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産総研論文賞2017のタイトルバナー

賞の概要

産総研研究者は、科学技術におけるイノベーション創出の先導者として、自ら向上心と使命感を持って研究を遂行し、質の高い論文を世界に向けて発信していきます。そこで、産総研として誇れる高水準の論文を発表した研究者に対して、平成26年度より毎年「産総研論文賞」として顕彰しております。

過去の受賞一覧


論文賞受賞者と理事長、副理事長の写真
平成29年度の受賞者と中鉢理事長、三木副理事長
 

受賞論文

Atomic mechanism of the semiconducting-to-metallic phase transition in single-layered MoS2

Yung-Chang Lin, Dumitru O. Dumcenco, Ying-Sheng Huang and Kazu Suenaga
Nature Nanotechnology, 9(5), 391-396 (2014)

受賞者

  • Yung-Chang Lin
  • 末永 和知

選出理由

材料科学分野では遷移金属ダイカルコゲナイド単原子層の相転移現象が広く関心を集めている。本論文では、産総研の独自技術である高精度電子顕微鏡観察技術を応用し、二硫化モリブデン(MoS2)単原子層における半導体相(2H 相)と金属相(1T 相)の間で起こる相転移現象を原子スケールで直接観察することに成功した。高精度電子顕微鏡観察技術を駆使して物質の相転移という基本的かつ重要な物理現象のメカニズムを原子スケールで解明したことに加え、電子線描写により金属相と半導体相を組み合わせたナノダイオード等のナノスケール電子デバイスを精密に作製できることを世界で最初に実証した。これらの成果は材料科学や応用物理など幅広い学術分野に大きなインパクトを与える高い技術である。また、台湾科学技術大学との共同研究や国内外の多数の研究機関、研究者との連携、交流など、産総研のプレゼンス向上にも大いに貢献しているものと評価される。

受賞者代表(Yung-Chang Lin)(右)の写真
受賞者代表(Yung-Chang Lin)(右)

Power generation from nanostructured PbTe-based thermoelectrics: comprehensive development from materials to modules

Xiaokai Hu, Priyanka Jood, Michihiro Ohta, Masaru Kunii, Kazuo Nagase, Hirotaka Nishiate, Mercouri G. Kanatzidis and Atsushi Yamamoto
Energy & Environmental Science, Vol.9, Issue 2, 517–529 (2016)

受賞者

  • 太田 道広
  • Jood Priyanka
  • 山本 淳
  • 長瀬 和夫
  • 西当 弘隆

選出理由

著者らは、過去にPbTe 溶融成長体へのナノ構造導入による熱電材料の性能向上の原理実証に成功していた。しかしながら、溶融成長体試料の加工は簡単でなく、デバイス化が困難で、原理実証に留まっていた。

本論文では、実用性が高い「焼結体」試料へのナノ構造導入と制御技術の開発に成功し、長年熱電性能指数ZT = 1.0 程度に留まっていたPbTe 熱電変換材料の性能を世界トップレベル(ZT = 1.8)へと飛躍的に向上させた。さらに高性能な材料の開発にとどまらず、ナノ構造制御したPbTe バルク焼結体を用いた熱電変換デバイスの作製にも成功し、デバイスにおいても世界トップレベルの11 %の変換効率を達成した。本成果は、産業界からも大きく注目されており、研究試料提供契約(MTA)に基づいた試料提供が始まっている。学術的な飛躍的発展だけでなく実用レベルのデバイスまで発展させた本研究は産総研にしかできない本格研究としても高く評価される。

受賞者代表(太田 道広)(右)の写真
受賞者代表(太田 道広)(右)

Methane production from coal by a single methanogen

Daisuke Mayumi, Hanako Mochimaru, Hideyuki Tamaki, Kyosuke Yamamoto, Hideyoshi Yoshioka, Yuichiro Suzuki, Yoichi Kamagata, Susumu Sakata
Science, 354, Issue 6309, 222-225 (2016)

受賞者

  • 眞弓 大介
  • 持丸 華子
  • 玉木 秀幸
  • 山本 京祐
  • 吉岡 秀佳
  • 鈴木 祐一郎
  • 鎌形 洋一
  • 坂田 将

選出理由

低炭素社会に向け、クリーンな燃料資源としてコールベットメタンが注目されている。メタン生成菌は、コールベットメタン等の地下エネルギー資源の創成に関与しうる微生物として重要であり古くから研究がなされているが、メタン生成菌が石炭からメタンを生成することは全く知られていなかった。本研究は、世界に先駆けて、「石炭からメタンを生成する微生物」を発見したものであり、「メタン生成菌は限られた低分子の化合物からしかメタンを作れない」とする従来の常識を覆す歴史的発見である。

また、本研究では、深部地下圏に生息する難培養性未知微生物の培養化を実現し、既知の3種類のメタン生成経路とは全く異なる第4の新しいメタン生成代謝経路を半世紀ぶりに提唱した。また、本研究は新たな燃料資源として注目されるコールベットメタンの生成過程を初めて明らかにしたものであり、微生物起源の天然ガス資源の探鉱および開発技術に繋がる、社会的にインパクトの高い研究結果である。更に、地質調査総合センターと生命工学領域が連携して推進してきた分野融合研究であり、産総研のプレゼンス向上に大きく貢献したと評価される。

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受賞者代表(坂田 将)(右)

Determination of the Avogadro constant by the XRCD method using a 28Si-enriched sphere

Naoki Kuramoto, Shigeki Mizushima, Lulu Zhang, Kazuaki Fujita, Yasushi Azuma, Akira Kurokawa, Sho Okubo, Hajime Inaba and Kenichi Fujii
Metrologia vol. 54, 716-729 (2017)

受賞者

  • 倉本 直樹
  • 水島 茂喜
  • 張 ルウルウ
  • 藤田 一慧
  • 東 康史
  • 黒河 明
  • 大久保 章
  • 稲場 肇
  • 藤井 賢一

選出理由

メートル条約に基づいて開催される国際度量衡総会では、2018年11月にプランク定数に基づくキログラムの新しい定義に移行するかどうかが審議され、承認されれば2019年5月20日から新しい定義が施行されることとなる。

本研究では、同位体濃縮シリコン単結晶球体の超精密形状計測などによって、高精度にアボガドロ定数を決定し、国際キログラム原器の長期安定性を凌ぐ精度でプランク定数を導出することに成功した。本測定データは、科学技術データ委員会(CODATA)で採用され、ドイツ、米国、カナダ、フランスなど4ヶ国の研究機関によって測定されたデータと共に、キログラムの新たな定義の基準となるプランク定数の値の決定に貢献した。欧米以外の国が、知的基盤の根幹である国際単位系(SI)の定義改定において決定的な役割を果たすのは、永い度量衡の歴史の中でも、今回が初めてである。本成果は、1889年に国際キログラム原器によって質量の単位が定義されて以来、130年ぶりとなる定義改定に大きく貢献する歴史的な成果である。更に、本研究成果は科学界のみならず、多くの報道機関に取り上げられ、産総研のプレゼンス向上に大きく貢献した。また、3号業務としての知的基盤整備への貢献という点でも高く評価される。

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受賞者代表(倉本 直樹)(右)

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