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2022/06/17

次世代コンピューティング基盤戦略を策定
-日本が集中的に取り組むべきハードウエア開発を示す-

ポイント

  • 日本が次世代コンピューティングハードウエア開発で取り組むべき戦略を策定・公開
  • 日本の強みを生かすには、実世界エッジコンピューティングと超分散コンピューティングの戦略が重要
  • 戦略会議のもとに「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置、製造技術の体系的構築に向けた検討を開始
 

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)エレクトロニクス・製造領域【領域長 安田 哲二】およびTIA推進センター【センター長 金丸 正剛】は、2021年3月より次世代コンピューティング基盤開発拠点(以下「拠点」という)を設置し、活動を開始、その中で益一哉 東京工業大学学長と金山敏彦 産総研特別顧問を共同座長として、大学、企業の有識者、国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構 技術戦略研究センターおよび産総研のメンバーからなる戦略会議を設置、検討を進めてきた。(関連 2021年4月16日お知らせ次世代コンピューティング基盤開発拠点活動をスタート- 戦略策定、オープンイノベーションプラットフォーム構築と研究開発推進に向けて -

このたび「次世代コンピューティング基盤戦略 第一版」(以下「戦略」という)を策定し、拠点ウェブページに公開した。戦略では、次世代コンピューティングの中心が「集中から分散へ、クラウドから実世界へ」向かうとして(図1)、戦略目標とそれらを支える拠点および人材育成戦略を定めた。

また、戦略会議のもとに「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会(以下、検討会)」を設置、民間企業7社および東京工業大学、産総研をメンバーとして活動を開始した。検討会では活動に興味を持つ企業、大学等のメンバーをさらに募集している。

図1

図1 次世代コンピューティングの概念図

戦略の社会的背景

Society5.0 を支えるコンピューティング技術が大きな変革期を迎えている。半世紀以上にわたって続いてきたシリコン電子回路の微細化が限界を迎えつつある中、従来のCPU中心のコンピューティングシステムでは、取り扱うデータの爆発的な増加への対応が困難になりつつある。一方では、モバイル技術や通信技術の進展に伴い、クラウドに加えて情報端末やセンシングデバイス近傍でのコンピューティング(エッジコンピューティング)の重要性が増している。今後は、エッジコンピューティング、およびエッジとクラウドを有機的に結び最適なコンピューティング能力を発揮するための、ネットワークとコンピューティングが一体化したシステム(超分散コンピューティング)が重要となってくる。この新たな潮流の中で日本が重要な地位を占めるための研究開発およびビジネス化の戦略、その戦略を実現するための研究開発体制の構築、および人材育成を実現することが極めて重要である。

 

戦略策定の経緯

次世代コンピューティング技術、その中でも特に基盤(ハード)技術に関わる産業・学術分野において日本が重要な位置を占め、また占め続けるために、①研究開発およびビジネス化の戦略策定、②戦略に基づいた産総研における研究開発推進、③企業・大学等が効率的に研究開発や人材育成を進めるために活用される試作・評価機能の実現、の3点を目的とした拠点を2021年3月に産総研に設置した。この拠点における活動の一環として、益一哉 東京工業大学学長と金山敏彦 産総研特別顧問を共同座長として、大学、企業の有識者、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構技術戦略研究センター(NEDO-TSC)および産総研のメンバーからなる戦略会議を設置、検討を進めてきた。このたび「次世代コンピューティング基盤戦略」をまとめたので、政府、企業、大学等で広く活用されることを期待してその内容を公開することとした。

 

戦略概要

次世代コンピューティングの中心は「集中から分散へ、クラウドから実世界へ」向かうことが想定される。その中で、少子高齢化、多発する自然災害、エネルギー・資源問題等の社会課題、また、日本の技術や産業の現状より、2030年以降の産業や技術を見据え、日本が取り組むべき技術開発や産業強化の下記三つの戦略目標とそれらを支える設計・試作・評価拠点および人材育成戦略を定めた。

  1. 社会課題の解決に資する、また製造現場やセンサーにおける日本の強みを生かすための「実世界エッジコンピューティングの総合的な強化」(図2)
  2. 半導体産業における材料、製造装置、実装、パッケージ、光デバイス技術等の日本の技術や産業の強みを生かす「超分散コンピューティングに関わるチョークポイント技術の強化」
  3. 世界的な半導体のサプライチェーンの中で今後顕在化するエネルギー・資源・環境問題に対応するための「グリーンサステナブル半導体製造技術の体系的構築」

なお、戦略は本日、産総研 次世代コンピューティング基盤開発拠点のウェブページで公開した。

図2

図2 実世界エッジコンピューティングを中心とした戦略の概念図

グリーンサステナブル半導体製造技術検討会の設置

戦略目標3 「グリーンサステナブル半導体製造技術の体系的構築」では、半導体製造におけるカーボンフットプリントに関する指標を拡張し、グリーンサステナブルの視点を取り入れながら技術の高度化を進める指標の構築をめざす。ここでは、半導体製造産業に大規模生産・高性能追求に加えて、持続的な発展に必要な方向性を与え、資源消費最小化の視点から新たな付加価値を示すことで、ゲームチェンジの端緒とする。(図3)

本戦略目標については、戦略会議のもとに民間企業7社(キヤノン(株)、(株)島津製作所、(株)SCREENセミコンダクターソリューションズ、大日本印刷(株)、東京エレクトロン(株)、(株)堀場エステック、ローム(株) (50音順))、および東京工業大学、産総研をメンバーとして「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を設置し、活動を開始した。なお、本検討会は、企業、大学等からのメンバーをさらに増員していく予定である。

図3

図3 COO(Cost Of Ownership)+環境負荷低減(グリーンサステナブル)の新スタンダードのイメージ

拠点シンポジウム

2022年7月29日(金)に第2回次世代コンピューティング基盤開発拠点シンポジウムをオンラインで開催する。シンポジウムは6月17日より拠点ウェブページ上から受付を開始した。

 

今後の予定

今後は戦略の具体化のため、各種の活動を展開する予定である。また、戦略に基づく産総研の拠点形成、研究活動の具体的な活動方針を策定、実行していく。

コンピューティングに関わる技術・産業分野は状況の変化が速く、量子コンピューティング等も含めさまざまな新規技術が開発、社会実装されつつある。そのため、新規テーマも含め今後も戦略の検討を進め、戦略の更新、公開を進める。

 

用語の説明

次世代コンピューティング基盤開発拠点
次世代コンピューティング基盤に関わる、①研究開発およびビジネス化の戦略策定と発信、②国家プロジェクト、企業等との共同研究も含めた産総研における研究推進、③企業・大学等の外部機関も活用可能な試作・評価機能の実現の3点を目的として、2021年3月に産総研に設置した拠点。[参照元へ戻る]
◆超分散コンピューティング
分散コンピューティングとは、複数台のコンピューターを用いて処理を分散させ、ネットワークを介して処理結果を共有すること。1台のコンピューターで処理するよりも処理速度を向上させることができる。多数のエッジコンピューティングとさまざまな規模、機能を実現するコンピューティングノード、大規模データセンター等がネットワークで結合され、必要な処理に最適な組み合わせをダイナミックに構成し、情報を処理するコンピューティングを超分散コンピューティングと呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆実世界エッジコンピューティング
「エッジ」とは現実世界(フィジカル)とサイバー空間の「境界」を意味する。種々のセンサーで現実世界のリアルタイム情報を瞬時にデジタル化し、データセンターなどではなく、端末近傍で計算して再度現実世界へフィードバックする仕組みをエッジコンピューティングと呼ぶ。ユーザーや端末の近くでデータ処理することで、上位システムへの負荷や通信遅延を解消できる。特に、センサーや端末のごく近傍でのエッジコンピューティングを「実世界エッジコンピューティング」と称することとした。[参照元へ戻る]
◆チョークポイント技術
チョークポイントとはもともと地政学的な用語で、スエズ運河やパナマ運河など、戦略的に重要な海上水路や要衝を意味する。転じて、ある技術分野において、全体の性能やコストを実現するために必要不可欠な特定の技術をチョークポイント技術と呼ぶ。[参照元へ戻る]
 

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広報部 報道室
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