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発表・掲載日:2001/10/10

誘導加熱で廃棄タイヤからのスチール線除去

-舗装マットへの応用-


概要

 独立行政法人産業技術総合研究所基礎素材研究部門(部門長 五十嵐一男)軽量金属凝固プロセス研究グループ安江和夫主任研究員は、廃棄されたタイヤを高周波で誘導加熱することにより、極めて迅速に、タイヤ中のスチール線を分離することに成功した。国内で排出される廃棄タイヤは、年間1億本と言われ、世界的にも年々増加の傾向にあり、その処理技術が求められている。タイヤは強化材としてスチール線を含み、その除去が困難なため、廃棄タイヤの用途は限られていた。

 産総研では、いくつかの方法で除去を試みたが、コストの面で問題があった。今回、タイヤ中のスチール線を誘電加熱すると、数秒でスチール線混入部分が写真1で示すように、風船状に膨らみ、さらにこの膨らんだ部分を切り裂けば、写真2の様にスチール線が簡単に分離できる方法を見出した。民間企業数社と共同で、スチール線を除去したタイヤの裁断・粒状化技術について研究を進めると共に、嫌われ者の廃棄タイヤを写真3で示すような歩道の舗装マット等への再生利用についても研究を進めている。

風船状に膨らんだスチール線混入部分の写真
写真1
スチール線が簡単に分離できる方法の写真

写真2
歩道の舗装マット等への再生利用の写真
写真3

 現在、国内で廃車や交換で排出される廃棄タイヤは、約1億本であり、年々漸増傾向にある。廃棄タイヤの約半分は、セメント、発電、製紙等の燃料として利用されているが、タイヤ中に含まれる硫黄やスチール線のために、脱硫設備や産業廃棄物の問題で、優良な熱エネルギー源とは言い難く、金を払って燃焼依頼をしているのが実状である。また、燃料としての処理量の大半を占めるセメント工場も、セメント需要の鈍化から、廃棄タイヤ需要も低下しており、新たな廃棄タイヤ利用技術が世界的にも模索されている。

 ところで、タイヤは強化材としてスチール線を含むため、簡単に切断出来ず、輸送に嵩張り運送コストが高くなる。また、燃料として用いてもスチール線から発生する廃棄物問題を考慮しなければならない。もちろん、ゴムの再生や、他への利用についてもまずスチール線の除去が問題となる。これまでのスチール線除去のための機械的な分離破砕機が開発されているが、完全な除去は困難であり、また能率も悪い。

 産総研基礎素材部門でも、分離技術について検討を加えてきたが、この程安江和夫主任研究員らは、誘電加熱による方法を見出した。タイヤのスチール線を高周波によって加熱すると、スチール線が埋め込まれた部分のゴム中の気泡の熱膨張によって、線から剥離し、さらにその剥離が隣り合う線と連結して、スチール線埋込部分が風船状に膨らむ。この膨張部分を切り裂けば、容易にスチール線を完全に分離できる。この膨張は数秒の加熱によって起こり、迅速で消費電力も少ない。

 以上のように廃棄タイヤより、スチール線を完全に除去出来る見通しを得たので、民間企業数社と共同して、ゴムを裁断・粒状化する技術や粒状化ゴムを再利用する技術あるいはスチール線の利用技術を共同して開発中である。例えば、粒状ゴムを再び固め、歩道舗装用マットとしての試作を行っている。マットは弾力性や吸水性に富み、足の疲れが少なく、色も自由に変えられる。この他、断熱性、遮音性、水透過性、滑り防止等の特性を利用したいくつかの応用技術についても検討を進めている。

  これらの研究の概要は、平成13年10月24日(水)・25日(木) に名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)で開かれる産学交流プラザ2001で公開される予定である。

協力企業:(有)コンサル土田、ダイコウ化学工業(株)、(株)アサヒダイテック、川吉運送(株)






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