理化学研究所(理研)開拓研究所石橋極微デバイス工学研究室の大野圭司専任研究員(創発物性科学研究センター量子効果デバイス研究チーム専任研究員)、伴芳祐特別研究員(研究当時)、石橋幸冶主任研究員(創発物性科学研究センター量子効果デバイス研究チームチームディレクター)、産業技術総合研究所先端半導体研究センター新原理シリコンデバイス研究チームの森貴洋研究チーム長、東京電機大学工学部電気電子工学科の森山悟士教授らの共同研究グループは、スピン閉鎖現象を室温(300ケルビン(K:絶対温度の単位)、約27℃)で実現することに成功しました。
本研究成果は単一電子のスピンによって機能する室温動作磁場センサーの開発や、室温動作するスピン量子ビットの開発につながると期待されます。
スピン閉鎖は、半導体中の微細な空間に閉じ込められた単一電子のスピン状態によって半導体素子の電気特性が変化する現象です。スピンの量子性に起因する特徴的な磁場依存性が現れるほか、スピン量子ビットの読み出し手法の一つにもなっています。しかしながらこれまでスピン閉鎖の動作温度は10K(約-263℃)以下に限られてきました。
今回、共同研究グループは、“深い不純物”である硫黄不純物と亜鉛不純物とを添加した微細なシリコントランジスタ素子を作製し、その素子における硫黄不純物一つと亜鉛不純物一つとを経由するトンネル伝導を調べた結果、スピン閉鎖が室温において観測されました。
本研究は、科学雑誌『Communications Physics』オンライン版(7月23日付:日本時間7月23日)に掲載されます。
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