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発表・掲載日:2004/07/05

熱分解発生ガスの新規な分析評価法の開発

-セラミックス製造プロセスの低エネルギー化実現へ-

ポイント

  • これまでにない発生気体分析装置を開発し、同装置内での発生ガスの精密な同定を実現した。
  • これによりセラミックス製造プロセスの低エネルギー化実現への分析評価法を開発した。

概要

 独立行政法人産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之】(以下、「産総研」という)先進製造プロセス研究部門【部門長 神崎修三】は、日本ガイシ株式会社【代表取締役社長 松下 雋】との共同研究において、新規な発生気体分析装置を開発し、焼成炉内でのバインダー等分解生成物の精密同定法を開発した。

 従来の発生気体分析装置はTG-MS(熱重量分析法-質量分析法)が一般的に使用されるが、本新規装置は産総研で開発したスキマーインターフェース【写真参照】とイオン付着質量分析法【図参照】を組み合わることにより、熱分解ガス成分を分析部へ導入する際の変性およびイオン化時のフラグメンテーションの双方を除外したデータ取得が可能であることに特徴があり、より効率的な処理を設計し製造プロセスの低エネルギー化を図るための手段となる。

 今後、本分析装置による焼成炉内のon-site分析として、より詳細な検討を進める予定である。

 尚、当該成果については、平成16年7月9日、名古屋・栄ナディアパークにて開催される産業技術総合研究所・先進製造プロセス研究部門主催のワークショップ「低環境負荷セラミックスプロセス」で発表する。

スキマーインターフェースの写真
写真1 スキマーインターフェース

イオン付着質量分析法概念図
図1 イオン付着質量分析法の概念図
一般的な電子衝撃法では分子のフラグメンテーションが起こるが、イオン付着イオン化法では分子イオンのみを生成する


研究の背景

 現在のファインセラミックス製造工程において、バインダーや助剤といった様々な有機物を添加することは必要不可欠である。これらの有機添加物質は焼成プロセスにて焼き出され、分解生成物として排出される。この分解生成物は悪臭など大気汚染源となり、また高分子種によっては環境ホルモン物質が生成することも懸念され、アフターバーナー等で処理される。より効率的な処理を実現し製造プロセスの低エネルギー化を図るためには、高温となっている焼成炉内での精密な同定が不可欠であるが、GC-MSに用いられる分離カラムやインターフェースにおける熱分解物の変成を検討した事例はほとんどなかった。

研究の経緯・内容

 産総研と日本ガイシ株式会社は、セラミックス製造プロセスの低エネルギー化実現のため、平成15年度より資金提供型共同研究を行っている。その中で焼成炉における排ガスの精密同定とその有害ガスの浄化技術についての開発を重要テーマとして取り組んでいる。

 従来のキャピラリーインターフェースでは熱分解ガス成分の変性という問題点が見いだされていたが、産総研では、旧セラミックス研究部門にて開発されたスキマーインターフェースを用いた分析手法により、さらにイオン化の際のフラグメンテーションにより質量スペクトルピークが重なり合うガス成分でも、イオン付着質量分析法を組み合わせることでフラグメントフリーとなり、バインダー種に応じた特有の熱分解生成物の検出を可能とし、焼成炉内発生ガスの精密な同定を実現する本分析装置の開発に至った。

 今回本装置により、ポリビニルアルコールアクリル樹脂の熱分解挙動もそれぞれ区別して同定できることを実証した。

今後の予定

 検出した発生ガスの分子量の情報より、詳細な定性について検討を進める。その結果を炉内ガス成分の無害化処理の設計にフィードバックさせる予定である。

 また、各種材料への適用範囲の拡大も図り、本新規手法のデータベース構築も予定している。



用語の説明

◆TG-MS(熱重量分析法-質量分析法)
ThermoGravimetry-Mass Spectrometryの略。試料をプログラムしたパターンにより加熱し、その際の重量変化を分析する熱重量分析法と質量分析法を組み合わせた分析手法。[参照元へ戻る]
◆質量分析法
この場合、加熱により分解・脱離しガス化した試料成分を、適当な手法でイオン化し、電磁気的にガス分子の質量(分子量等)を求める分析手法。[参照元へ戻る]
◆スキマーインターフェース
大気圧の加熱炉と、高真空の質量分析計を接続するインターフェースの一つ。圧力をバランスために、二重管のそれぞれに開けたオリフィス(細孔)による差動排気を用いる。ガス成分の接触壁の少ないことが特徴。[参照元へ戻る]
◆イオン付着質量分析法
質量分析法において、イオン化にイオン付着を用いる手法。具体的には、分析対象ガス成分にLi+イオンを付着させ、1価の正電荷を付与する。[参照元へ戻る]
◆フラグメンテーション
イオンが、一つまたは複数の結合開裂により、それより小さい質量のイオンを生成すること。[参照元へ戻る]
On-site分析
現場分析。実験室レベルではなく、工場等、製造プロセスの現場に適用可能な分析法。[参照元へ戻る]
◆GC-MS
Gas Chromatography-Mass Spectrometry(ガスクロマトグラフィー-質量分析法)の略。[参照元へ戻る]
◆資金提供型共同研究
民間企業からその共同研究に提供される研究資金の100%の研究開発費をマッチングファンドとして産総研がその共同研究へ交付する。この日本ガイシ株式会社との共同研究には3つの研究テーマの柱があり、総額研究資金として年間1億円ずつ拠出している。[参照元へ戻る]
◆質量スペクトル
上記の質量分析法で得られるスペクトル。[参照元へ戻る]
◆ポリビニルアルコール
水溶性の高分子で、バインダーとして広く一般的に用いられる。[参照元へ戻る]
◆アクリル樹脂
径をそろえた製品を入手しやすく、多孔体製造時の気孔形成剤として用いられる。[参照元へ戻る]


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