産総研:ニュース

お知らせ記事2008/11/05

産業技術総合研究所と東京大学先端科学技術研究センターが組織的連携・協力に関する協定を締結
-新たなイノベーションプラットフォーム実現のための連携協定-

ポイント

  • 東大先端研と産総研が連携し、共同でイノベーション創出の新たな取組みを開始します
  • 企業等の幅広いニーズに応えるための具体的な仕組みを構築し、多様な共同研究を企画します
  • 新たな連携による産業技術の発展や産業人材の育成などを通じて国民生活の向上に寄与するよう努めます

概要

 国立大学法人 東京大学先端科学技術研究センター【所長 宮野 健次郎】(以下「東大先端研」という)と独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、各々の研究開発能力や人材等を活かし、企業等の大型ニーズへの対応に向けて、革新的な研究シーズを共同で発掘し、実用化を視野に入れた基礎から応用までの共同研究を企画する組織連携を遂行するために、相互の連携・協力に関する協定を、11月5日に調印しました。

 本協定により、社会の変化に対応して機動的に学際的な研究を推進する東大先端研と、産業科学技術に関する国内最大の研究拠点である産総研との連携・協力を促進し、トライセクター連携(企業等を含む三者連携)における研究開発の推進を図ります。また東大先端研は東京大学の他部局と連携することによって東京大学全体と産総研との共同研究の推進にも寄与するよう努めます。

背景

 国民生活の向上を目指して複雑多様化する社会のニーズに対応していくためには、既存の組織や研究分野などの枠組みを超えて学際的な研究開発を推進することが必要とされています。そのためにはそれぞれの研究分野において個別に共同研究を行うだけでは不十分です。例えば、環境・エネルギー分野では物理学や化学といった様々な分野の自然科学に加えて経済学などの社会科学も深く関連しています。このような背景の下、変化し続ける企業等のニーズを正確に把握し、これに応じて分野を超えた新たな共同研究を機動的に組織することでイノベーションを創出していく枠組み(イノベーションプラットフォーム)が望まれています。この機能を担うために新たな共同研究を次々と生み出す場となる新しい形式の組織連携が必要です。

経緯

 産総研と東京大学は、両機関の連携・協力を促進し、相互の研究開発能力および人材等を活かして総合力を発揮することを目的に、平成16年12月22日に包括的な協定を締結しました。そしてこの協定の下に個別的な共同研究や人事交流などの具体的成果を得てきました。

 しかしながらこの包括的な協定では、企業を巻き込んだ共同研究を推進する具体的な方法については言及しておらず、個別的な共同研究は進めているものの、産業界、東京大学、産総研の三者の連携を推進する具体的な方法については定められていませんでした。

 また、平成19年に産総研に加わった新しいミッション「産業人材育成に対する貢献」を推進していくために、従来の協力協定に加えて実務レベルでの何らかの協定が必要な状況となりました。これらのことから今般、新たなイノベーションプラットフォームのスキームの実現を目指すため、当該協定の下部協定としてより具体的な内容を定めた協定を結ぶに至りました。

協定の内容

  • 「国立大学法人東京大学と独立行政法人産業技術総合研究所との間における連携・協力に係る協定」(平成16年12月22日に締結、平成17年1月1日から実施)の第4条2項「研究所および大学は前項の連携・協力を実施するため、本協定に基づく個別共同研究契約等を締結するものとする。」に基づき締結
  • 産総研と東大先端研の知や人材を結集し、資金提供を行う企業と共に本格研究を実施
  • 共同ガバナンス委員会を設置して共同シーズ発掘およびトライセクター連携型共同研究の企画
  • 企業等、他組織との連携を積極的に推進する戦略的な研究・人材のネットワークの構築
  • 相互の研究員の派遣・受入など人材交流の活発化による産業人材育成への貢献

協定の概要図

 本協定の下、共同研究テーマの探索と研究グループ組織のためのインテレクチャル・カフェの開催、企業等のニーズに対応した共同研究のコーディネート、連携推進のための諸経費や大規模な共同研究に至る前の萌芽的な共同研究の支援のためのマッチングファンドの設立など具体的な連携活動を進めるとともに、共同ガバナンス委員会を設置し、トライセクター連携を実施するための具体的な計画立案を開始する予定でおります。これらの活動により、イノベーションを推進し、国民の生活向上に努めて参ります。

用語の説明

◆トライセクター連携
東大先端研、産総研、企業等の3つの組織が、それぞれの壁を越えて共同で1つの大型社会ニーズに応えるために、革新的な研究シーズの発掘や実用化を視野に入れた基礎から応用までの共同研究等を企画・遂行する連携をトライセクター連携と呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像にいたるシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。[参照元へ戻る]