新年、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
産総研は2001年に独立行政法人として発足し、今年で25周年を迎えます。この四半世紀、産総研を取り巻く社会環境は大きく変化してきました。そしてそのなかで、産総研自身も変化や成長を遂げてきました。しかし、これまでの25年のみならず、1882年に創設された地質調査所から始まる140年以上の歴史が、いまの産総研のベースにあるということもまた確かです。
昨年4月に始まった第6期中長期目標期間において打ち出した経営方針も、急速に変化する社会に対応するための、産総研にとっての新たな挑戦です。
そこでは、第5期に自らに課した「わが国のイノベーション・エコシステムの中核」という目標に近づくため、国研として大きく飛躍することを宣言しました。
産総研の役割は、わが国最大級の総合研究所として、われわれの持つ強みと国内外の企業や大学・公的機関の強みを掛け合わせて、イノベーションが継続的に生まれる好循環、すなわち「イノベーション・エコシステム」を日本の中に作り上げることです。
この実現のために、産総研は自らの価値をいっそう高め、さらなる質の向上と規模の拡大を追求します。
「質の向上」とは、世界最高水準の研究成果の創出と成果の社会実装、そしてそれを実現するための人材・ブランド・組織力の強化です。
その一つの例が、昨年あらたに設置した「実装研究センター」です。
われわれはこれまでも、分野や領域を超えた連携を行う研究プロジェクトを実施してきました。今回、改めてさまざまな社会課題を科学技術の視点から整理し、産総研の総合力を発揮して解決に取り組む新たな組織として、7つの実装研究センターを研究戦略本部の直下に設立しました。実装研究センターは、産総研の全体戦略と緊密に呼応し、社会の期待に迅速に応えるべく技術の開発と実装を行っていきます。
また、国際競争が激化している量子・AI・半導体等の国家的に重要な技術分野については、産総研自身が研究開発を行うだけでなく、国内の企業や大学などにも設備を活用いただくことで日本全体の研究開発力の底上げを図ることも重要です。昨年本部棟が完成した量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)を筆頭に、これからも高度な研究環境とセキュリティを両立する拠点整備を行っていきます。
このような取り組みを進める一方、イノベーション・エコシステムの中核としての役割を果たすためには、「規模の拡大」が重要になります。
産総研の予算は、これまでは運営費交付金が多くを占める構造でしたが、第6期の間に競争的資金や民間資金を伸長させてバランスをとり、産総研グループとして事業規模を拡大することを目指します。
例えば、2023年に設立した株式会社AIST Solutionsでは、産総研が2016年から運用する企業との連携研究制度「冠ラボ」をさらに増加させつつ、冠ラボ同士のネットワークを育む新たな取り組みを始めました。また、IDEA、ABCI3.0、Bibbidiなどプロデュース事業も順調に立ち上がっています。さらに、AIST Solutionsでは昨年、大型技術移転プロジェクトを戦略的に推進する海外拠点が稼働を開始しました。米国を始めとするグローバルマーケットでの活動も強化してまいります。
こうした活動により積み上がった研究資源を次なる研究開発への原資とすることで、グループ全体として持続的な発展とさらなる価値向上を目指します。
最後に、皆様方のご健康とご多幸をお祈りするとともに、本年も産総研への変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。