自然科学研究機構 生命創成探究センター/分子科学研究所/総合研究大学院大学の岡本泰典 准教授(東北大学 学際科学フロンティア研究所 客員准教授)、東北大学 流体科学研究所の馬渕拓哉 准教授、産業技術総合研究所の氷見山幹基 主任研究員らのグループは共同で、ヒトサイトカインに人工的な金属構造の三核亜鉛中心を移植し、外来性機能として高い加水分解活性とヒトサイトカインが元来有する内在性機能の両方を持つ人工酵素の創製に成功しました。
移植された三核亜鉛構造は、自然界には見られないものであり、先行研究では、有機合成化学的に精密設計された配位子を用いて構築されています。多核金属中心の構築には、金属イオンの精密な多点配置が必要です。研究グループは、幾何学的探索と量子化学計算を用いることで、タンパク質を、従来の有機合成配位子と同等の精度で、配位子として利用できることを実証しました。
自然界には、現在の有機合成化学的手法では困難な高度物質変換を行っている多核金属中心を有する酵素があります。本研究成果は、天然の高機能性酵素に倣ったグリーンな物質変換技術につながることが期待できます。また、今回移植先としたサイトカインは生体内の様々な現象に応答することから、本研究により創製されたサイトカインベースの人工酵素は、生命現象適応型ケミカルツールとしての発展が期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌Nature Communicationsにて (日本時間2025年07月31日18時解禁) オンライン掲載されました。
詳細は以下を参照ください。
https://www.excells.orion.ac.jp/news/12579