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発表・掲載日:2003/12/11

教育用 KNOPPIXを東北学院大学工学部で2,000枚配布、授業で活用

-オープンソースソフトウェアの教育利用を加速-

ポイント

  • KNOPPIX日本語版を教育分野に適用。KNOPPIX-Eduおよび KNOPPIX-Edu TG(東北学院大学工学部版)を開発
  • CD起動するKNOPPIXをベースに開発したことでWindows PCのハードディスクを一切使うことなく別Linuxが利用可能
  • CD一枚で学校の演習ソフトウェアを自宅で利用可能
  • 授業選択機能により必要なソフトのみ起動することで授業・演習に専念できる
  • オープンソースのため高額なライセンス料が発生せず、2,000枚の配布が可能となった

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)情報処理研究部門【部門長 大蒔 和仁】、株式会社 アルファシステムズ【代表取締役社長 小林 孝】(以下「アルファシステムズ」という)、東北学院大学工学部【工学部長 鹿又 武】は、産総研が日本語化メンテナンスを行なっているCD一枚で起動するLinuxKNOPPIX日本語版”を教育用“KNOPPIX-Edu”に改良し、更に東北学院大学工学部用のカスタマイズを加えて”KNOPPIX-Edu TG”を作成した。東北学院大学工学部では、2,000枚を学内配布して試験的に授業や演習に利用する。

 KNOPPIXは、ドイツのKlaus Knopper氏が開発を進めているCDブータブルLinuxの一つである。産総研は、KNOPPIXの日本語化のメンテナンスや仮想計算機対応を行なっており、今回はその成果を教育分野に適用したものである。

 産総研1、アルファシステムズ2、東北学院大学工学部3は、KNOPPIX日本語版を、教育用として、授業・演習に利用可能なKNOPPIX-Eduの開発を行った。

 KNOPPIX-Edu構築の概念は、大学教育(IT教育)で必要なソフトウェアの統合環境をわかりやすいメニュー表示で収録し、教育・学習効果を増加させる工夫がされたKNOPPIXである。コンピュータリテラシー教育、専門教育、インターネット利用法、インターネットサーバの構築などと、少なくとも大学4年間の学習に必要と思われるコンピュータソフトの大部分を網羅している。

 KNOPPIX-Eduでは起動時に授業選択メニューから授業を選択すると、授業に必要のないソフトウェアは利用できないようにした。このため学生は授業で必要なソフトに専念できる。また、ライセンス等の関係で学校の演習室でしか演習のソフトが利用できなったが、KNOPPIX-EduではCD一枚に演習で必要なソフト一式が入っており、またオープンソースであるため、学生が自宅のPCでまったく同じ環境が再現できる。また、CDの利用なので不用意なソフトウェアの削除を心配する必要が無い。セキュリティ的にも問題があれば、電源の入れ直しで元に戻るので管理が容易である。

 東北学院大学工学部では、KNOPPIX-Eduに、東北学院大学工学部用のカスタマイズを加えたKNOPPIX-Edu TGを、12月上旬より、2,000枚を学内配布して試験的に授業や演習に利用する。

 KNOPPIX-Edu TGでは、授業・演習に必要なソフトウェアを、すべてオープンソースソフトウェアで構成したため、ソフトウェアのライセンス料が一切発生せず、2,000枚の配布が可能となった。

  今後は他の教育機関にも配布を予定しておりKNOPPIX-Eduの普及を計っていきたい。

1 産総研のKNOPPIX HP 【http://www.risec.aist.go.jp/project/knoppix/】(2015年3月にて配布を終了いたしました。)
2 アルファシステムズのKNOPPIX HP【http://www.alpha.co.jp/products/knoppix-edu/
3 東北学院大学工学部のKNOPPIX HP【http://www.eng.tohoku-gakuin.ac.jp/knoppix/



研究の背景・経緯

 産総研 情報処理研究部門の須崎 有康 主任研究員は、オープンソースソフトウェアの可能性を調べるため、オープンソースでどこまで使いやすいものができるか検討・開発を行なってきた。この開発の際にCD一枚で大抵のパソコンでハードディスクを利用せずに起動でき、すべてオープンソースソフトで構成されているKNOPPIXと出会い、ドイツ人開発者のKlaus Knopper 氏に連絡を取って日本語対応版の作成を行なった。

 KNOPPIX日本語版の公開後(Linux Conference 2002(2002年9月18-20日)にて公開)、その利便性のため複数のパソコン雑誌で取り上げられ、付録CDとして添付された。CD一枚で利用できる利便性にアルファシステムズが興味を持ち、メンテナンス・サポートをベースとしたビジネスの可能性を探る共同研究を起こした。この共同研究はアルファシステムズの提案したビジネスプランにより産総研内の実用化共同研究の予算を得ることができた。また並行して、東北学院大学工学部の 志子田 有光 助教授、石川 雅美 教授がKNOPPIXの教育利用に関して、須崎主任研究員にコンタクトを取って3者による開発がはじまった。

 東北学院大学では、これまでもIT教育に力を入れ、演習室等設備の充実、情報担当教員の拡充など努力を重ねてきた。しかし、これまでは学内における演習室を用いた講義が主体であり、その他の各専門ごとの情報演習室以外の実験室等のコンピュータ利用、またIT機器を用いた情報収集・処理技術の育成、及び学生の学外環境におけるIT学習支援においては良策が見つからず苦慮していた。また、コンピュータ演習室における講義においても、一人の教員が大勢の学生を相手にする場合、いつでも初期状態に戻せる強靱なシステム、わかりやすいメニュー構成など学ぶ側ばかりではなく指導する側に対しても労力を軽減できるシステムの導入を模索していた。

 今回試験的導入をすることになったKNOPPIX-Edu TGは次の点で前述の問題を解決してくれるものと期待している。

  1. 演習室でも自宅でも全く同じ使用感を得られるバリアフリーのIT学習環境の提供が可能。
  2. KNOPPIX-Edu TGと同等の機能を持つ市販品ソフトは高価であるが、KNOPPIX-Edu TGはオープンソースソフトであるため、無料もしくは安価に学生に提供できる。
  3. パーソナルコンピュータの導入による小規模演習室構築の自由度が高い。
  4. リセットすれば初期状態に戻る強靱なシステムは講義の負担を軽減可能。
    また、東北学院大学ではKNOPPIX-Eduの開発に協力し、導入を先駆的に推進することで、教育現場におけるIT教育手法を開拓し、社会に貢献することを課題に掲げている。

 アルファシステムズでは、KNOPPIXを活用したビジネスの可能性を探る絶好の機会として、今回の東北学院大学工学部への試験的導入への協力を行った。この中で、KNOPPIX EduおよびKNOPPIX Edu TGの開発を産総研、東北学院大学と協力して推進しつつ、教育分野でのKNOPPIXの需要および、学校や学部ごとのカスタマイズの需要を探り、学校教育へのKNOPPIX適用の可能性を検討している。 

研究の内容

 KNOPPIX Eduでは、IT教育教材向けの使いやすい環境開発として授業選択機能を作成した。KNOPPIX Eduの起動する際に選択画面で授業を選ぶとデスクトップインターフェースから授業に必要なソフトウェアしかメニュー選択できなくなる。選択画面によってはソフトウェアを立ち上げた状態で始まる。例えばプログラミング演習選択画面ではプログラム作成ソフト(エディタ)とプログラム実行環境(シェル)が用意される。この機能により、教師は選択の指示を間違えることなく、且つ学生は授業のソフトウェアに専念できる。東北学院大学工学部で行った実験講義においてもその効率化が確認されている。

 一方、KNOPPIX Edu-TGはこの概念を継承しつつ、起動時の選択ボタンからではなく、メニューのなかに講義や実習に必要なプログラムを起動するための選択項目を組み入れる形でカスタマイズしたものであり、最終的には東北学院大学工学部での教育改善の取り組みから生まれたKNOPPIX Eduの機能として取り込まれていく計画である。

  KNOPPIXEdu、KNOPPIX Edu-TGは、産学官連携による大きな成果であり、各教育機関において、経済的にも教育学習効果としても大きく貢献できることを目指している。

図

KNOPPIX-Edu TGのラベルデザイン
 
KNOPPIX-Eduの画面

 KNOPPIX-Edu TGではプログラミング演習用ソフトやITリテラシソフトをすべてオープンソースソフトウェアで構成したため、ソフトウェアのライセンス料が一切発生していない。オフィスソフト、デザインソフト、数式処理ソフトなどはアカデミック価格でも数万円するが、今回 KNOPPIX-Edu TGはオフィスソフト OpenOffice.org、CADソフト QCAD、 数式処理ソフトMaxima などオープンソースを採用し、ライセンス料が無償になっている。

 KNOPPIX-Edu TGではオープンソースソフトウェアも授業に密着するものを選択した。
OpenOffice(http://ja.openoffice.org)

  • プログラミング演習 BASIC、FORTRAN、C
  • 数式処理 Maxima (http://maxima.sourceforge.net/)
  • 数値計算 MATX (http://www.matx.org/)
  • 電気回路シミュレータ Oregano + spice3
  • 情報処理技術者試験アセンブラ CASLエミュレータ

 これらのソフトウェアで作者とコンタクトが必要なものは了解を得て、オープンソースソフトのコミュニティに配慮している。

 KNOPPIX-EduTG を2,000枚学内配布して、試験的に授業や演習に利用する。配布は12月の上旬の授業から順次始まり、下記の枚数を予定している。

 機械創成工学科(学部生:562名 大学院:修士15名) 小計 577名
 電気情報工学科(学部生:574名 大学院:修士22名・博士1名) 小計 597名
 物理情報工学科(学部生:343名 大学院:修士10名・博士3名) 小計 356名
 環境土木工学科(学部生:534名 大学院:修士29名) 小計 563名
 教員 74名
 職員 52名
合計 2,219名


 KNOPPIX-EduTGを利用した授業は東北学院大学工学部物理情報工学科で「基礎工学演習」と「コンピュータ工学」で始まり、他学科でも順次開始する。

 これ以外にも他の教育関係機関に配布を予定している。

今後の予定

 今後の開発予定としては、現在各種試験で注目を集めている学校計算機室を利用したCBT(Computer Based Testing)をターゲットに考えている。今まで試験から紙ベースの提出であったが、CBTではWebのブラウザ経由で問題を提示・回答するものであり、管理の容易さ・正確さが注目を集めている。

 現在の学校の計算機室ではコンピュータにインストールしてあるOS、ソフトウェアのライセンスから教育利用以外の提供ができない。ハードディスクにインストールしてあるアプリケーションを利用した回答をされる恐れもある。また、セキュリティの問題からハードディスクに改竄を行なわれる恐れのある利用者には提供できない。このような用途にCDブータブルなKNOPPIXを用いれば上記を回避してCBTを普及できると考えている。また、アルファシステムズでは、今回の東北学院大学工学部向けのカスタマイズ事例で得た経験を踏まえて、KNOPPIXを活用したビジネス開始に向けて検討を進めていく予定である。



用語の説明

KNOPPIX日本語版
KNOPPIXとはドイツのKlaus Knopper氏が開発を進めているCDブータブルLinuxの一つである。産総研において日本語化のメンテナンスや仮想計算機対応を行なっている。
KNOPPIXはハードディスクにインストールが不要のため、Windowsがプレインストールされたパソコンでも簡単にLinux環境を試すことができる。統合デスクトップ環境KDE、オフィスソフトウェアOpenOffice.orgWebブラウザ Mozilla、メイラソフト sylpheed などをまとめ、1枚のCDのみで大抵のDOS/Vパソコンで簡単にLinux環境を実行できる。また、これらのソフトウェアはすべてフリーソフトウェアであり、規定されたライセンス条件を守れば、コピー、改変、再配布も自由に行える。改変に際してもDebianディストリビューションベースにしているのでパッケージ管理が使え、容易に更新可能である。
Linuxは何種類か提案されてきたが、KNOPPIXはハードウェアの自動認識・設定が優れており、DOS/Vパソコンのハードの違いを認識して最適な設定を行なう。また、独自の圧縮手法を用いて700MCD-ROMに1.8G程度のコンテンツを収録し、且つ、使いやすいデスクトップ環境にまとめた点が評価を得ている。
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KNOPPIX-Edu
KNOPPIX-Edu 構築の概念は、大学教育(学習)で必要なソフトウェアの統合環境をわかりやすいメニュー表示で収録し、教育・学習効果を増加させる工夫がされたKNOPPIXである。コンピュータリテラシー教育、専門教育、インターネット利用法、インターネットサーバの構築などと、少なくとも大学4年間の学習に必要と思われるコンピュータソフトの大部分を網羅している。KNOPPIX-EduはC,FORTRAN、BASICなどをはじめとする多くのプログラミング言語に対応している。講義(演習)の際に使用する。
以上、KNOPPIX Eduとは実験的に大学教育に使用可能なソフトウェアの導入を積極的に検討する教育版(Education)KNOPPIXの意味である。[参照元へ戻る]
◆CDブータブル
通常のパソコンではハードディスクから起動するが、CD-ROMドライブから最初に起動するようにパソコンで指定して起動順番を変える。CDが対応していればハードディスクを使わなくても起動できる。OSのリカバリや再インストールに使われている。[参照元へ戻る]
◆ITリテラシソフト
学生が今後学習や社会活動を行うために最低限必要なコンピュータ技術、インターネット技術などを習得し実践する上で必要と考えられるソフトウェア群のことである。具体的にはワープロ、表計算、プレゼンテーション、ウェブブラウザ、メーラ、描画ツールなどがこれに相当し、これらを機能させるオペレーティングシステムの操作そのものも含まれる。KNOPPIXにはこれらに加えて専門的なソフトウェアまで幅広く含まれている。[参照元へ戻る]
◆CBT(Computer Based Testing
Webブラウザの中心とするコンピュータを利用した新しいテストの実施方式である。ブラウザから選択、記述することで紙をなくす事ができる。選択問題ならば採点が回答直後に終了する。解答の管理の容易さから今後の試験の多くに適用されると思われる。[参照元へ戻る]



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