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発表・掲載日:2004/03/11

摩擦撹拌接合による難燃性マグネシウム合金製ルーフボックスの製作に成功

-FRP製品より25%の軽量化。マグネシウム合金押出し材・展伸材の利用拡大が加速-

ポイント

  • マグネシウム合金の押出し材・展伸材を利用して大型部材化する技術を開発し、大型製品の制作に成功。
  • FRP製品より25%の軽量化が可能。マグネシウム合金の利用拡大に弾み。
  • マグネシウム合金の優れた特性を損なわない摩擦撹拌接合法を産総研が開発した難燃性マグネシウムへ応用。


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という) 基礎素材研究部門【部門長 鳥山 素弘】は、兵庫県立工業技術センター【所長 松井 繁朋】、さくらい工業株式会社【代表取締役 櫻井 徹】と共同で、産総研が開発した難燃性マグネシウム合金の押出し材を、母材の優れた特性を損なわない摩擦撹拌接合(以下「FSW」という)やレーザ溶接を利用して大型部材化する技術を開発し、オール難燃性マグネシウム合金製の車用ルーフボックス(長さ2,000×幅670×高さ270mm、重量約12.5kg)の製作に成功した。本技術開発により、市販のFRP(強化プラスチック)製の物と比較して約25%の軽量化を図ることができる。 今後はこの技術を発展させ、優れた特性を持つマグネシウム合金の押出し材や展伸材などから、より複雑な3次元形状を持つ製品開発に繋げる予定である。

 なお、本技術開発は産総研の「平成15年度地域中小企業支援型研究開発制度」のもとで行われた。

難燃性マグネシウム合金押出し材から製作したルーフボックスの写真
難燃性マグネシウム合金押出し材から製作したルーフボックス


研究の背景

 マグネシウム合金は実用合金の中で最も軽量であり、比重はアルミニウム合金の2/3、鉄の1/4程度である。また、放熱性、振動吸収性、電磁波シールド性等の優れた特性を有することから、ノートパソコンや携帯電話、デジタルカメラ等の携帯電子機器の筐体への適用が進められている。さらに、高比強度軽量材料としての特性を生かして、レジャー用品、自動車、家電製品などへの応用が期待され、材料開発と成形・加工法の両面から研究開発が進められている。産総研においても、マグネシウム合金の大きな欠点の一つである発火・燃焼の危険を抑えた新合金「難燃性マグネシウム合金」の開発、マグネシウム合金の表面改質技術の開発、FSWを用いたマグネシウム合金の接合など、マグネシウム合金に関連する技術開発を行ってきた。

 一方、現在マグネシウム合金製部材の製作にはダイキャストなどの鋳造法が多く用いられ、押出し材や圧延材等の汎用素材からの製品製造は、優れた特性を有するにもかかわらずあまり採用されていない。特に大型の製品に関しては、大きいサイズで特性の優れた押出し材・圧延材の製造技術自体が未完成なことと、マグネシウム合金の変形能が乏しく塑性加工により大型の複雑形状を直接付与することは難しいためほとんど行われていない。

 そこで本研究では、難燃性マグネシウム合金製で優れた特性を有する押出し材や圧延材を作製し、それらをまず単純形状のパーツに成形した後、接合して組み合わせることにより大型部材を製作する技術の確立を目指した。

 しかし、一般にマグネシウム合金は非常に活性が高いため、従来の溶接法では欠陥が入りやすいなど課題が多く、溶接部材の実用化例も少ない。そこで本研究では、パーツの組み立てに新しい接合法であるFSWやレーザ溶接を採用し、信頼性の高いマグネシウム合金の接合技術の確立を目指した。FSWはイギリスのTWI(The Welding Institute)が近年開発した接合技術で、母材を溶融させないため特性を損なわず接合できるという特徴を有している。しかし、今まではアルミニウム合金への適用例が大部分で、マグネシウム合金に適用した例はほとんど無かった。

研究の経緯

 本研究は、産総研の「平成15年度地域中小企業支援型研究開発制度」のもとで、産総研基礎素材研究部門、兵庫県立工業技術センター及びさくらい工業株式会社の3者により、難燃性マグネシウム合金による大型製品の製作を目的に行われた。

 産総研基礎素材研究部門では、FSWで接合された難燃性マグネシウム合金部材の組織解析および特性評価に関して研究を行い、実用化へ向けての検証を行った(担当:斎藤尚文 グループ長)。兵庫県立工業技術センターには難燃性マグネシウム合金を始め種々のマグネシウム合金のFSWについての研究蓄積があり、さくらい工業に対し接合条件設定など技術面の指導を行った(担当:有年雅敏 研究主幹)。さくらい工業は製品設計並びにFSWやレーザ溶接による実際の製品の組み立てを担当した(担当:櫻井 徹 代表取締役)。

研究の内容

 FSWやレーザ溶接による難燃性マグネシウム合金の高信頼性接合技術を確立し、それによって単純形状のパーツを接合して組み合わせることにより大型部材を製作する技術を確立した。具体的には、板幅約100mmのパーツを作製し、それらをFSWやレーザ溶接、などを組み合わせて接合し、最終的に長さ2,000×幅670×高さ270mmのルーフボックスを完成させた。従来品はFRPなどで製作されており重量が16~17kg程度だが、今回開発した製品は約12.5kgで、約25%の軽量化が図られた。

完成したルーフボックスの写真

今後の予定

 これまで製造が困難だったマグネシウム合金の大型製品を、押出し材・展伸材を接合して製造することができるようになり、マグネシウム合金の利用拡大に弾みがつくと考えられる。今回開発した製品は比較的単純形状だが、今後はこの技術を発展させて、優れた特性を持つマグネシウム合金の押出し材や展伸材などを材料に、より複雑な3次元形状を持つ製品の開発に繋げる予定である。レジャー用品、自動車用部材、家電製品液晶などが期待される。


用語の説明

◆難燃性マグネシウム合金
産総研基礎素材研究部門(九州センター)が開発した、通常より燃焼開始温度を200~300℃上昇させ、発火・燃焼し難くして安全性を高めたマグネシウム合金。カルシウムを添加することにより製造される。
 参考:関連特許詳細情報 [参照元へ戻る]
◆摩擦撹拌接合(FSW)
イギリスのTWI(The Welding Institute)が1990年台始めに開発した、摩擦熱と機械的撹拌を利用した板材の接合方法。母材を溶融させないため入熱が少なく部材の歪も少ない等のメリットがある。母材の優れた特性を損なわない接合法といえる。主にアルミニウム合金に対して広く適用され、日本では鉄道車両などに採用されている。[参照元へ戻る]

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