産総研:ニュース

お知らせ記事2008/11/20

産業技術総合研究所と早稲田大学が組織的連携・協力に関する協定を締結
-IT・ナノ・バイオ分野などの先端研究や地球規模の課題解決で協力-

ポイント

  • IT・ナノ・バイオ分野などの幅広い先端研究分野に関する組織的連携・協力協定を、産総研と早稲田大学が締結し、地球規模の課題解決にも貢献
  • 提携を深める中でのオンリーワン技術の創出とベンチャー起業などによるイノベーション創出をサポートしていく
  • 連携大学院制度やインターンシップなどをさらに深化させ、わが国の産業の高度化・グローバル化に貢献できる人材の育成を相互交流により本格化

概要

 学校法人 早稲田大学【学長 白井 克彦】(以下「早稲田大学」という)と独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、研究開発・人材育成など、相互協力が可能な事項について、両機関の連携・協力を促進することで、相互の研究開発能力および人材などの総合力を発揮し、わが国の学術および産業技術の振興に寄与するため、相互の連携・協力に関する協定を、11月20日に早稲田大学大隈会館において調印した。

 本協定により、13学部・23研究科を有する総合大学である早稲田大学と、産業科学技術に関する国内最大の研究拠点である産総研との連携・協力を促進し、IT・ナノ・バイオ分野などの先端科学技術や地球規模の技術課題について研究開発の推進を図る。また、新たな連携として理工系大学院の充実に双方が協力することを通じて世界に先駆けたオンリーワン技術を次代の研究者・技術者が中心となって創出し、ベンチャー起業などによってイノベーション立国を実現するべく、両者からなる協議会がサポートを続けていく。このために連携大学院やインターンシップを特定分野について充実・深化させ、わが国の産業の高度化・グローバル化に貢献できる人材の育成を相互交流により本格化させる方向である。


調印式の写真
白井 早稲田大学学長(左)、吉川 産総研理事長(右)

経緯

 これまで両者は研究者個々人の繋がりで様々な連携を進めることはもちろんのこと、2003年には早稲田大学、産総研および東京農工大学との間で包括協定を締結し、それぞれの特徴(早稲田大学:ナノテク、産総研:IT、東京農工大学:バイオ)を活かした研究交流を進めてきた。

 具体的には、早稲田大学の「ITバイオ研究所」(2005年設立)において、早稲田大学のIT技術と産総研のバイオインフォマティクス研究を両輪とし、遺伝子・タンパク質情報の大規模で高精度な解析技術の開発を目指した研究が行われてきている。

 早稲田大学は、総合大学の強みを生かし、先進的かつ学際的な学術分野を創出し、「スーパーCOE」拠点、「グローバルCOE」7拠点など大型プログラムの推進を通して、グローバルで創造的な人材育成を図っている。また、他に例を見ない研究教育拠点充実のため、2008年3月には先端生命医科学センター(TWIns)を東京女子医大と共同で開設した。同センターでは、バイオサイエンス分野、医工連携による新領域の展開を目指している。この施設では、理工学術院再編の一環として2007年4月に設置された、医療工学、生命工学、医科学などの医療関係分野を扱う「先進理工学研究科生命医科学専攻」などが研究教育を行っている。

 産総研は、経済産業省所管の研究所として、産業競争力の向上を目指して科学的基礎研究と製品との間にある死の谷を橋渡しする「本格研究」を実施し、異分野の技術や概念の架け橋となり実用技術につなげるイノベーションハブの役割を果たすことにより、産業技術の発展に尽くしてきた。

 産総研と早稲田大学との間では、これまでも、遺伝子・タンパク質情報技術に関連したIT・バイオ分野を中心とした先端・基礎分野における研究協力ならびに人的交流を実施してきた。具体的には、2006年以降、産総研では毎年約10名の研究者が早稲田大学客員教員として、専任教員と協力して研究と人材育成に取り組んできた。また、毎年約30名の大学院学生を受け入れ研究指導を行ってきている。

 これまでの協力関係をさらに発展させ、より広い範囲で相互の連携・協力を進めることにより、効率的な体制が組めるよう、改めて、産総研と早稲田大学の間で、包括的な協力協定を締結する協議を進めてきた。また、新たな連携として研究開発段階から起業などの可能性を目利きしてイノベーション創出型ベンチャーが育成できる環境を共有する。

協定の内容

  • わが国の学術、産業技術の高度化・グローバル化に寄与
  • 共同研究の推進、連携大学院の構築、研究施設・設備などの相互利用による戦略的研究拠点の構築、研究者の研究交流を含む相互交流、人材育成、情報発信の推進および相互支援
  • 協定推進の戦略的な意志決定にかかわる連携協議会、ならびに恒常的な情報交換と戦術的な方針決定にかかわる連携推進会議を設置
  • ベンチャー企業のインキュベーションや交流を有機的に支援

今後の予定

 今回、協定の締結により、全国に展開する産総研と早稲田大学の全学組織との相互協力がより一層促進し、両者間の研究協力による新たな産学官連携を踏まえた世界最高水準の共同研究開発を行う予定である。また、ベンチャー企業の交流支援などについて連携して展開を図っていく。

用語の説明

◆ITバイオ研究所(早稲田大学・産総研の共同施設)
早稲田大学のITバイオ研究所は、早稲田大学IT研究機構所属のプロジェクト研究所で、産総研臨海副都心センター「バイオ・IT融合研究棟」内に 2005年4月1日設立された。同研究所は、IT技術を生命情報科学に一層生かしていくため、IT分野で優れた業績をあげている早稲田大学の理工系研究者とバイオインフォマティクス研究においてわが国をリードしている産総研 生命情報工学研究センターの研究者とが連携し、遺伝子・タンパク質情報の大規模かつ高精度な解析技術を開発することを目指す。[参照元へ戻る]
◆スーパーCOEプログラム:文部科学省 戦略的研究拠点育成プログラム「先端科学と健康医療の融合拠点の形成」
スーパーCOEプログラムは、2001度にスタートした文部科学省科学技術振興調整費のプログラムであり、早稲田大学は2004年度、「先端科学と健康医療の融合研究拠点の形成」を提案し、私立大学としては初めて採択された。本年度が最終年度にあたる。[参照元へ戻る]
◆文部科学省グローバルCOEプログラム
グローバルCOEプログラムは21世紀COEプログラムの後継プログラムとして、国際的に活躍できる若手研究者の育成機能の抜本的強化と国際的に卓越した教育研究拠点の形成を目的に、2007年度にスタートした。現在、早稲田大学では私立大学最多となる6分野7拠点が採択されている。本協定に主として関係する情報電気電子分野では「アンビエントSoC教育研究の国際拠点」が、化学・材料科学分野においては「実践的化学知教育研究拠点」が採択されおり、それぞれ世界最高水準の教育研究拠点になることを目指し活動している。 [参照元へ戻る]
◆先端生命医科学センター(TWIns:東京女子医科大学・早稲田大学の連携研究教育施設)
早稲田大学と東京女子医科大学は、医学と理工学の研究を同じ施設内において連携して行うための「先端生命医科学センター」を2008年3月15日設立した。私立大学が共同で研究施設を設けるのは全国でも極めて珍しく、ロボットや人工臓器などで定評のある早大の理工学研究と、女子医大の先端医科学研究を協働させて、遠隔手術や再生医療の実現や人材育成などを目指す。[参照元へ戻る]
◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像にいたるシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。 [参照元へ戻る]