ある程度のボタン操作が必要ですし、屋内での位置精度が低いため、きめ細かい位置に基づく情報支援サービスを実現することは困難です。また、ユーザの向きに基づく情報提供も困難です。

 一方、トーキングサイン(三菱プレシジョン株式会社製)では、端末の位置と方向に応じて赤外光線を受光して音声情報を得ることができます。従って、きめ細かな情報提供や道案内を実現できます。しかし、従来の端末では、電源が必要、小型化が困難、ユーザとのインタラクションが困難となっていました。

開発の内容

 そこで、今回、無電源で小型(直径約2~5cm、重量約5~20g)の携帯端末により、端末の位置や方向を考慮した適切な情報を音声で提供する「位置に基づく情報支援システム」を開発いたしました。

 端末へ情報を発する環境側では、数種のユーザの合図を理解し、端末の種類および位置の履歴、環境中に存在する物体の情報や地図情報などを総合的に活用することで適切な情報を特定の端末にのみ提供いたします。

 本システムには、基本システムおよび、これに3種類のオプション機能(ユーザ合図検出、端末の位置計測、端末毎に異なった情報提供)を組み合わせたバリエーションがあります。

基本システム

 端末は、主に光を電流に変換する光電変換素子と電流を音に変換する電流音響変換装置から構成されています。今回は、フォトディテクターとヘッドフォンで実現いたしました。この端末が強弱を伴う光を受光すると、ユーザはこの強弱に応じた音を聞くことができます。
 送信光は、送信したい音の電気信号に伴って光の強度を変化させます。今回は、市販の赤外LEDを用いて、特定の位置にある特定の方向を向いた端末のみが受信できるように構成しました。ビル間光通信などで用いられている光源を用いることで、より広範囲のサービスを実現できます。

オプション1:ユーザ合図検出

 端末に、さらに反射シート(光の入射方向に光を反射するシート)を取り付けます。これを、市販の夜間用カメラ(赤外LEDをレンズ周辺に配置したカメラ)で観察すると、反射シートだけが明るく光ります。ユーザは、反射シートの前を手で遮断するなどすれば、簡単な信号を送る事ができます。例えば、1回遮断したときは「はい」、2回遮断したときは「いいえ」など数種類の合図を無電源で伝達することが可能です。従って、音声で質問し、ユーザの答えに応じたやり取りを実現できます。

オプション2:端末の位置計測

 オプション1について、カメラを複数台用いれば、視差を利用して端末の3次元位置を推定できます。端末の位置の履歴が分かるので、何に関心があるか、どこで座ったか、およその身長などを推定でき、これに基づいた情報提供が可能です。

オプション3:端末毎に異なった情報提供

 指向性のある光源(レーザや指向性LED)から出た光を2枚の鏡で端末の方向へ向けます。これによって、他の端末と異なった情報を目標の端末のみへ送信できます。

システムのバリエーションについて

 基本システムに対してオプションを選択する場合は、1、2、1+2、1+3、2+3、1+2+3の6通りが可能です。このうちでいくつかをご紹介いたしましょう。

 

基本システムのみ
ある場所である方向を向いたときに、適切な情報を提供する。
  基本システムのみの図  

基本システム+オプション1
ある場所である方向を向いたときに、適切な情報を提供するだけでなく、ユーザと簡単なやり取りが可能
  基本システム+オプション1の図  

基本システム+オプション1、2、3
ある場所である方向を向いたときに、適切な情報を提供し、ユーザと簡単なやり取りを行うだけでなく、
ユーザの位置履歴を利用し、適切な情報を個別のユーザに提供
  基本システム+オプション1、2、3の図  

今後の予定

 今後、駅や街角、博物館、レジャーランドなどで、各種情報提供((例)アトラクションの待ち時間、彫刻の詳細説明、大売出し情報など)、道案内支援((例)「こちらには~があります」)、注意喚起(「(例)頭上注意!」)などを行うシステムを実現する予定です。

 また、音声情報だけでなく、ステレオ音による音楽配信も可能ですので、街角の大型ディスプレイの方向を向くと、その音だけを聞くことができるサービスも考えられます。さらに、特定の場所に特定の端末を持つ人だけに対する情報サービスも可能ですので、様々なビジネスモデルも成立します。

 今後、コンソーシアムの活動を生かして製品化を加速していきます。
<<特許出願 4件>>


用語の説明

◆マイボタン
ボタンが少なく、「いま、ここで、私が」必要な情報を提供する、操作が容易な情報提供端末。[参照元へ戻る]
◆ユビキタス社会
いつでも、どこでも、だれでも使用可能な計算機群によって情報支援された世界。[参照元へ戻る]
◆トーキングサイン
 三菱プレシジョン株式会社の開発した音声信号を圧縮して赤外光で送信、受信するシステムで、特に、目の不自由な方のためのシステムは国内外ともに広く使用されている。[参照元へ戻る]

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