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お知らせ記事2018/02/19

地質標本館の日本列島の立体地質図を約40年ぶりにリニューアル
-地質情報プロジェクションマッピング技術による世界最大級の地質情報展示-

ポイント

  • 世界最高精度のプロジェクションマッピング技術を導入
  • 地質・地形情報の新たな活用法の提案
  • 地質の恩恵、利用、リスクについての理解促進に期待

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)地質調査総合センター【総合センター長 矢野 雄策】は、リニューアルした大型立体地形模型を使ったプロジェクションマッピング「日本列島の立体地質図」を地質標本館で公開します。

新しい展示は、日本列島の精密立体模型に地質などに関するさまざまな情報をプロジェクションマッピングにより投影する産総研発の技術「精密立体地質模型システム」を用いて実現しました。陸地と海底の地形を継ぎ目なく接合したプロジェクションマッピングとしては、世界最高クラスのサイズと解像度 となります。展示物は、産総研発ベンチャーである地球科学可視化技術研究所株式会社【代表取締役 芝原 暁彦】(以下「地球技研」という)により製作されました。

投影できる画像は地質図、地形図、衛星画像の3種類の背景画像と、活火山、河川、交通網など約10種類の個別画像があり、これらを自由に重ねて表示することができます。私たちの住む日本列島の成り立ち、地質と郷土の自然、国土の利用、交通網の配置などとの関係といった、「知っていそうで知らなかった」情報がビジュアルに理解できる、他に類を見ない展示です。

リニューアルした「日本列島の立体地質図」は、平成30年3月1日から無料で一般に公開されます。

平成30年3月1日より一般公開される日本列島大型立体地質図
平成30年3月1日より一般公開される日本列島の大型立体地質図


リニューアルした「日本列島の立体地質図」の見どころ

地質図に代表される地質情報は、地球や日本列島の成り立ちの歴史や人類との関わりを理解し、活用していく上で、最も基本的かつ重要な社会の基盤となる情報です。一方で、近年では自然災害に強い国づくりが求められるなど、地質と社会生活との関係はますます密接になっています。これまでの展示は、地質情報に特化した模型のため、こうした地質と社会生活との関係を表現することが難しく、地質情報の必要性や、その活用法を容易に理解いただけないことが課題となっていました。

そこで今回、産総研 地質調査総合センターの地質に関する最新の研究成果を、より効果的かつ直感的に分かりやすくお伝えするため、「日本列島の立体地質図」をリニューアルすることといたしました。

リニューアルした「日本列島の立体地質図」は、全長約9メートルの日本列島の精密立体模型(縮尺1/34万)に、地質などに関するさまざまな情報を投影できる立体の地質図です。立体模型は、3Dプロッター(切削式の3次元造型機)を使って、基材から削りだしました。地形の情報には、陸上についてはデジタル標高データ、海底についてはアメリカ海洋大気庁(NOAA)のデータを使用しています。立体模型の精度は、空間解像度が陸上は10メートル、海底は数十メートルで、この空間解像度で海陸の地形を継ぎ目無く接合したプロジェクションマッピングとしては、世界最大級のサイズとなっています。画像の投影にはコンピューターで制御された5台のプロジェクターを使用します。地形の高精度な3次元造型と、立体地形モデルへのブレや歪みがない画像の投影という2つの技術は、地球技研の特許技術です。

プロジェクションマッピングにより投影できる背景画像は、地質図、地形図、衛星画像の3種類で、来館者がタッチパネルを使って、自由に切り替えることができます。それぞれの背景画像の上に、活火山、河川、鉄道、道路、物流拠点など約10種類の個別画像を重ねて投影することも可能です。それにより、例えば、新幹線や高速道路がどのような地質や地形をまたいで造られているのかなどを俯瞰することができます。また、時代をさかのぼって氷河期の海岸線の位置を表示することもできます。このように、最新のプロジェクションマッピング技術の導入により、見たい情報を自由に組み合わせて表示できることが、新たな「日本列島の立体地質図」の最大の特徴となっています。

地質調査総合センターでは、今回の「日本列島の立体地質図」のリニューアルを通して、自然科学の研究成果を享受する社会作りを目指して、広く一般市民に地質と人類との関わりについての理解を深めていただくとともに、地質情報の新たな活用法の創出も進めて行きたいと考えています。

今後の予定

新しい「日本列島の立体地質図」では、プロジェクションマッピングで投影できる画像の更新と追加を随時行ってまいります。

また、地質情報の活用法を具体的に紹介することで、教育や観光、防災、都市計画などさまざまな分野での地質情報の利活用の拡大や、これまでにない地質情報の活用法の創出につなげてまいります。

地質標本館について

地質標本館は、地質調査総合センター(旧 地質調査所)が行ってきた「地質の調査」の研究成果を、社会に発信・普及するための施設として1980年につくば市に開館しました。地質を専門とする展示施設としては日本最大の規模と内容をもち、地質調査総合センター 地質情報基盤センターが運営しています。

地質標本館では、長年の地質の調査で得られた知識や技術、標本などの展示を通して、私たちの“足元”にある地質の情報を総合的かつ分かりやすく紹介しています。地質に関する情報発信の拠点として、また各種教育活動の場として、皆様のご来場をお待ちしております。

(入館案内)
開館時間:9時30分~16時30分
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館料:無料
駐車場:有り
備考:
・15名以上の団体見学(事前にお申し込みが必要)
 見学受付窓口:029-861-3750  ※開館時間内のみ受付
・企業研修のお申込み
 企業研修受付窓口:029-861-3540  ※平日9時~17時に受付

用語の説明

◆プロジェクションマッピング
コンピューターで制御した映像と映写機器を使って、建物など複雑な形状を持つ構造物の上に映像を映し出す技術。エンターテインメント、展示会、学術研究の紹介など、さまざまな分野で活用が進んでいる。[参照元へ戻る]
◆20万分の1 シームレス地質図
インターネット上で利用する新しい形式の地質図。従来の紙印刷の地質図は、作成時期によってデータ量や地球科学の進展状況が異なるため、地図の境界で地質境界や断層線などが繋がらないなどの不便がある。産総研 地質調査総合センターでは、地質の時代や成因の新しい解釈に基づき、日本全体を継ぎ目のない(シームレス)一続きの地質図として扱えるようにした。