発表・掲載日:2003/11/05

光触媒を利用した義歯洗浄剤の開発に成功

-優れた洗浄力を持つ上、環境にやさしく安全な洗浄剤-

ポイント

  • 光触媒を利用した新しいタイプの義歯洗浄剤の開発に成功
  • 光触媒効果により洗浄力が飛躍的に向上
  • 堆積した強固な臭や歯石、タバコのヤニなどを簡単・安全に除去し除菌することが可能

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下、「産総研」という)セラミックス研究部門【部門長 亀山 哲也】メソポーラスセラミックス研究グループ【グループ長 野浪 亨】と株式会社ニッシン【代表取締役社長 横江 浩司】は共同で、光触媒を利用した新しい義歯洗浄剤の開発に成功した。

 開発した洗浄剤は、光触媒効果により洗浄力が飛躍的に向上しており、市販品の課題とされてきた、臭や歯石、タバコのヤニなどを簡単・安全に除去し除菌することができる。それでいて義歯本体や金属クラスプなどの義歯材料に影響を与えないのが特徴である。

 既に製品化にも成功しており、近日中に株式会社モリタを通じて販売を開始する予定である。



研究の背景

 毎日義歯を使用することで、臭や歯石などが堆積し強固な汚れとなってしまったものは、従来の義歯洗浄剤では簡単に除去できないのが現状である。そこで、脱臭・防汚・浄水・抗菌・大気浄化等の効果を有し、且つ安定な物質である二酸化チタン光触媒に着目し、洗浄剤への応用を図るべく産総研セラミックス研究部門 メソポーラスセラミックス研究グループ長 野浪 亨と(株)ニッシンが共同で研究を進めてきた。

研究の経緯・内容

 通常二酸化チタン光触媒の機能を十分に発揮させるためには近紫外光を必要とするため、ブラックライトを備えた特殊な光照射装置が必要となるが、家庭における義歯洗浄の為に準備するのは、実際には困難である。一般家庭で使用される義歯洗浄剤としては、市販品と同等程度の簡便な方法であるのが好ましい。また、市販品義歯洗浄では、毎日義歯の清掃を行っているといえども、その汚れは徐々に堆積し強固なものとなってしまうのが現状である。これらの課題を克服するため、二酸化チタン光触媒の適用方法を検討しつつ開発に着手した。

 洗浄剤にメチレンブルー10ppmを添加した時の脱色能を調べた。ブラックライト照射時、二酸化チタンを混ぜただけの溶液での脱色は難しかったが、特殊処理を加えることで、約5分程度で殆ど脱色することができる高い効果を示した。これをもとに、義歯洗浄剤としての性能を追求することとした。

 義歯の強固な汚れの一つであるヤニを付着させたモデル試験紙を用い、洗浄剤に浸漬させブラックライトを照射し、浸漬前後のΔL値により洗浄力評価を行った。光源別での洗浄力を比較すると、窓際太陽光でもある程度の洗浄力があり、有効な光源(ブラックライト)を照射することによって、洗浄力はより高められる結果が得られた。

 このように義歯洗浄剤においては、二酸化チタン光触媒が洗浄成分を更に活性化させると考えられ、優れた洗浄力を発揮することが分かった。試作品をユーザに試してもらいアンケートを徴収したところ、現在使用中の洗浄剤と比較して、「汚れがよく落ちた。」、「義歯の臭いがよくとれ、さわやかである。」との良好の意見が多く得られた。これらを基に取り組んだ結果、優れた洗浄力を有する光触媒を利用した新しい義歯洗浄剤の開発に成功した。

 開発した洗浄剤は、以下の3つの特徴を有する。
(1)頑固な汚れにも強く、義歯のイヤな臭いもとれる。
(2)義歯表面の粘りも効率よく除去でき、除菌力に優れている。
(3)金属部分には黒ずみ等も見られず、綺麗に洗浄する。

光源の種類が洗浄力に及ぼす影響の図
光源の種類が洗浄力に及ぼす影響
 
光源の種類が洗浄力に及ぼす影響の写真

今後の予定

 既にこれらの特徴を生かし、歯科医院・技工所専用の洗浄剤として調整した「酸性(歯石用)」、「アルカリ性(色素用)」の2種類と、市販品と同程度の簡便な方法で使用できる一般家庭用義歯洗浄剤の計3種類について製品化に成功している。

 近日中に株式会社モリタを通じて販売を開始する予定である。

洗浄剤の写真

●歯科医院・技工所専用義歯洗浄剤2種
  「フィジオクリーンプロ歯石用」
  「フィジオクリーンプロ色素用」
●近紫外線照射器
  「フィジオクリーンプロ パワーアップライト」
●一般家庭用義歯洗浄剤
  「フィジオクリーンキラリ」
 
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