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発表・掲載日:2002/03/20

体心立方構造を持つ多用途Mg系合金の開発に成功

- 燃料電池自動車の水素貯蔵源としての要求特性を満たす「水素吸蔵合金」開発に道を拓く-

ポイント

  • 軽合金の代名詞であるMg(マグネシウム)とTi(チタン)の二成分から構成される合金金属間化合物は、従来、全く知られていなかった。
  • メカニカルアロイング法を用いた機械的な合金作製法により、初めて Mg と Ti からなる合金を見出した。
  • BCC(体心立方)構造を持ち、水素吸蔵合金として、「水素吸蔵量の高容量化」と「動作温度の低温化」が期待できる。
  • 燃料電池自動車で、ガソリン車並の走行距離を可能とする「水素吸蔵量5.0mass%」を達成する可能性を示す。
  • 水素吸蔵材料としてだけでなく、軽量な構造材料として広範囲での用途開発が見込まれる。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】電力エネルギー研究部門【部門長 大和田野 芳郎】は、マツダ株式会社【代表取締役社長 マーク・フィールズ】と共同で、軽合金の代名詞である「 Mg 」と「 Ti 」の二成分から構成される合金を初めて創ることに成功した。

 従来、MgとTiからなる合金や金属間化合物は存在しないとされていたが、機械的な合金作製法であるメカニカルアロイング法を用い、その作製条件( MgとTiの配合比、アロイング時間等 )を最適化することで、BCC構造を有する Mg-Ti2元系合金が、作製可能であることを明らかにした。さらに、この合金が燃料電池自動車の水素貯蔵に対する要求特性を達成する可能性がある事を示した。このBCC構造を持つMg系合金の水素吸蔵特性を、同様にBCC構造を持つV系合金の特性から推定すると、金属原子1個当たり2個の水素原子を貯蔵する事が可能であることから、水素吸蔵量は5.0mass%以上、動作温度も373K以下が期待できる。これは従来、燃料電池自動車等に利用されている希土類系合金等と比較し、約3倍以上の水素貯蔵量に相当する。

 今後、この合金の基本物性等を明らかにし、実用的な水素化特性を持つ合金開発を実施して行く予定である。さらに、耐摩耗特性等の機械的な特性も評価する事で、自動車部品等への適用も検討していく予定である。

 本技術開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実施する水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET計画)第II期研究」の基で進められた。

 なお、本成果は、社団法人 日本金属学会2002年春期(第130回)大会【会期:2002.3.28-3.30 会場:東京理科大学神楽坂校舎(新宿区神楽坂1-3)】にて発表を予定している。



研究の背景・経緯

 水素吸蔵合金や高圧ガスタンク等を水素貯蔵源とした燃料電池自動車の研究開発が進められている。現在開発されている燃料電池自動車の水素1充填当たりの走行距離を増加させるためには、水素を貯蔵放出させるのに必要な動作温度が373K以下で、高圧ガスタンクの水素貯蔵量(約4.0mass%以上)を超える水素貯蔵法の開発が必要とされている。例えば、水素吸蔵合金の現状として、Mg系合金は、水素吸蔵量は5.0mass%以上と多いが、523K以上の動作温度が必要である。また、BCC構造を持つV系合金は、動作温度は373K以下と低いが、実用的な水素吸蔵量は3.0mass%程度である。このように、燃料電池自動車の水素貯蔵源として水素吸蔵合金を用いる事を想定した場合、自動車からの要求特性を満足する合金は、未だ開発されていない。そのため、動作温度373K以下で、5.0mass%以上の水素吸蔵量を持つ新規な水素吸蔵合金の開発が必要とされている。

研究の内容

 軽量金属を代表するMgは7.6mass%、Tiは4.1mass%の水素吸蔵能力があるが、動作温度が573K以上で高温を必要とする。従って、それぞれ単独では、燃料電池自動車の水素貯蔵源として利用する事は課題が多い。そこで、MgとTiから構成される合金や金属間化合物が作製できれば、高い水素吸蔵能力と低い動作温度を兼ね備えた、水素吸蔵合金の作製が可能ではないかと期待されていた。(これは、今まで例外なく、合金化することによって低温で作動する水素吸蔵材料が創られてきたからである。)しかしながら、従来からある溶解法等の合金作製法を用いてMgとTiからなる合金や金属間化合物を作製した報告は、今までの所、全くない。そこで、機械的合金作製法であるメカニカルアロイング法により合金作製を試みた。その結果、メカニカルアロイング条件(MgとTiの配合比、アロイング時間等)を最適化することで、Mg-Ti2元系合金が、BCC構造を持つ合金として作製可能である事を明らかにした。また、この合金が燃料電池自動車の要求特性を達成する可能性を示した。このBCC構造を持つMg系合金の特性を、同じくBCC構造を持つV系合金の特性から推定すると、金属原子1個当たり2個の水素原子を貯蔵する事が可能であることから、水素吸蔵量は5.0mass%以上、動作温度も373K以下が期待できる。

 また、今迄、溶解法等で作製が困難とされてきた他のMgベース合金を、メカニカルアロイング法で作製する可能性も示唆され、水素吸蔵合金だけでなく摩耗材料等の構造材料に、新しいMg系合金の展開が期待できる。

今後の予定

 今後、この合金の基本物性等を明らかにし、実用的な水素化特性を持つ合金開発を実施して行く予定である。さらに、耐摩耗特性等の機械的な特性も評価する事で、自動車部品等への適用も検討していく予定である。


用語の説明

BCC(体心立方)構造図
◆軽合金
軽い合金。比重1.7-2.0のマグネシウム合金、2.7-3.0のアルミニウム合金、約4.5のチタン合金など。最近は、航空機、自動車などの諸部分としてだけではなく、携帯電話やラップトップパソコンなどにも使用。[参照元へ戻る]
◆合金
一種の金属元素と一種以上の金属元素または炭素・窒素・珪素など非金属元素とを混合したもの。様々な組織をもち、各々の構成元素とは違った性質をもつため、材料としての利用価値の高いものも多い。[参照元へ戻る]
◆金属間化合物
合金の一種。二種類以上の金属元素または金属元素と非金属元素から成る化合物。組成比に幅がある場合も含む。超耐熱合金・半導体・磁性体・超伝導体・水素吸蔵材料などの実用材料に用いられるため、研究開発が盛んである。[参照元へ戻る]
◆メカニカルアロイング法
金属に機械的な力を与えることで合金を作製する方法。ここでは、鋼の容器に金属粉とボールを入れて容器を回転させ、容器内に封入したボールが金属粉と激しく衝突することで機械的な力を加え、合金を作製している。[参照元へ戻る]
◆BCC(体心立方)構造
体心立方構造を意味し、図の様な金属原子の配置を持つ金属間化合物。[参照元へ戻る]
◆水素吸蔵合金
水素と反応して金属水素化物となる合金で、水素ガス中でガス圧力を上げるか温度を下げると水素を吸蔵して発熱し、ガス圧を下げるか温度を上げると水素を放出して吸熱する性質がある。このように、水素吸蔵合金は、水素化、脱水素化の反応が実用的な条件下で好ましい反応速度で進行するというように、優れた可逆性を有する合金である。[参照元へ戻る]
◆V系合金
バナジウムを主たる成分とする水素吸蔵合金で、3.0mass%近い水素吸蔵量を持っている。代表組成としては、V-Ti-Mn、V-Ti-CrおよびV-Ti-Cr-Mn等がある。水素原子を金属原子の2倍吸蔵することができ、室温で水素を放出可能である。[参照元へ戻る]
◆希土類系合金
LaNiを基本組成にした水素吸蔵合金。現在ニッケル水素二次電池等の電極材料に利用されている。[参照元へ戻る]
◆水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET計画)
本計画は、我が国のエネルギー供給の安定化・効率化、地球温暖化問題・地域環境問題の解決、新規産業・雇用の創出、水素エネルギー社会の実現等に資するため、経済産業省において策定された固体高分子形燃料電池の早期の実用化・普及を目指す「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用プログラム」の一環として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施するもので、水素製造技術、水素輸送・貯蔵技術等、水素エネルギー利用技術に関する基礎的技術の確立を図るとともに、水素エネルギーシステムの全体概念設計及び中核的要素技術の開発を実施すること等を目的としている。[参照元へ戻る]


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