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発表・掲載日:2001/12/12

世界最速の人体形状計測装置の開発とデータ蓄積

-すばやく・くまなく・きれいに、からだの形を測ります-

ポイント

  • 隠れ部位の少ない高精度・高密度な「人体形状計測装置」開発
  • 頭部で0.93 秒、全身で1.8 秒と世界最高速
  • 世界最高位の高精度・高密度計測
     頭部で精度0.5mm、解像度1.0mm
     全身で精度1.0mm、解像度2.0mm
  • 人に優しい身につける製品の最適設計を支援

概要

 独立行政法人産業技術総合研究所【理事長吉川弘之】(以下「産総研」という)のデジタルヒューマン研究ラボ【ラボ長 金出武雄】、及び、(社)人間生活工学研究センター【会長 奥井功】は、経済産業省の委託事業「環境対応技術開発等:高齢者対応基盤整備研究開発」において、高齢者のからだに合った製品設計基盤である人体寸法及び人体3次元形状データの蓄積を進めている。これに関連した経済産業省の委託事業「高齢者特性計測機器等開発委託:寸法・形態計測器開発」において、データ蓄積に必要となる、2台の新しい人体形状計測装置が開発された。1台は頭部計測用、もう1台は全身計測用で、全身をくまなく計測し、実用的な精度を備えた装置としては、世界最高速である。

 これまでの装置では、カメラの死角になって隠れてしまう部分が多いこと、計測時間が長い(従来は10秒~30秒)にため体が揺れて(体動揺)、体の輪郭線がずれてしまうため寸法精度に問題があった。今回開発した新しい装置では、高速・高密度なデータ処理の可能な計測カメラを多数採用して計測時間を短縮し、同時に多数のカメラの適正配置に工夫して隠れ部位を大幅に低減することに成功した。具体的な数値は、頭部で0.93秒、全身で1.8秒で、全身をくまなく計測し、実用的な精度を備えた装置としては、世界最高速である。計測時間の短縮により体揺動の問題を克服し、適正なカメラは配置と合わせて、これまでにない高精度・高密度計測を実現した。具体的な数値は、頭部で精度0.5mm・解像度1.0mm、全身で精度1.0mm・解像度2.0mmである。

 現在、この新型装置を用いて、高齢者数100名のデータ蓄積を進めている。収集したデータは、基本的な処理を施した後、(社)人間生活工学研究センターから、一般に向けて提供される予定である。同時に、人体3次元形状計測のISO,JISに向けた標準化、海外のデータベースとの互換性も念頭においている。

※人体3次元形状計測装置の開発とデータ蓄積事業
 産総研デジタルヒューマン研究ラボ、及び(社)人間生活工学研究センターは、経済産業省の委託事業「環境対応技術開発等:高齢者対応基盤整備研究開発」において、高齢者のからだに合った製品設計基盤となる人体寸法、及び人体3次元形状データの蓄積を進めている。これに関連した経済産業省の委託事業「高齢者特性計測機器等開発委託:寸法・形態計測器開発」において、データ蓄積に必要となる、新しい人体形状計測装置が開発された。これらのデータを、デジタルヒューマン研究ラボ・持丸正明、河内まき子らが開発してきた3次元人体形状モデル化技術で分析することにより、日本人高齢者の体形分布を、できるだけ少ないサイズで、かつ、満足度の高い装着感が得られるように分類することが可能となる。高齢者の体にあった就労関連製品(作業服や安全靴、ヘルメット、ガスマスクなど)のサイズ見直しに役立つものと期待している。



内容

 1)隠れ部位を極力低減し、2)1 秒程度の短時間で、3)精度良く、4)精密に人体形状を計測する装置の仕様を、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボが中心となった専門委員会で検討し、具体的な数値仕様として、国内10社以上の人体形状計測装置開発企業に提示した。最終的に、9社から具体的な製品開発提案の申し出があった。上記の専門委員会(委員長:デジタルヒューマン研究ラボ・河内まき子)で、各社のヒアリングを行い、「技術開発の見通し」「実績」「製品化の見込」を評価軸として、選定を行った。この結果、全身型の計測装置は、(株)浜野エンジニアリングに、頭部用の計測装置は日本電気(株)に、再委託することと決まった(平成11年度)。1年余の開発期間を経て、平成13年にシステムを導入(全身計測装置は産業技術総合研究所・関西センター、頭部計測装置は産業技術総合研究所・臨海副都心センター)、その後、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボと(社)人間生活工学研究センターで、計測器の精度検証作業を進め、10月から正式に稼動した。

全身型の計測装置

本装置は、(株)浜野エンジニアリングの有する「VOXELAN方式」と呼ばれる光切断方式の3元形状計測を発展させたもので、複数のライン光を同時に照射するとともに、ライン光の波長を変えて、対象物上での干渉を解決することで、従来30秒程度かかっていた計測時間を1.8 秒まで短縮した。また、カメラの配置も大幅に見直し、脇の下、股の間、顎の下などが計測できるようにした。(社)人間生活工学研究センターの所有する人体寸法データ及び写真データに基づいて、1)太った背の高い男性、2)太った背の低い女性、3)腰の曲がった高齢者男性、4)平均的な40歳代女性の立位ダミーを製作し、それらを利用して、すべての対象で隠れなく計測できるようなカメラ配置を検討した。ダミーの製作は、(株)七彩に外注した。

 

全身型の計測装置の写真
太った背の低い女性の立位ダミーの写真

頭部用の計測装置

 本装置は、日本電気(株)の有する「多眼正弦波格子位相シフト法」と呼ばれるパターン光投影による3次元形状計測を発展させたものである。正弦波状に濃淡が変化するパターン光を投影し、非常に少ない撮影枚数のデータから対象の3次元形状を計算することができる。12台のカメラを水平面内だけでなく、上下にも配置することで、耳裏や顎の下、頭頂部までくまなく計測する。12台のカメラのうち、対向する位置のカメラを同時に発光させるなどの工夫により、0.8秒で計測を完了する。頭部計測装置でも、(社)人間生活工学研究センターの所有する人体寸法データ及び写真データに基づいて、1)頭部全寸法が最大であるような男性頭部、2)平均的な女性頭部、3)鷲鼻であごがしゃくれた高齢者頭部の3つのダミー人頭を製作し、それらを利用して、すべての対象で隠れなく計測できるようなカメラ配置を検討した。全身型同様こちらも、ダミーの製作は、(株)七彩に外注した。

 

頭部用の計測装置の写真
3つのダミー人頭の写真

データ収集

 産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究ラボ(東京)と、(社)人間生活工学研究センター(大阪)において、所定の計測精度を満たしているかどうかの基礎的検証を行った後、実際に、手作業による人体寸法計測値と、開発した3次元人体形状計測装置の形状データから得られる人体寸法値の比較を行った。ほぼ、満足な精度が得られるまで調整を進め、平成13 年11 月から、この装置を利用したデータ収集を開始した。データは、1)手作業による人体寸法計測項目(全身で100項目以上、頭部で15項目以上)、2)体表面上特徴点座標(全身で60点以上、頭部で20点以上)、3)形状データから得られる寸法項目(全身で20項目程度)、4)形状データ(点群データ、ポリゴンデータ、データ点数は数10万点以上)を、要望に応じて提供していく予定である。

データの公開

 被験者として協力いただいた方々の個々の了解を得た上で、個人情報管理に十分配慮した個別データの提供も検討している。データは、(社)人間生活工学研究センターとデータ提供契約を締結した法人などに、実費程度で提供される見込である。データの公開時期は未定であるが、平成14 年6月頃を予定している。

波及効果

 収集したデータは、さまざまな製品のサイズ設計に利用される。デジタルヒューマン研究ラボでは、これに先立って、別事業で計測した人体寸法データを配布しているが、配布開始から約2年で1100件を越える提供希望があった。その多くが、3次元人体形状データの利用を希望しており、建築、衣料品、福祉機器、自動車など幅広い分野での利用が見込まれる。特に、今回収集しているデータは、数多くの解剖学的特徴点を同時計測している点が特徴であり、デジタルヒューマン研究ラボが提唱する「解剖学的対応付けに基づく人体3次元デジタルモデル」を構築するに十分なデータである。このようなデジタルモデル化技術を用いれば、3次元形態の統計処理(多次元分布図、平均形態、標準偏差形態)が可能となり、日本人の体形分布に合わせた効率的でフィット性の高いサイズ分類を見直すことができるようになる。




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