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発表・掲載日:2005/10/17

医薬品アンプルのハンドリングシステムを開発

-医療事故の軽減に期待 -

ポイント

  • 乱雑に置かれた医薬品アンプルを自動的にハンドリングするロボットシステムを開発
  • 医薬品アンプルの種類や大きさによらない高速ステレオ認識技術を開発
  • 医薬品アンプルの自動整理が可能になり、ヒューマンエラーによる医療事故を軽減できる


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)知能システム研究部門【部門長 平井 成興】3次元視覚システム研究グループ(グループ長 富田 文明、吉見 隆 研究員)は、オオクマ電子株式会社【代表取締役社長 大隈 秀義】(以下「オオクマ電子」という)および株式会社アプライド・ビジョン・システムズ【代表取締役社長 高橋 裕信】(以下「AVS」という)と共同で、産総研が開発した高機能3次元視覚システムを利用した3次元形状計測・物体認識法を用いて、乱雑に置かれた光沢のある医薬品アンプルを高速で認識し、ハンドリングするロボットシステムを開発した。

 病院内の薬品棚に整理された医薬品アンプルを自動的に払い出す装置はあるが、納入された医薬品アンプルを薬品棚に整理する作業は人手によって行われており、ヒューマンエラーによる医療事故の一因になっている。本システムの開発により、医療事故の軽減、薬剤師の労働環境改善などの効果が期待される。

 なお、本システムは全日本科学機器展in大阪2005(2005年10月19日から21日までインテックス大阪で開催)において、産総研のブースで展示される。

開発したロボットシステムの写真

開発の背景

 現在、病院においては医師の処方に従って薬剤師が医薬品アンプルの払い出しを行っている。大きな病院では払い出し量も大きいため、薬剤師の負担が大きく、薬剤の種類を間違えるなどのミスが医療事故の約15%を占めている。

 このような事故を防ぐためには医薬品アンプル取り扱い作業の自動化が不可欠である。医薬品アンプルなどを対象にバーコード(UCC/EAN-128)の貼り付けが日本医療機器関係団体協議会により決定しており、これによって薬剤の種類を機械的に判別することは可能になるが、バーコードリーダーに運ぶ作業は人間が行わなければならない。人手による作業が必要では、ヒューマンエラーによるミスを完全には防ぐことはできない。

 そこで、医薬品アンプルを自動的に認識し、ロボットでハンドリングし、バーコードの情報をもとに正確に自動払い出し薬品棚に格納するシステムが求められていた。

開発の経緯

 開発における大きな課題は、医薬品アンプルの認識手法にあった。通常、梱包から取り出された医薬品アンプルは乱雑な状態におかれ、しばしば一部が積み重なっている。そのため、単純な二次元の画像処理では認識ができない。また、医薬品アンプルには光沢があるため従来の3次元計測においても認識が難しかった。

 オオクマ電子が抱えていたこの課題は、産総研で開発された高機能3次元視覚システムおよび、AVSが開発しているその応用ソフトにより解決が可能であったため、三者は共同研究を行い、今回のシステムを開発した。

開発の内容

 積み重なったりさまざまな姿勢をとったりする物体を認識するためには、二次元の画像処理では限界があり、三次元の物体認識が必要になる。しかし、薬品アンプルなどのように光沢のある物体においては、物体表面に正反射によるハレーションが現れるために三次元計測が困難になる。本システムにおいては、高機能3次元視覚システムをベースとしてステレオ相関法を改良し、多眼カメラシステムの画像を使うことで光沢のある対象物体においても測定が可能となった。

今後の予定

 今回発表したシステムはプロトタイプであり、今後はこれをベースに実用化システムを2年以内に開発し出荷したい。本システムにより、病院などの薬局における薬品管理の自動化が可能になり、薬品の取り違えによる医療事故を大幅に減らすことが期待できる。


用語の解説

◆高機能3次元視覚システムVVV
産総研3次元視覚システム研究グループで開発しているビジョンシステム(VVVは、Versatile Volumetric Visionの略)。3次元物体の計測、認識、モデルビルディングを総合的に行うソフトウェアである。[参照元へ戻る]
◆光沢
ガラス、金属およびプラスチック等のように物体の表面が滑らかで光を反射する場合、光源の鏡像が現れる。人間の眼やカメラには明るい光沢として見える。光沢があると画像が反射光の影響を受けてしまうため、本システムが使用しているステレオ相関法に限らず、光学的な計測装置では光沢のある物体の3次元計測は従来困難とされていた。[参照元へ戻る]
◆ステレオ相関法
物体の3次元形状を複数のカメラの画像から計算する方法の一つ。各点の周囲のパターンが最も近いものを探し、対応付けられた点から三角測量の原理で距離を計算する。[参照元へ戻る]



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