発表・掲載日:2025/11/20

電子の波を自在に操る!プラズモンの速さを共振器で制御

-プラズモン波束を用いた高忠実度な量子回路を実現する新技術-

概要

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻の高田真太郎准教授らの研究グループは、産業技術総合研究所 物理計測標準研究部門、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターの金子晋久首席研究員、理化学研究所創発物性科学研究センター、及び東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターの山本倫久教授、フランス国立科学研究センター ネール研究所のクリストファー ボイヤレ教授、ボーフム大学 応用固体物理学専攻 アンドレアス ヴィーク 教授と共同で、量子デバイスの基盤としてよく用いられるGaAs/AlGaAsヘテロ接合界面に形成される2次元電子系において、オーミック電極に電圧パルスを与えることで発生するプラズモン波束の固有状態(速度)を、波束の進行方向に対して形成したファブリーペロー共振器を用いて制御する新たな方法を実現しました。

電子回路を伝搬するプラズモン波束は、互いに相互作用する電荷の集団であり、その運動の自在な制御の確立は、高い忠実度で動作する量子回路の実現に必要不可欠です。特に、プラズモン波束の伝搬速度を決める固有状態は、回路の幅に依存して決まり、その制御は従来回路幅の変更によって行われてきました。しかし、不純物などの影響により、回路全体の幅を一様に制御することは困難であるため、高い忠実度で動作する量子回路の実現に向けては、プラズモン波束の固有状態を高い精度で制御可能な新しい手法の実現が求められていました。

今回、研究グループは、回路上の適切な距離だけ離れた2か所の幅を部分的に狭く制御することで、ファブリーペロー共振器を形成しました。そして、2か所の幅の変調で共振器を制御することで、回路を伝搬するプラズモン波束の固有状態を操れることを実証しました。この手法を活用し、適切な間隔で部分的な幅の精密制御を行うことで、回路の大部分の幅に関係なく、プラズモン波束の固有状態を操ることが可能となり、高い忠実度での固有状態制御が可能となります。この技術は、将来的にはプラズモン波束の量子状態制御で実現する大規模量子回路、量子コンピュータの実現につながるものと期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、11月12日(水)(日本時間)に公開されました。
 

詳細は以下をご覧ください。
https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/topics/16051/






お問い合わせ

お問い合わせフォーム