産総研:研究ハイライト わずかな光で細胞を観察できる「光子顕微鏡」

2017研究ハイライト わずかな光で細胞を観察できる「光子顕微鏡」

物理計測標準研究部門 福田 大治、丹羽 一樹

要点

従来の光学顕微鏡では観測できない極めて弱い光でも、超伝導光センサーを用いて明瞭なカラー画像を観察できる「光子顕微鏡」を世界で初めて開発した。

光子顕微鏡の観察試料設置部とカラー画像の構築部
観察試料設置部とカラー画像の構築部
  光子顕微鏡のセンサー部とスペクトル計測部
センサー部とスペクトル計測部
開発した光子顕微鏡
 
図下に図のキャプションを表示
今回開発した光子顕微鏡の概略と測定例

背景

カラー画像観察には光学顕微鏡が多く用いられるが、光が極めて弱いと画像が暗く不明瞭となる。一方、産総研では光子の高精度検出のため超伝導を利用した光検出技術を開発してきた。産総研が開発した超伝導光センサーに光子1個が入射すると、そのエネルギーによって一時的に超伝導状態が壊れ電気抵抗が変化し、光子を検出できる。その抵抗変化の大きさから光子の波長も識別できる。

新たな成果

超伝導光センサーを光検出器として用いた光子顕微鏡を開発した。試料の測定点からの極微弱光を集光し、光ファイバーで冷凍機内のセンサー(温度100 mK)へと導く。超伝導光センサーで光子を1個ずつ検出して波長を測定し、一定時間に検出した光子の数と波長から測定点の色を識別する。試料を走査して、カラー画像を得る。図の例では、1測定点の光子数は、平均20個程度(露光時間50 ms)であった。

今後の展開

今後、多色染色した生体細胞のこれまで観測できなかった微弱な発光を観察し、細胞をターゲットとした創薬や治療の分野での光子顕微鏡の有効性を実証する。センサーの多素子化により、カラー動画の撮影技術の開発にも取り組んでいく。
 

関連リンク

 

本研究テーマに関するお問合せ先

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物理計測標準研究部門

量子光計測研究グループ 研究グループ長 福田 大治(ふくだ だいじ)(左)、研究グループ付 丹羽 一樹(にわ かずき)(右)


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