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2016/05/26

技術開発コンソーシアム「つくば応用超電導コンステレーションズ」Applied Superconductivity Constellations of Tsukuba (ASCOT)の設立について

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、産業界やアカデミア、公的研究機関の計24機関で、新たな技術開発コンソーシアム「つくば応用超電導コンステレーションズ(Applied Superconductivity Constellations of Tsukuba (ASCOT))」を設立します。

 超電導現象は、低温に冷却すると電気抵抗が消失する物理現象です。この技術を社会に適用できれば、人類が直面する様々な地球規模の課題に対し、有効な解決手段を提供できると期待されています。1986年に発見された酸化物系高温超電導材料は、超電導現象の発現に液体ヘリウムによる極低温度の冷却を必要としないため、超電導技術を広く普及できる新素材として大きな期待が寄せられているところです。

 しかしながら、高温超電導材料が発見された1980年代と現在では、地球規模の課題が大きく変化しました。地球環境問題、特に地球温暖化とその抑制に向けた具体的対応は人類共通の課題となっています。超電導技術は究極の省エネルギー技術であり、例えば、国境を超えた再生可能エネルギー送電網の形成などで、超電導技術の適用が期待されています。加えて、超高感度磁気センサー、量子コンピューター等への超電導エレクトロニクスデバイス技術の適用は、資源戦略、革新的医療、人工知能(AI)等の最先端研究開発において大きな期待が寄せられています。

 2016年は、酸化物系高温超電導材料の発見から30年目に当たります。この30年間で、産業界のイノベーション・モデルは、“オープンイノベーション”へと大きく変貌しました。オープンイノベーションが主流となる前は、多くの企業が、自ら新物質探索を含む超電導技術に係る基礎研究全般を企業自身で行っていました。しかし、特に2000年以降は、企業内でこのような基礎研究を行うことは、ほぼ不可能になっています。このイノベーション・モデルの変化に伴い、研究開発における公的研究機関の役割も大きく変化しています。今後の研究開発の方向性としては、オープンイノベーションの理念の下で、産業界と公的研究機関が連携したイノベーション拠点(例えばTIA等)において、次世代を担う若手人材の育成を行うと共に、地球規模の課題を解決できるイノベーション創出のための研究開発を推進することが強く望まれています。

 産総研では、概ね半世紀にわたり新材料探索、超電導線材、超電導エレクトロニクスデバイス、超電導マグネット、極低温冷却、応用技術開発等の超電導技術全般について一貫した研究開発に取り組んできました。これらの研究開発を通じ、超電導基盤技術を醸成し、その社会への普及を進めてきたところです。今後は、MRIやNMR等の医療・分析機器、産業機器等に適用される各種超電導マグネット開発、鉄系等の新材料開発、及び先進冷却技術等の開発を一体的に進めることが可能な共創場を構築してゆきたいと考えています。加えて、超電導エレクトロニクスデバイス技術を応用した研究開発においては、超高感度SQUID磁気センサーをコア技術とし、脳磁計・心磁計等の医療機器、資源探査やX線分析装置等の研究開発を推進します。

 超電導技術によるイノベーションを社会にいち早く普及させるには、材料開発、冷却技術から応用システム開発に至る川上から川下に関係する産業界と大学や公的研究機関が幅広く参加するオープンイノベーション拠点の構築と、それを活用したイノベーションの創成、並びに、次代を担う人材育成が求められます。このような「拠点」の創成こそが、今後想定される地球環境問題やヘリウム資源等の課題を世界に先駆けて解決するために必要であり、我が国の産業競争力の源泉となることが期待されます。

 そのために産総研は、研究領域を横断した新しい技術開発コンソーシアムを設立致します。超電導に関連する我が国産業界とアカデミアがこの技術開発コンソーシアムに結集し、協力して、超電導による社会イノベーション創出に挑戦する新たな拠点:「つくば応用超電導コンステレーションズ (Applied Superconductivity Constellations of Tsukuba (ASCOT))」を発足します。ASCOTでは、以下の事項を推進してまいります。

1. 技術にこだわりを持つ「日本型オープンイノベーション拠点形成」を推進する。
2. 高度な教育と実践的な企業研究とを一体化した超電導人材育成を推進する。
3. 超電導材料、線材、デバイス、冷却並びに応用技術開発全般を推進する。
4. 川上から川下の産業界と大学・公的研究機関が幅広く参加する拠点構築を推進する。

 今回、産総研の呼びかけに対して、19社の民間企業とアカデミア4機関が産総研と共に設立時メンバーとしてASCOTに参加することになりました。

○ASCOTが対象とする技術開発領域
 低温超電導材料、高温超電導材料、新材料探索、冷却技術、心磁計・脳磁計、MRI、NMR等の応用機器、磁気浮上鉄道等の次世代応用技術、超電導送電、省エネルギー技術、超電導エレクトロニクスデバイス、先端計測技術、量子コンピューター等

○ASCOTを推進する産総研の研究部門等
 エネルギー・環境領域
   省エネルギー研究部門
 エレクトロニクス・製造領域
   ナノエレクトロニクス研究部門電子光技術研究部門製造技術研究部門

○事務局 TIA推進センター

 

ASCOT設立時メンバー (全 24機関)

(民間企業 19社)
     株式会社日立製作所
     三菱電機株式会社
     日本電子株式会社
     東京電力ホールディングス株式会社
     東北電力株式会社
     関西電力株式会社
     中部電力株式会社
     中国電力株式会社
     九州電力株式会社
     株式会社フジクラ
     昭和電線ケーブルシステム株式会社
     住友電気工業株式会社
     古河電気工業株式会社
     住友重機械工業株式会社
     株式会社鈴木商館
     株式会社前川製作所
     株式会社ジェック東理社
     株式会社フジヒラ
     一般財団法人電力中央研究所

(アカデミア 4機関)
     国立大学法人東京大学
     国立大学法人京都大学
     国立大学法人九州大学
     国立研究開発法人物質・材料研究機構

(発起人)
     国立研究開発法人 産業技術総合研究所
 

ASCOT設立時メンバーの画像