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発表・掲載日:2018/09/07

活火山を含む吾妻山地域の成り立ちを解明して地質図に

-福島・山形県境部の5万分の1地質図幅を刊行-

ポイント

  • 気象庁の常時観測火山である吾妻火山を含む地域の地質図を完成
  • 吾妻山地域では、約1,000万年前から大規模な火山活動を繰り返していたことを解明
  • 観光産業、防災・減災の基礎資料として地域での活用に期待


概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)地質調査総合センター 活断層・火山研究部門【研究部門長 桑原 保人】、地質情報研究部門【研究部門長 田中 裕一郎】は、福島・山形県境の吾妻山地域(国土地理院の5万分の1地形図と対応した範囲の名称)での地質調査の結果をまとめた5万分の1地質図幅「吾妻山地域の地質」(著者:古川 竜太・中野 俊・高橋 浩・山元 孝広)を完成させ、2018年8月31日に刊行し、9月18日ごろから委託販売を開始する。

奥羽山脈の吾妻山地域は福島県北部から山形県南部に位置し、気象庁の常時観測火山である吾妻火山(吾妻山地域の南東部からさらに東にかけて分布する複数の火山噴出物から成る)を含む。地質図は植生や土壌を剥ぎ取った下の地層・岩石の様子を表した地図のことで、資源開発や防災、土木・建設など、幅広い分野で基礎資料として利用される国土の基本情報である。今回の5万分の1地質図幅の刊行により、吾妻火山の火山噴出物の時空間分布が初めて詳細に図示されるとともに、奥羽山脈の地質の成り立ちを知る上で貴重な資料となる。今後、観光産業や防災・減災の基礎となる重要な資料として、また、地元住民の地域に対する理解促進のための資料としての利活用が見込まれる。

概要図
5万分の1地質図幅 吾妻山


研究の社会的背景

地質図は植生や土壌を剥ぎ取った下の地層・岩石の様子を表した地図のことで、資源開発や防災、土木・建設など、幅広い分野で基礎資料として利用される国土の基本情報である。また、日本列島の成り立ちや歴史を探る学術資料としても重要で、自然景観のできた理由が地質にあることも多く、このような情報を基に観光産業へと利用される場合もある。5万分の1地質図幅は日本列島を約1,300の地域に分割して地域ごとに地質調査を実施し、その調査結果をまとめたもので、非常に詳細な地質情報が記載されている。

研究の経緯

地質調査総合センターでは、福島・山形両県で二本松地域、玉庭地域、喜多方地域と周辺の地質調査を実施し、5万分の1地質図幅を逐次刊行してきた。吾妻山地域もこれを継続する形で調査対象となっている(図1には磐梯山山頂部から望む吾妻山の写真を示す)。特に吾妻山地域には気象庁の常時観測火山である吾妻火山が含まれるが、これまで火山全体の地質を対象とした学術的研究はなかった。この火山では1893年の水蒸気噴火時に地質調査所(現産総研 地質調査総合センター)の職員2名が観測中に殉職するなど、活発な火山活動が繰り返されてきている。そこで、産総研 地質調査総合センターは吾妻山地域の地質調査を実施し、5万分の1地質図幅「吾妻山地域の地質」を刊行するに至った。

図1
図1 磐梯山山頂部から望む吾妻山

研究の内容

吾妻山地域と周辺地域の地表踏査を行い、堆積物の分布や種類を調べ、採取した岩石の化学分析・年代測定を行った。吾妻山地域に分布する主な地質構成物は、変成岩・深成岩類からなる基盤岩、1,600~1,000万年前の地層、1,000~500万年前の陥没カルデラ、120万年前以降の吾妻火山噴出物である(図2)。地質調査からは、以下の特筆すべき成果が得られた。

奥羽山脈として吾妻山地域が隆起を始めたのは、約1,000万年前である。これ以前のこの地域は日本海の一部で、山脈は存在しなかった。隆起運動は大規模火砕流の噴出と陥没カルデラの形成を伴い、その活動は約500万年前まで継続した。これによって、吾妻山地域内には少なくとも4つの大きな陥没カルデラ[大峠(おおとうげ)カルデラ、板谷(いたや)カルデラ、木地小屋(きじごや)カルデラ、横向(よこむき)カルデラ]が形成された(図2)。

図2
図2 吾妻山地域及び周辺の地質概略図

吾妻山地域の南東部に位置する吾妻火山の活動は約120万年前から始まり、1万年前以降も継続中である(図3)。噴出物のほとんどが安山岩質の厚い溶岩流からなり、噴出場所を変えながら、広い範囲で火山活動が繰り返された。一方、活火山とみなされる過去1万年以内の火山活動(図3の赤紫部、図4)は吾妻山地域東端から福島地域西端に限られおり、今回の研究によって、これ以外の場所では1万年以内の火山活動は起きていないことがわかった。

図3
図3 吾妻火山を構成する噴出物の分布
赤丸は1万年前以前の活動の中心。数字はそれぞれの活動年代(年前)。基図に赤色立体地図(アジア航測株式会社)を使用。

図4
図4 五色沼火口
吾妻山地域東端にある吾妻火山の火口の1つ。直径約500 mの火口は、7,500~7,200年前の噴火で形成された。

吾妻山は日本百名山に含まれ、東北地方では数少ない2,000 m峰であり、また、秘湯とされる温泉も吾妻山の山中にはいくつもあるので、多数の登山客・観光客・スキーヤーが訪れている。吾妻山地域の地質図幅は、この地域の観光資源の基礎資料としても利活用が大いに期待される。

今後の予定

周辺には、既に他にも地質調査が完了している地域もあり、5万分の1地質図幅を刊行していくことで、日本列島の成り立ちの歴史を解き明かすための資料を提供するとともに、安全・安心な生活や産業振興への貢献を図っていく。



用語の説明

◆地質図(地質図幅)
地質図は植生や土壌を剥ぎ取った下の地層・岩石の様子を表した地図のことで、「地」球の性「質」を表した地「図」と言える。いつの時代の、どのような種類の岩石や地層があり、どのように分布しているのかが分かる。地質によって、地盤の状態や断層の位置、石炭や天然ガス、温泉、地熱といった地下資源の有無、火山活動の歴史などが分かることから、地質図は、土木・建築、防災・減災、観光、資源探査など幅広い分野で利活用されている。産総研・地質調査総合センターではこれまで、50万分の1や20万分の1など日本列島に関する「地質図幅」を刊行してきたが、現在、最も詳細な地質情報を記載したものが、5万分の1地質図幅である。これは、日本列島を約1,300の地域に分割して地域ごとに地質調査を実施し、その調査結果をまとめたもので、随時、地質調査総合センターのウェブサイト(https://www.gsj.jp/Map/JP/geology4.html)に掲載し、一般向けに広く販売している。[参照元へ戻る]
◆常時観測火山
我が国の111の活火山のうち、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定された50火山については、気象庁による24時間体制での常時観測・監視が実施されている。[参照元へ戻る]
◆陥没カルデラ
100立方km以上のマグマが一度に噴出することにより、空になったマグマ溜まりへ天井の岩盤が崩れ落ちて地表に形成される陥没構造である。陥没サイズは多くの場合1kmを超え、陥没カルデラ内にはカルデラ形成噴火による火砕流堆積物やカルデラ形成後の湖の堆積物が分布する。[参照元へ戻る]



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