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発表・掲載日:2001/07/03

ベロ毒素の迅速簡便検出法を開発

世界で初めてO-157産生ベロ毒素を迅速かつ正確に検出することに成功 === 水晶振動子にベロ毒素を吸着させて濃縮し検出 ===

ポイント

  • 水晶振動子に糖脂質を安定に固定できた。
  • O-157が生産するベロ毒素をこの糖脂質が短時間で捉えた。
  • 金コーティング、糖脂質固定は安定で検出精度が高い。
  • 検体入手から30~60分以内の検出を実現。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)界面ナノアーキテクトニクス研究センター【センター長 清水 敏美】は、科学技術振興事業団【理事長 川崎 雅弘】(以下「JST」という)と共同で、名古屋大学工学部、岐阜薬科大学のグループの協力を得て、世界で初めてO-157産生ベロ毒素を迅速かつ正確に検出することに成功した。

 本研究グループの研究者らは、生体内に入ったベロ毒素が、腎臓の細胞に多く存在する特殊な「糖鎖」と強く結合することに着目し、ベロ毒素を結合検出する水晶振動子の開発に成功した。本研究グループの実験の結果では、わずか数ナノグラム(ナノは10-9)のベロ毒素の結合質量を検出出来ることが判明した。

 この方法では、検査室が標準菌のような対照用の菌に汚染されることもなく、また、発症に至るまでの日数を超えて何日も培養しなければ判定結果が得られないというようなことがないため今後の適用が期待される。

水晶振動子法を利用したセンサーシステムの写真
水晶振動子法を利用したセンサーシステム


研究の内容

 2000年7月 (注1)、1996年 (注2)11・12月に新聞報道等で指摘された病原性大腸菌O-157の検査に関する問題点の指摘では、いずれもO-157の菌体そのものを捉えようとしたために生じたものである。

 産総研界面ナノアーキテクトニクス研究センター 箕浦 憲彦 副センター長及び鵜沢 浩隆 主任研究員らは、JSTと共同 (注3)で、名古屋大学工学部 小林 一清 教授、西田 芳弘 助教授 (注4)、岐阜薬科大学 森 裕志 教授 (注5)の協力を得て、O-157そのものではなく、O-157が生産するベロ毒素 (注6)を、わずか30~60分間で「正確」に判定する水晶振動子法を利用したセンサーシステムに適用する画期的なセンサーを開発した。

 本研究グループの研究者らは、生体内に入ったベロ毒素は、腎臓の細胞に多く存在する特殊な「糖鎖」と強く結合することに着目した。この生体原理を巧みに活用して、生体の外でこれを再現することにより、ベロ毒素を検出する分析法の開発に成功した。本研究グループの実験の結果では、わずか数ナノグラム(ナノは10-9)の毒素が結合しただけで判定できることが判明した。

 この方法では、検査室が標準菌のような対照用の菌に汚染されることはなく、また、発症に至るまでの日数を超えて何日も培養しなければ判定結果が得られないということもない。 (注7)

画期的センサーの原理

 本分析法は、水晶円盤(寸法 直径0.9cm、厚さ 0.1mm)に金電極コーティングを施した水晶振動子の金薄膜部分に、腎臓の細胞の役目を果たす糖脂質を安定に固定し、この糖脂質にO-157産生ベロ毒素を吸着させ、水晶に掛けた電圧による振動が吸着質量の変化を検出するものである。このような操作の簡単なセンサー方式を用いているため、正確かつ迅速にベロ毒素の存在を知ることができ、事前に食品中や汚染された水中のベロ毒素の有無を検知したり、また、食中毒発生後の検体を調べること (注8)などに応用可能と期待される。

図 O-157産生ベロ毒素を正確に迅速に検出の図

参考

注1)毎日新聞2000.7.2朝刊ほか

注2)朝日新聞1996.11.13、読売新聞1996.12.3

注3)科学技術振興事業団と産総研との共同研究テーマ
   戦略的基礎研究推進事業 (CREST)
   「一次元孤立微小空間構造の組織化と機能発現」 H12年12月~H17年11月

注4)名古屋大学工学部のグループにおいては、平成8年~平成10年に科学技術振興調整費 生活社会基盤研究「生体認識機能を持つ新糖鎖素材の創製に関する地域基盤研究」の一環として研究を展開した。

注5)岐阜薬科大学においては、ベロ毒素を供与して頂いている。

注6)病原性大腸菌O-157の生産する毒素。青酸カリの50倍もの猛毒である。

注7)ベロ毒素の従来の分析法の問題点


図 O-157に関する従来法と当該研究との比較図

PCR法: 検体中にわずかに含まれるベロ毒素の遺伝子を分析することにより、ベロ毒素の存在を推定する方法。ベロ毒素の存在を直接調べるものではない。遺伝子の増幅に24時間程度を必要とする。検査室の汚染により判定誤差が高くなる可能性がある。

バイオアッセイ法:実際の生細胞を用いるので、正確な判定ができるものの、分析に要する時間は、4~5日と長く、結果が得られるまでに時間がかかり病状の処置が遅れる可能性が高くなる。

免疫化学法:ベロ毒素は、2種類のタンパク質が6個集合して、はじめて有毒性を示す。免疫化学的な方法は、個々のタンパク質に対して反応するため、時として、誤った測定結果を与える。

それに対して、我々の開発した方法は、有毒性を示すベロ毒素の集合体を捉えているので、免疫化学法よりはるかに正確な判定が行える。

注8)O-157による食中毒は、その原因となる食品を摂取後4~5日で症状が発生し病院に収容されることが多い。その後、患者の汚物などを検査し、O-157による中毒と判定されるまでにはさらに数日かかる。本センサーを用いれば、症状の出たその日に結果が得られることも期待でき、又、摂取前の食品や汚染水などを予めチェックすることにも応用できると考えられる。



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