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発表・掲載日:2004/01/29

世界初、フッ化アパタイト二酸化チタン光触媒の合成に成功

-光触媒の応用範囲を拡大する優れた耐酸性を発揮-

ポイント

  • 世界で初めてフッ化アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒の合成に成功
  • アパタイト被覆二酸化チタンの応用範囲をさらに大きく広げる新材料
  • 耐酸性に優れており屋外など過酷な条件下での使用が可能


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)セラミックス研究部門【部門長 亀山 哲也】メソポーラスセラミックス研究グループ長 野浪 亨と株式会社トウメイ【社長 山下 捷二】(以下「トウメイ」という)専務取締役 刀根 如人は共同でフッ化アパタイトを被覆した二酸化チタン光触媒の合成及びその実用化に成功した。新開発のフッ化アパタイト被覆二酸化チタン光触媒は、先に開発したハイドロキシアパタイト被覆に比べ耐酸性を飛躍的に向上させたもので、酸性雨などによる溶解等も起こらないため外装用塗料などへの応用が期待できる。

 産総研ではすでにハイドロキシアパタイトを被覆した二酸化チタンの開発に成功しており、この技術は企業に移転され商品化されている。この複合材料は、被覆したアパタイトの吸着特性を利用しており、光の有無に関係なくニオイや有害物質を吸着でき、光照射時には二酸化チタンによる光触媒効果でそれらを分解すると言う特徴を有する。また、光触媒の表面をアパタイトが覆っているため、樹脂や紙などに混合しても媒体を痛めることが少なく多方面において応用されている。

 アパタイトは歯や骨の主成分であるリン酸カルシウム系の化合物であるが、耐酸性が弱く、酸により溶解してしまうという課題があり、従来のアパタイト被覆二酸化チタン光触媒では、酸性雨にさらされるような屋外などの過酷な条件下での使用には適していなかった。そこで、ハイドロキシアパタイトに比べ耐酸性に優れたフッ化アパタイトに着目し、産総研とトウメイが共同で研究開発を進めた。その結果、二酸化チタン粉末にフッ化アパタイトを被覆する技術を見いだし、従来の特徴を損なうことなく耐酸性を飛躍的に向上させた新しいアパタイト被覆二酸化チタン光触媒の合成に成功した。

 同社では、内装用塗料としてはもちろんのこと、特に道路用外壁やトンネル、ビルの外壁などの外装用塗料としての応用に期待しており、すでに試作品を用いたテスト施工を行い良好な結果を得ていることから、近日中の商品化を目指している。



研究の背景・経緯

 一般的にアパタイトと言えば生体材料であり人体の骨や、歯のエナメル質の主要成分であるハイドロキシアパタイトを含み、工業用の利用としては、タンパク質やアミノ酸の除去カラム等に使用されている。さらに蛍光塗料中にも担体として使用されているように人工骨のような機械的特性から光学的特性と広範囲で使用されており非常に魅力的な材料であると言える。その構成式はA10B6X2と表示され、その構造は擬6方晶系である。このAサイトが吸着に携わる部分であり、Xサイトが水酸基の場合ハイドロキシアパタイトである。

 しかし、ハイドロキシアパタイトの短所としては、酸性に弱く溶ける場合があり、直接酸性雨等に触れる屋外部分や虫歯の再石灰化(虫歯の部分は非常に酸性が強い)には使用出来ないことが知られている。この問題点をクリアするため、ハイドロキシアパタイトと同等の特徴を持ちつつ耐酸性を向上させた材料の開発が望まれていた。

研究の内容

フッ化アパタイト被覆とハイドロキシアパタイト被覆の写真 この短所を克服する目的で上記Xサイトの水酸基をフッ素(元素;F)に置換した材料フッ化アパタイトの合成に取り組んだ。従来のハイドロキシアパタイトの被覆方法は、アパタイトができやすいようにpHや組成を調整した擬似体液中で、液温を体温に近い37℃に設定し二酸化チタン粉末や薄膜を浸漬するという簡便なものである。この簡便さを活かしながら新たに疑似体液を調整し合成を試み、フッ化アパタイト被覆に成功した。これにより大量合成も可能とした。フッ化アパタイトと二酸化チタンの重量比率は目的に応じて調整する事ができるが、通常フッ化アパタイト10~20%に対して二酸化チタンが90~80%程度である。

 ハイドロキシアパタイトとフッ化アパタイトをそれぞれ1%塩酸水溶液に浸けた場合ハイドロキシアパタイトでは溶出が見られたのに対しフッ化アパタイトでは全く溶出しなかった。このように酸性領域での溶解に対し、ハイドロキシアパタイトよりフッ化アパタイトの方が強いことを確認済みである。

以下にそれをデータで示す。

(両者の(100)面ピーク位置及び高さをX線回折で調査した。1%塩酸水溶液に浸ける前に比較してハイドロキシアパタイトのピ-クは、浸けた後は、かなり小さくなっていることが判る(図参照)。それに比較してフッ化アパタイトのピ-クは、1%塩酸水溶液に浸ける前後で殆ど変わらないことが確認でき、フッ化アパタイトはハイドロキシアパタイトに比較して、耐酸性が強いことが分かる。)

ハイドロキシアパタイトとフッ化アパタイトの耐酸性の図
図 ハイドロキシアパタイトとフッ化アパタイトの耐酸性
(図上部が酸に浸漬後のX線チャート、図下部が浸漬前のX線チャート)
(30°~40°がアパタイトの(100)面)

今後の予定

 フッ化アパタイトは、ハイドロキシアパタイトと同等のホルムアルデヒド吸着性能を示すことも確認済みであり、この特性を利用した屋外製品への展開を目指す予定である。既に外壁用塗料のサンプルを作成し試験的に利用を始めており良好な結果を得ている。

 フッ化アパタイト被覆二酸化チタン光触媒は、従来のハイドロキシ被覆に変わり、屋外の防汚対策や、屋内での脱臭、シックハウス症候群対策等での利用が中心となると考える。



用語の説明

◆ハイドロキシアパタイト
化学組成Ca10(PO4)6(OH)2を持ち人体の骨や歯の主鉱物である。[参照元へ戻る]
◆フッ化アパタイト
化学組成Ca10(PO4)6F2でありハイドロキシアパタイトの水酸基がフッ素に置き換わった材料。[参照元へ戻る]
◆疑似体液
アパタイトが二酸化チタンの表面に析出し易いようにpHや溶液の組成を調整した液体。[参照元へ戻る]
◆X線回折法
材料にX線を当てることによりその材料を構成する物質の結晶が同定できる。[参照元へ戻る]


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